2024年04月20日( 土 )

スルガ銀行の投資用不動産ローン~6カ月の業務停止命令

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 今年4月からスルガ銀行に立ち入り検査を実施していた金融庁は、半年後の10月5日、シェアハウスを含む投資用不動産向けの融資で組織的な不正が明らかになったスルガ銀行( 静岡県沼津市)に対し、内部管理体制に重大な問題が確認されたとして、銀行法に基づき新規の投資用不動産向け融資を6カ月間停止するよう命じる、厳しい処分を発表した。

業務停止命令の理由

(1)シェアハウス融資などでの資料改ざん問題
◆営業部門で不正がまん延し、審査も機能していなかったこと、さらに取締役会が適切な監督機能を果たさないなど、内部管理体制に重大な欠陥があると指摘。

(2)「ファミリー企業」への不透明な融資
◆創業家と関係の深いファミリー企業から融資を回収する際、別のファミリー企業に寄付の名目で資金を出し、その資金を還流させて返済させるといった事例があり、岡野家がスルガ銀行を私物化していたと認定。

(3)反社会的勢力への住宅ローンを融資。
 企業統治(ガバナンス)上の重大な欠陥があったとして発令されたもので、同時に業務改善命令も発令された。

第三者委員会の報告書

◆融資書類の改ざんはシェアハウス関連だけでなく、アパートなどの投資用不動産向け融資全般に広がっていたとし、調査に対して「不正がまったくない案件など全体の1%あったかなかったか」と答える行員もいたという。

◆融資に疑問を示した審査の担当者に対し、営業担当の幹部が威圧的に反論して融資を実行させるなど、審査体制に問題があったことや、営業現場の実態を考慮しない厳しいノルマがあったことなどを指摘している。

◆ノルマが達成できないと長時間机を蹴るなどしながら叱責され、「給料を返せ」「案件がとれるまで帰ってくるな」と、首をつかまれて壁に押し当てられたとする証言もあったと報告している。

スルガ銀行の現状

 【表1】スルガ銀行の貸出金(単体)推移表。【表2】静岡県地銀(4行)の預貸金比較表(単体)。
 【表3】スルガ銀行の株価推移表からはスルガ銀行の厳しさが読み取れる。
今回対象となる投資用不動産向け融資は18/3月期から 個人ローン残高が有担保ローンと無担保ローンに変更されているため、実態把握ができない状況になっている。17年12月期の「その他ローン」の残高9,139億円が基礎数字となっている。いずれにせよ、投資用不動産向け融資の6カ月停止により、個人ローンの減少は歯止めがかからなくなるものと予想される。

※クリックで拡大

今後の対応について

 金融機関を検査する金融庁は、スルガ銀行について、「ほかの銀行と同じように実態把握に努めてきたが、今回シェアハウスの問題が起きたことは遺憾だ」としたうえで、「結果として事前に察知できなかったことは否めず、反省することは反省して効果的な実態把握に努めたい」としている。

 金融庁はスルガ銀行に対し、来月末までに経営責任を明確にすることや、内部管理体制の改善策を提出するよう求めている。しかし頭取を含め現経営陣それぞれが身に覚えがあるだけに、解決策が出ても絵に描いた餅に過ぎないのではないだろうか。むしろ今こそ、現経営陣は早急に総辞職し、新経営陣のもとで『抜本的な改善策を提出することが求められている』のではないだろうか。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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