2024年04月26日( 金 )

九州地銀の2019年3月期(第1四半期)決算を検証する(3)

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 【表1】を見ていただきたい。九州地銀(18行)の2018年6月期(第1四半期)決算の貸出金残高順位表である。

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<この表から見えるもの>
◆九州地銀(18行)の貸出金は36兆9,979億円で、前年比+2兆2,385億円(6.4%増)となっている。日銀のマイナス金利政策の影響を受けているため、貸出金を大幅に増加させて収益力を上げようとしているのがわかる。

◆貸出金の第1位は福岡銀行で、前期比(18年3月期)より▲301億円となっているが、前年比+5,240億円の9兆4,819億円(5.8%増)となっている。

◆第2位は西日本シティ銀行で、前期比+747億円、前年比+2,990億円の6兆9,109億円(4.5%増)となっている。

◆貸出金の第3位、4位は九州FG傘下の肥後銀行と鹿児島銀行。
・肥後銀行は、前期比+847億円(2.6%増)、前年比+2,086億円の3兆3,311億円(6.7%増)と、九州地銀の平均伸び率6..4%を0.3%上回っている。
・鹿児島銀行は、前期比+581億円(1.8%増)、前年比+2,390億円の3兆2,979億円(7.8%増)と、上位地銀5行のなかで増加率がトップとなっているのがわかる。

◆貸出金残高は上位6位まで順位変動はなかったが、同じ長崎県を地盤とする親和銀行と十八銀行の順位は逆転している。昨年6月期の親和銀行は1兆4,831億円、18年3月期も1兆5,507億円で第8位だった。一方、昨年6月期の十八銀行は1兆6,391億円。その差は実に1,560億円だったが、18年3月期の十八銀行は1兆6,599億円。その差はまだ1,092億円あった。しかし親和銀行は18年6月期、わずか3カ月間で前期比1,862億円を増加させ、1兆7,369億円となり、1兆7,053億円(前期比+454億円)だった十八銀行を316億円上回って、第7位になっている。
・また昨年6月、第14位だった筑邦銀行が4,747億円(前年比+240億円)となり、4,724億円(前期比+92億円)の宮崎太陽銀行を抜いて、第13位となっている。

~十八銀行とふくおかFGの経営統合の影響について~
 【表2】、【表3】は九州地銀FG・FHの貸出金残高順位表、および【表4】長崎県の地銀シェア表を見ていただきたい。

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<この表から見えるもの>
◆【表2】はFG・FHの現状の計数である。第1位のふくおかFGの18年6月期の貸出金残高は前年比+1兆214億円の12兆6,178億円(8.8%増)で、そのシェアは34.1%である。
・一方、第2位の西日本FHは前年比+3,051億円の7兆1,532億円(4.5%増)で、そのシェアは19.3%である。第3位は前年比+4,476億円の6兆6,290億円(7.2%増)で、そのシェアは17.9%となっている。この3つの金融グループのシェアは71.3%となっている。

◆しかし十八銀行がふくおかFGと経営統合すると、【表3】から見えるようにふくおかFGの貸出金は14兆3,231億円となり、そのシェアは38.7%。預金と同様に1強2弱が加速することになる。

◆【表4】は長崎県内に本店のある地銀の計数である。18年6月期の両行貸出金を合算するとそのシェアは93.4%となり、長崎銀行のシェアはわずか6.6%しかない。十八銀行の貸出金を1,000億円弱他行に債権譲渡することで経営統合が認められたものの、取引先にとっては選択の余地が少なくなることは必定で、厳しい状況が待ち受けているのは間違いないようだ。

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<まとめ>
 親和銀行は自力再建を断念し2007年10月、ふくおかFGの傘下に入った。親和銀行にとって、たとえふくおかFGと十八銀行の経営統合が白紙に戻るにせよ、成立するにせよ、預貸金とも後塵を拝すことで、微妙な存在を意識していたのではないだろうか。そのため、わずか3カ月間で貸出金を大幅に増加させ順位を逆転させたものと推測される。合併が予定されている両行にとって、今後どちらがイニシアチブをとるか予断を許さない状況になったといえるのではないだろうか。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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