2024年04月24日( 水 )

貫き続ける信念がある~ひらおの「顧客第一主義」(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 福岡の「ソウルフード」の1つとも言われている「天麩羅処(てんぷらどころ)ひらお」。10月3日に天神アクロス福岡店(以下、アクロス店)をオープンした。アクロス店では同店名物の「イカの塩辛」が復活し、新商品「カンパチ漬け丼」の販売や、カウンターに置かれる天丼用のタレなど、他店舗にはない新しい取り組みが好評だ。そこには同社の代表取締役社長である青柳正典氏の、開店時から変わらない「顧客第一主義」の信念があった。

「イカの塩辛無料サービス」全店舗で完全復活

ビールにも、ごはんにも合う、ひらおのイカの塩辛

 「ひらお」では常に揚げたての天ぷらを提供することを大切にしているため、客席をむやみに増やすことはしない。それでも天ぷらを揚げるのには時間がかかり、来店客の待ち時間が長くなる。お腹を空かせたお客さんにすぐに提供できるサービスはないかと生み出されたのが、いまでは店の名物となった「イカの塩辛」だ。サービスを始めた当初はイカの内臓部分も使用しており、塩辛さも強く生臭さも残った。青柳社長はさまざまな要望を基に改良を加え、柚子風味の塩辛を生み出した。レシピは店舗を拡大した現在も忠実に守られており、青柳社長と工場長だけが知る「トップシークレット」だという。

アクロス店がオープンした際には、長い行列ができた

 今年に入って全国的に収穫量が激減したことにより、イカの卸価格が高騰、同店は6月にイカの塩辛の無料サービスをやむなく休止した。青柳社長は当時を振り返り、「サービス休止はできるだけ避けたかったため、販売のみを休止し、無料サービスは継続しようとしたものの、その影響で月間ベースで初めて赤字を出してしまった」と話す。今回のアクロス店オープンでは、北海道を中心にまとまったイカを確保できたことから期間限定の試みでサービスを復活。開店当日オープン前の行列に並んでいた顧客のなかには「塩辛を楽しみしていた」という声もあり、SNSでも「塩辛を食べにきた」という投稿も見られた。

 青柳社長は、「ウチは天ぷら専門店なんだけどね」と笑いながらも、「福岡で新しいイカの確保に成功した。これだけの量があれば、11月、遅くとも来年の1月には全店舗でイカの塩辛を提供できる」と話している。

(つづく)
【麓 由哉】

(後)

関連記事