2024年04月19日( 金 )

中国経済新聞に学ぶ~李克強総理訪日 成果はどうですか(前)

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 5月11日午後、李克強総理は四日間にわたる日本訪問を終え、北海道・新千歳空港から帰路についた。日本の首相・安倍晋三がタラップまで彼を送ったことは前例がない。
 日本メディアは李克強総理の来日を「特別待遇」という言葉で報じた。海外首脳に対し、安倍首相が最初から最後まで付き添うことはめったにない。帰国の直前、タラップまで送って別れを告げるのはほかにないことである。
 安倍首相直々のこのような行動は、客人が「中国総理」であり、ある意味では米大統領より重要であったためにほかならない。
 今回の李総理による来日を、中国は「中国総理による8年ぶりの正式な来日」と位置付けている。李総理個人にとっては、26年ぶりの来日である。当然ながら、今回の来日は簡単なことではなかった。
 この数年間、日中両国は激しい対立・競争を経て、最終的に「戦えば双方が負け、協力すれば双方が勝利する」ということに気づいたのだろう。双方は面子を捨てて、また協力し合うことになった。

4つの背景

 李総理による来日は、4つの重要な背景を基にしている。
 一、中国を包囲しても無駄であると安倍政権が理解し、気持ちを切り替えて、迅速に発展し、政治が長期的に安定している中国とどうかかわっていくか真剣に考え始めたこと。
二、拉致被害者の問題を解決するため。朝鮮半島の和平過程における対話に日本が参加できるよう、中国のサポートを必要としていること。
 三、日中関係について、すぐに解決できない歴史問題や領土問題に拘泥せず、より全面的な戦略で両国の関係を改善し、日本と平等に付き合うことで、将来的な協力体制をつくり上げるべきであると、中国側も気づいたこと。
 四、予側不能なトランプ政権が米中関係を挑発しており、日中共同の利益にも影響が生じていること。世界第二・第三の経済体として、日本と中国は連携して国際貿易の自由化を進め、トランプの保護貿易主義を阻止する必要がある。
 これら重要な背景が、日中両国の首脳が関係の改善を決意し、かつ両国の協力のための新しい枠組みをつくるきっかけとなった。

8つの成果

 では、李総理の来日はどのような成果を上げたのだろうか?取材を経て、中国経済新聞はこれらの成果が顕著であると感じた。

 1、李総理の「新しい出航」も、安倍首相の「新しい段階」も、長年にわたる日中対立が終焉し、両国は全面的に協力する新しい時代に入ったことを世界に向かって宣言した。
 「長期的に安定した健全な相互利益関係を築く」ことは、両国政府・民衆の共通認識となった。このため、首脳会談においても、一連の記者会見においても、双方とも来日の成果に水をさすであろう歴史や尖閣諸島の問題には触れず、両国関係は前を向いている。

 2、両国の署名により、6月から海空連絡メカニズムを設置することが正式に宣告され、10年にわたって解決していなかった重要な安全保障問題が解決した。
 今後、中国の艦船や航空機が東シナ海と太平洋を繋ぐ宮古海峡を通る際は、あらかじめ連絡を取り合うことで、日本の自衛隊との対峙を回避することで、両国の軍事的信頼関係を築き、東シナ海を平和と協力、友好の場とし、東アジアにおける米軍の存在や日米同盟の緊密さを弱め、日中両国が今後の東アジアの安保協力体制を確立していくための基礎をつくり上げた。

 3、日中両国の署名により、官民委員会およびフォーラムという特殊な協力体制を確立し、第三市場を共同で開拓することで同意した。
 この協議の最大の意義は、今後、とくに鉄道などのインフラ分野の第三市場において、日中両国は価格競争を行うのではなく、連携して共同で開拓を行うということだ。同時に、日本も第三市場を通して中国と協力することで、中国の提唱する「一帯一路」戦略にかたちを変えて参加することになり、両国の経済・技術面の協力を促進することができる。

 4、李総理が初めて提示した「日中韓+X」の新しい協力形態が、三カ国の全面的な経済協力、国際市場の共同開拓、および東アジア経済共同体の早期確立に向けて新しい戦略的思考と無限の可能性を提示した。同時に、中国市場をより開放するという政治的姿勢も表した。
 この新しい協力形態を実践するには、まず日中韓の自由貿易区を速やかに確立する必要がある。これを基礎として「日中韓+東南アジア」「日中韓+ヨーロッパ」「日中韓+アフリカ」といった共同の市場を形成することで、世界の自由貿易経済を促進しトランプの保護貿易主義に対抗する。こういった共通認識はすでに「日中韓サミット東京宣言」に書き加えられており、日韓に対して中国との協力の前途を示している。

 5、中国側は「完全で検証可能、不可逆的な非核化」を「東京宣言」に加えるという安倍首相の狙いを阻正し、北朝鮮の非核化問題を段階的に解決するための良好な条件をつくり上げた。
 「北朝鮮は完全で検証可能、不可逆的な非核化をしなければならない」というのは、安倍首相が今年4月に米国を訪問した際、日米両国の北朝鮮問題解決における変更できない条件として、トランプ大統領と設けた共通認識である。今回の日中韓サミットのホスト国として、安倍首相は開幕の挨拶から会見での発言まで、常にこの要求を強調していた。しかし、大連における中国・北朝鮮首脳の会談において、「段階的に実施する」という共通認識がすでに形成されていたため、中国は安倍首相のこの主張に対し明確に反対しており、「宣言」の文面について何度も戦いが発生し、当日の夜11時半にやっと妥協点が見つかった。日本は「安倍の主張」を宣言に入れないことで同意し、中国は「返礼」として拉致被害者問題の解決に協力し、日本と北朝鮮の直接的な対話を支持する立場を表明した。

 6、今回締結された日中共同映画製作協定は、両国の映画を相手国で上映するためにすばらしい政策的条件を築いた。両国民の相互理解を深め、国民感情の改善、嫌悪感の解消に寄与するとみられている。

(つづく)


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