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2018年08月16日 07:01

今注目したいガイドライン 食品安全の見える化~HACCPで企業力を強化へ(後)

エッセンシャルワークス 永山 真理 代表

 今、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)が各食品業界で注目されている。衛生管理のガイドラインとして米国で開発され、日本でも多くの企業が導入されているものの、世界的に見れば大きく後れを取っており、今回の食品衛生法の改正によるHACCPの制度化により、その対応が急がれている。HACCPの導入・運用支援コンサルタントとして、各種食品工場などで支援を手がけてきたエッセンシャルワークスの永山真理氏に話を聞いた。

導入事例~福岡県の惣菜工場

 ――企業の取り組み事例を教えてください。

※クリックで拡大

 永山 福岡県のとある総菜工場の話ですが、この工場はもともと、自社店舗のみで販売をする形態をとっていました。その味の評判により百貨店催事や大手リテールからもお声がかかるようになりました。

 以前からのOEMの取引先からこういうのがあるよとHACCPを知った社長が「これからはHACCPをやっていかなければいけない」と導入を決断されたのがきっかけでした。今から7年前、まだHACCPという言葉を聞いたことある人が少なく、制度化の話も出ていなかったころの話です。「今やらなければいけないのか」「まず自分たちでもできることがあるのではないか」と、社内は大反対だったようです。しかし、社長の強い意志で取り組むことになりました。その後、約1年と少しの準備期間を経て、HACCP認証を取得されました。

 ――従業員の方の協力体制はいかがでしたか。

 永山 準備期間は一筋縄ではいきませんでした。最初のハードルは「HACCPなんてなんでやらなきゃいけないのか」と思っている従業員に理解をしてもらうことから始めました。

 これは毎月の従業員向けの勉強会で食中毒や異物混入で起こった事故の事例や衛生管理の知識について、またそれに通じた現場の改善など、少しずつできるところから行いました。最初は「やらされている仕事」だったと思いますが、「やったほうが良いこと」に少しずつ気持ちがシフトしたことは取り組みを見ればすぐにわかります。

 また、取り組みを初めて半年後に、資材置き場と従業員休憩室、荷物置きになっていた倉庫の3カ所の場所の入れ替え、事務所の模様替え、クロスを引くなどのDIYを自分たちでできることをやろうということになりました。これによって劇的に雰囲気も風通しもよくなりましたね。従業員自らが「改善の効果」を実感したことで現場の改善やマニュアルの作成が一気に進んだと思います。HACCP認証を取得後には、大手の取引先との契約、また外部監査の免除、クレーム減少などの効果もありました。

 ただし、HACCPは気を抜いたり、惰性に任せてしまうとすぐにほころびが生じてしまいます。ですから運用するなかで見つかった課題に対しては、すぐに対策を講じたり、勉強会で現場スタッフに周知しなければなりません。そういう意味で日々の改善と継続することが大切なのです。

 ――今後の方向性については。

 永山 冒頭でもお話した通り、HACCPはやるものであり、やらされることではありません。しかし、直接的にお金を生むわけではないことに従業員の時間やお金を投資することになかなか前向きに取り組めない現状があることも事実だと思います。

 今回の制度化のベースにもなっているコーデックスHACCPでも「HACCPは弾力的に運用が可能」ということが大前提にあり、「~しなければならない」というよりも「~したほうがより望ましい」という世界なのです。無理なルールを決めるより、現場にあったルールを決めて、しっかりそのルールを遵守することのほうが大切です。

 ――運用は現場の方々の意識にかかってきますね。

 永山 運用するのは、現場の従業員さんたちであり、今は多くの食品事業者で外国人研修生が採用されている現状があります。いくらルールを決めてもそれを現場で実行しなければ意味がありません。そういった意味で実際に現場で作業する人たちに、衛生管理の大切さやルールについて知ってもらうための勉強会と社内コミュニケーションがポイントになってきます。

 現場の皆さまも「なぜ、そうするのか」を理解してくれると、自分たちから積極的に行動に移してくれますし、もっとこうしたらどうかと改善点を教えてくれたりします。また、「ずっと気になってたけど、パートだからいえなかった」とおっしゃる方も多いのです。HACCPはやること、と言いましたが、決してやることだけが最終的な目的ではありません。自分たちの会社や工場、作業場や店舗、今やっている仕事が、今後、どのようなポジションを取ってどのように展開していきたいのか、新しい取引先、新しい製品、新しい挑戦、そういったことの土台にもなるのがHACCPといえるのではないでしょうか?せっかくのこのHACCPの制度化の機会を、会社、工場、製品をよくするチャンスと捉え、HACCP導入でより良い製品開発、製造、現場運営に役立てていただければと思います。

(了)

<プロフィール>
エッセンシャルワークス 永山 真理 代表

福岡県大牟田市出身。2012年、自然食品店長時代にメーカーと消費者との「食品安全」の認識のずれを感じ、双方がWin-Winとなる方法はないかと考えていた時にHACCPと出会う。その後、HACCP導入、運用支援コンサルタントとしてさまざまな業種の食品工場へのHACCP導入に携わる。ISO22000審査員補(IRCA登録)、JFS-A/B規格監査員、国際HACCP同盟登録 HACCPリードインストラクター。

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