2024年04月30日( 火 )

惣菜で売上アップへ~元料理人・惣菜コンサル田中晃氏の挑戦

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田中 晃 氏

 福岡市中央区薬院の飲食店が並ぶビルの一角にある飲食店「studio SENA」店主の田中晃氏(53)は、予約が入った時だけ営業を行う。同店では和洋中、家庭の惣菜料理から本格的フレンチまで何でも食べることができるという知る人ぞ知る飲食店である。

 そんな田中氏の本業は惣菜コンサルタント。主要取引先はスーパーマーケットで、とくに惣菜の売上に伸び悩む企業や、新規導入する企業が多いとのこと。田中氏は、ただ指導するだけではなく、実際に店舗に入り現場のスタッフにメニュー考案のやり方や、技術指導などを行う。田中氏は日帰りではなく、2日から3日、泊まり込みで本腰を入れて取り組むことが多いという。「性格がそうさせるのかもしれませんが、やらせていただくからには企画を立てることから、仕入や在庫管理を把握し、利益率まで考えられるようにします。私が惣菜売場に入ることで、売上を伸ばし、利益を残すことを考え、スタッフの方々が経営者の立場に立ったモノの考え方ができるような指導を心がけています」(田中氏)。

彩が良い弁当
ボリュームもあり見た目も綺麗

 田中氏は、八女郡黒木町(現・八女市黒木町)出身。高校卒業後、料理界の名門・辻調理師専門学校に入り、卒業後、フランスに渡った。1年半の修業中、パリの名店を食べ歩き、味覚を鍛えた。帰国後、イタリア料理を勉強するために専門店で修業するなどし、料理人としてのキャリアをスタートさせた。
 そんな田中氏は20年近く飲食業界で働くなかで、常にこの業界の回転率の悪さが気になっていたという。「外食はファーストフード以外、お客さまがテーブルに1、2時間以上座られます。それはそれでいいと思っていましたが、ある日、ふと訪れたスーパーマーケットで惣菜が飛ぶように売れているのを目にしました。惣菜は回転率が良く、置けば売れる。この業界はとても面白そう」と思ったのがキッカケで、一念発起し、とある大手スーパーチェーンの惣菜部に転職した。田中氏はここで10年間勤務後、昨年独立し、(株)めありを設立することとなる。

 レストランは出来立てを提供するので美味しくて当たり前だが、惣菜はそういう訳にはいかない。冷めてもおいしいものをつくることが重要となる。そもそも惣菜の売り方や考え方は外食と大きく異なる。そこで田中氏はトレンドを大切にしながら、最新技術などを使い、売れる惣菜、利益の残せる仕組みを考案してきた。その経験で得た惣菜をつくるうえで大切なことは3つ。「材料、提案力、リアルタイム」だという。

 材料は地場の旬の食材を使い、その良さを引き出すことが重要だ。しかし、いい材料ばかりを使い単価を上げたところで商品は売れない。適正売価を考えながら、おいしいものをつくらなければならない。原価計算しながら、売れるものをつくるのは大変な作業だが、自分が考案した商品が売れることで、仕事の醍醐味を味わうことができる。

 次に提案力。惣菜でいえば盛り付け方だ。栄養バランスもさることながら、いろどりを大切にしたおかずと御飯の配置バランスなどが重要となる。最も大事なのは美味しそうに見えること。手に取ってもらうためにどうすれば良いかといった工夫をすることが必要だ。

 最後にリアルタイムの重視。買い物に来る人の多くは夕方、食卓に並べるために惣菜を購入するケースが多い。そのため、利用者が食事をする時間を考えて売場に出すといった配慮が必要だという。「惣菜は冷たいというイメージがありますが、温かいものを買って帰ることは、とても大事だと思っています。私が手がける売場では、夕方からの惣菜として、揚げパンやとり天、やわらかい唐揚げなどを出しています。たとえば唐揚げは大分で、木樽で仕込む醤油屋さんから醤油を仕入れ、たとえ冷めたとしても、やわらかくジューシーなものに仕上げています」田中氏は将来的に“デパ地下の惣菜がスーパーで食べられる時代”の到来を見すえた取り組みを行っているそうだ。
スチコン(スチームコンベクション)を用い、保存期間が長く、作業の手間が省ける調理法を始め、工夫次第で美味しくて安いものを出す。簡単に調理できるキット食材も活用し、人手不足にも対応している。

思わず手に取りたくなる
海鮮丼

 20年間のシェフ経験を生かした惣菜づくり。田中氏の活動エリアは現在、離島を含む九州全域でエリア内であれば、どこでも駆けつける。そんな田中氏は将来、惣菜の学校をつくり、後任を育てるのが目標だという。

【矢野 寛之】

<COMPANY INFORMATION>
■(株)めあり

住 所:福岡市南区高木2-19-4
TEL:092-471-0776
E-Mail:akira00804@gmail.com

■Office&Bar Studio SENA
住 所:福岡市中央区薬院3-7-13 古川ビル2階
TEL:092-523-6595

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