2024年04月30日( 火 )

福岡市、宿泊税の導入へ前進~料金毎の区分には後ろ向き

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委員会には多くの関係者が集まった

 福岡市は24日、エルガーラホール(福岡市中央区)で「第2回福岡市宿泊税に関する調査検討委員会」を開催した。同委員会では、主に第1回委員会(2018年10月3日開催)での声を受け実施した宿泊事業者へのアンケート結果の報告や、市の今後の観光振興について、市における宿泊税の課税要件について意見が交わされた。

 会の冒頭、同志社大学法学部教授でもある田中治委員長は「十分議論したうえで、福岡市民のより良い生活に役立てることが大切です」と述べ、宿泊税に関する議論に市民の声を反映させることの重要性がメンバー間で共有された。

宿泊税は料金による区分がないほうが良い

 旅館やホテル、民泊の経営を手がける市内116の宿泊事業者にアンケートを送った結果、これに回答した事業者数は44。アンケート結果では、宿泊税を財源とした今後の市の取り組みとして、福岡を玄関口として九州各県で観光入込客の増加が見込めるような、『広域観光の機能強化』を期待するという回答が最も多かった。具体的には、「Wi-Fiの充実」「福岡および九州への旅行を換起させるようなプロモーションやイベントの実施」などの声が寄せられた。
 また、宿泊税の税率に関して、宿泊料金による区分が「あっても差し支えない」25%に対して、「区分を設けない方がよい」が46%、「いずれともいえない」が29%で、宿泊税の税率は一律を求める声が多いという結果になった。市では宿泊税を導入している他都道府県の税率などを参考にし、4パターンの導入案を作成している(下図参照)。

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 宿泊税を導入した場合、入湯税の徴収と合わせ宿泊事業者に新たな負担が生じることから、入湯税の取り扱いに関しても、以下の通り2案が提案された。

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 宿泊税導入後の議論が進む中、福岡市ホテル旅館協会の金子新会長は「事務手続きが煩雑になるのは好ましくない。また、宿泊税導入にともない必要となるシステム変更など、中小の宿泊業者には相応の費用負担となる」と話し、業界への一定の配慮を求めた。

福岡市の観光振興

(左)山下真輝委員 (右)田中治委員長

 福岡市で今後5年間のうちに予定されている国際的なイベント開催は少なくない。19年には「世界フィギュアスケート国別対抗戦」「G20福岡財務大臣・中央銀行総裁会議」、そして「ラグビーワールドカップ」が控える。オリンピックイヤーとなる20年には、事前合宿としてスウェーデン、ノルウェーの選手団が来福。21年には「世界水泳選手権」が開催され、以降も約1万人規模の大規模学会が予定されており、ホテル需要は当分尽きることがない。宿泊税導入の議論が活発化するのもうなずける。

 しかし、大切なのは導入を急ぐことではなく、いかに福岡市民の生活向上に繋げるかだ。(株)JTB総合研究所の山下真輝主席研究員は「全国的に宿泊税導入の議論が活発化しているが、実際に導入しているところは少ない。福岡市が導入に踏み込むことで、今後スタンダードになる可能性はある。ただ、旅館やホテルは観光客だけでなく市民も利用する。(宿泊税導入は利用料金に反映されるため)『市民からも取るのか』という声も上がると予想されます。市民の理解を得ることが大前提です」と話し、導入への期待感と同時に、導入はあくまで地域の発展を念頭に置いたものでなくてはならないと強調した。

導入で何が変わる

 宿泊税を導入した場合、宿泊税を財源とする取り組みとして、市は以下の3つを想定する。

(1)九州のゲートウェイ都市機能強化に向けた取り組み
(2)大型MICEなど集客拡大に対応するための取り組み
(3)観光産業や市民生活へ着目した取り組み

 福岡観光コンベンションビューローの合野弘一専務理事は「福岡だけでなく、九州全体の課題として、欧米からの観光客の取り込みが挙げられます。以前、福岡で国際会議が開催された際に実際に欧米系の方に聞き込み調査をしたのですが、9割近い方が『初めて福岡に来ました』と答えられました。福岡・九州をより多くの方に知ってもらうためにも、MICEなど集客拡大に対応する取り組みの強化は必須だと思います」と述べ、想定される宿泊税を財源とした市の取り組みに理解を示した。

 福岡・九州への観光入込客の増加を促すための財源確保ではなく、最終的に市民生活の向上につながる宿泊税導入でなければ意味はない。九州における、世界に開かれた玄関口(ゲートウェイ)福岡市の決断はいかに――。次回の調査検討委員会は、12月頃の開催が予定されている。

【代 源太朗】

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