2024年04月26日( 金 )

鹿児島経済の「顔」たる資格はあるか?(中)~苦境に立ついわさきグループ

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実態は債務超過

 2代目・岩崎福三氏以降も、いわさきグループの鹿児島経済における存在感は依然として強い。福三氏は、鹿児島商工会議所会頭のほか、経済団体や業界団体の要職を歴任。約1,800億円の個人資産を有していたとして、米フォーブス誌に日本の富豪として紹介された逸話もある。

 しかし、90年代に入ると、事業環境の変化から苦しい経営を強いられるようになってきた。同社の主要産業である石油製品卸売は、少子高齢化やエコカーの普及など燃費向上による需要が減少し、業界全体の規模が縮小。資源エネルギー庁の資料によると、ガソリンスタンドの事業者数は、1991年度の3万2,413者から2014年度1万6,429者へ半減。ガソリンスタンドの数もピークであった1994年度6万421カ所から2014年度3万3,510カ所へとほぼ半減した。観光事業関連では、築年数が経つとともに、施設の魅力が低下する一方、同業他社の増加により競争が激化。交通運輸事業は原油高騰が直撃。路線バスは地域住民の生活交通という性質上、利幅が少ないうえに簡単に運賃を上げるというわけにもいかない。四面楚歌ともいえる状況で業績は悪化し、財務は弱体化。岩崎産業の有利子負債は02年3月期で800億円にも登っていた。

 02年6月、3代目・岩崎芳太郎氏が岩崎産業の代表取締役社長に就任。再建へ向けて、積極的なリストラ策や訴訟も辞さない事業シェアの確保、新事業の着手を図った。交通運輸事業では、路線バスの大規模な廃止・再編を断行。交通関連会社の整理も進めた。海上交通では、鹿児島〜種子島・屋久島の航路で、ライバル関係にあった市丸グループを提訴。最終的には和解し、12年1月、両グループの合弁による種子屋久高速船(株)の設立に至る(出資比率:岩崎54%、市丸27%)。

 観光事業では、いわさきホテル・ザビエル450(旧・かごしま林田ホテル)や種子島ホテル(17年に再開)など不採算ホテルを閉鎖したほか、有料道路「佐多岬ロードパーク」を12年に南大隅町に譲渡した。最近では、17年11月に耐震改修の費用や人員不足を理由として霧島いわさきホテル(旧・ホテル林田温泉)を休館した。

 かつてグループ全体で約800億円はあった売上高は、3代目・芳太郎氏の積極的なリストラ策もあって17年3月期の公表数字で約450億円とほぼ半減している。

 業績は、岩崎産業、いわさきコーポレーションともに減少傾向にあり、判明している分で、岩崎産業は、17年3月期に最終損失32億3,100万円を計上して2期連続の赤字。48億6,000万円の累積損失を内包している状態で、土地再評価差額金60億3,600万円、そのほか有価証券評価差額金23億900万円を計上することで、純資産35億7,000万円、自己資本比率は5.0%となっている。貸借対照表上、債務超過にはなっていないが、グループの事業に直結する土地を容易に手放すとは思えない。仮に、この土地再評価差額金を除いて考えると、24億6,600万円のマイナスとなる。「実態は債務超過」と言っても過言ではないだろう。

 また、16年3月期時点で約420億円の長短借入金があり、有利子負債月商比率は33.7カ月、支払利息は14億2,194万円と重い足かせになっている。九州フィナンシャルグループや南日本銀行など地元金融機関の大株主であることから、直ちに見離されることはないだろうが、看過できる状況でないことはたしかだ。詳細は明らかにされていないが、17年3月期も同様の苦しい状況に置かれているものと思われる。一方、いわさきコーポレーションの業績も16年3月期に最終赤字4億円を計上するほか、13年3月期にも最終損失30億円を計上するなど、悪いところが目立つ。

(つづく)

【山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>

岩崎産業(株)
代 表:岩崎芳太郎ほか2名
所在地:鹿児島市山下町9-5
設 立:1928年4月
資本金:8,000万円
売上高:(17/3)180億600万円

いわさきコーポレーション(株)
代 表:岩崎芳太郎ほか1名
所在地:鹿児島市山下町9-5
設 立:1943年4月
資本金:8,000万円
売上高:(17/3)55億1,800万円
※グループ全体の年商:(17/3)約450億円

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