2024年04月20日( 土 )

ユニクロとニトリが取り組むロボット倉庫は物流に大変革をもたらすのか(後)

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ニトリホールディングス・先進的な取り組み

 これに先立ち(株)ニトリホールディングスも子会社の(株)ホームロジスティクスが、ノルウェーのハッテランド社が開発したロボット倉庫「オートストア」を、16年2月から「東日本通販センター」で稼働させている。倉庫の広さは従来の半分、作業者数が4分の1ですみ、出庫生産性が5倍になるなどユニクロ同様効果が出ている。倉庫内に商品を収納したコンテナの最上部をロボットが自動走行し、コンピュータ端末からの指示に基づき、ロボットがコンテナの上から商品を出し入れする仕組みだ。作業員がコンテナの横を歩き回る必要がないため、通路スペースを設ける必要もなくなる。

 コンテナ最上部横のパソコンのモニター画面でロボットの走行状況が確認できる。ロボット1台の消費電力は、4時間の充電で最大20時間稼働、充電量が残り40%を切ると、走行スペースの端に設置された充電機器へ自動的に戻り充電する。

 入出庫作業は、従業員が端末を操作してコンテナを手元に取り寄せ商品を搬入、必要な分を取り出し、作業が終わるとベルトコンベアで次の商品や箱が運ばれてくる。作業中に出る不要な梱包資材などは、別のベルトコンベアに載せれば片づけてくれる。60台のロボットが約1万種類の通販向け製品を自動で仕分けている。

 オートストアのほかにも、17年12月に、「バトラー」という大型商品の搬送が可能なロボットを「西日本通販発送センター」に導入している。人手に頼った従来の方式と比較して、出荷効率が4.2倍になり、今後は5倍まで引き上げる計画だ。

 もともとニトリは1980年の自動立体倉庫の導入を皮切りに、先進的な取り組みを行ってきており、今後も機械化できるところは積極的に進めていこうとしている。すべてのプロセスを自分たちで担う「自前主義」を掲げるニトリは、物流に係るコストを抜本的に変えることが、「高品質・低価格」への近道であると考え、自社物流に取り組んできた。

海外展開での取り組みを生かすニトリ

 ニトリの売上の8割は海外商品で、荷扱い量は、20フィートコンテナで年間約17万本にも達するため、海外の生産、物流拠点から、国内の物流拠点までの効率的なネットワークの構築が必要だ。そこで、国内と海外のディストリビューションセンター(商品管理施設、DC)の役割を最適化し、効率化しコスト削減につなげている。

 従来であれば、国内で仕分けされていた商品を、海外であらかじめ店舗ごとにまとめておき、輸入することで、入荷後に保管・仕分けするというタイムラグをつくらず、輸入された港のコンテナから、すぐにトラックに積み替えられ、そのまま店舗に納入する「通過型」といわれる商品供給が可能となった。

 店舗への到着が早まれば迅速に商品の補充ができ、国内での在庫保管量とスペースは少なくてすむ。さらに、適材適所の商品供給ができることで、余剰商品を国内移動させる運搬が減り、物流経費において高コストであるトラック輸送費の削減にもつながる。不要な在庫をもたず、必要なところに、必要とされるだけの商品を供給する仕組みとなっている。

 そして、国内での作業負担をできる限り減らすことで、海外生産工場と店舗を一直線で結ぶ、最適な需給管理を実現させた。

 通関業務も自社で行うことで、生産した商品をよりスムーズに国内供給できるようになり、海外の船舶会社に対して、船や航路に関わる交渉ができるため、輸入される港と国内DCを最短ルートで輸送することが可能になった。

 こうした一連の取り組みで「お、ねだん以上。」の低価格を実現しているニトリ。ロボット倉庫もその一環だが、ユニクロと同じく、現時点ではEC向けにとどまっている。これが店舗配送にも拡大すれば、一気に物流コストの大幅な削減に結びつく。同社は、物流こそが事業の根幹だと改めて定義し、これからも物流改革に取り組んでいこうとしている。

物流改革を推進の一環としての倉庫の自動化

 物流は小売業にとって生産性を向上し収益力をアップさせる鍵となるもの。倉庫の自動化は、奇しくもファーストリテイリングとニトリホールディングスのSPA企業が先駆的に取り組みを進めている。同じSPAの無印良品の(株)良品計画も、国内の物流を担ってきた子会社のアール・ケイ・トラックを18年3月、吸収合併し、体制を強化、中長期的に効率的なグローバルな物流ネットワークの構築に取り組もうとしている。現時点で小売の最強モデルであるSPA企業が、物流改革を推進することで、さらなる高みを目指そうとしている。今後、メーカーや卸を巻き込んで、物流におけるイノベーションが急速に進むだろう。

(了)
【西川 立一】

(前)

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