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2018年10月01日 07:01

2030年の世界 アルビン・トフラーの『未来の衝撃』から読み解く(5)

決定自体を無にする変化の速さ

 ところで1970年代に一世を風靡した『未来の衝撃』は大ベストセラーとなり、全世界で3,000万部も売れたという。そのなかで提唱されていた「社会的未来主義」には筆者自身も大いに感銘を受けた。2018年の今、改めて読み返しても、その発想の斬新さや先見性のすばらしさには驚かされる。

 その趣旨に賛同した多くの人々が各地に「2000年委員会」を発足させ、科学的未来主義の展望と技法を学ぼうという社会運動の波が起こった。アメリカだけでも、何百万という人々がかかわった歴史的な動きであった。しかし、あれだけ大きな盛り上がりをみせた運動が定着しなかったのは不思議でならない。その点をトフラー博士本人に問いかけたところ、次のような答えが返ってきた。

 曰く「当時はそれぞれの国、都市、地域社会などで実に広範囲にわたって人々が20世紀の残された期間を最も効果的に生きるため、どのような社会的目標から優先的に取り組むべきかを大いに議論した。つまり未来はどうあるべきかを上から教えられるのでなく、皆が自発的に自らの課題として討論する場がたくさん生まれた。各地に志のある人々が集まっては、私を講師として招いてくれた。1年の半分以上をそのような人たちとの対話に費やした時期もある。その結果、私も想像以上に啓発されたものだ。その当時から有権者の多くは自分たちの選んだ議員とほとんど接触がないことに不満を募らせていた。しかも選ばれた議員たちが議会で討論している内容といえば、あまりにも技術的な話で、とてもついていけないし、自分たちの望んでいるものとは違い過ぎると辟易していた」。

 真剣な眼差しで語るトフラー氏の話を聞けば聞くほど、アメリカも日本も恐らく世界中のどこの国でも共通の政治的課題が存在していると思わざるを得なかった。大方の政治家にとっては、時間の概念は「次の選挙まで」といった場合がほとんどである。未来を長期的に真剣に考えるなどということは贅沢なことなのかもしれない。

 いずれにせよ、トフラー氏によれば、「社会的未来集会」の運動が定着しなかった最大の理由は、組織として維持発展させていくうえで必要な資金面を専門に扱う人がいなかったからというものであった。

 また、続けて「40年前、自分はまだ若く、当時これはと思った政治学者や経済学者の言葉を過大評価していた。実際にはうまく機能するはずのないような経済理論に振り回されてしまった気がする。一流と目されていた政治、経済をはじめ、あらゆる分野の専門家を集めた超産業主義的ユートピア社会をつくり出すことができるだろう。少なくとも新しい価値観を創造できると思い込んでいた。正直なところその見通しは甘かったと言わざるを得ない」と、正直に語ってくれた。

 さらに、言葉を重ね、「今から振り返ると、いくら当時ベストと言われていた頭脳を集めても所詮“寄せ集め”に過ぎなかった。他人の頭脳に頼るのではなく、自分が確信する独創性をもっと突き詰めて発展させていくべきだったという気がしてならない」と心情を吐露。

 極めて謙遜したものの言い方であるが、決定を下してから実行に移す間に決定自体を無意味にしてしまうような社会的変化のスピードの速さに、トフラー氏自身が謙虚に向き合っていたことがわかる。政治にとっても、経済にとっても、政策決定時に得ていた情報が実行時には現実とあまりにも違ってしまっているようなことが日常茶飯事になっているからだ。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

前参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

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