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2019年01月16日 07:00

2019年の注目経営者、大塚家具の大塚久美子社長~「かぐや姫」の久美子社長にこれだけは言いたい「創業者の生き方をリスペクトせよ!」(後)

勝久氏の経営手法を全否定

 以降、久美子氏は、父親の勝久氏が確立した経営手法を次々と切り捨てていった。既存店では会員制を見直した。会員制は勝久氏の経営の一丁目一番地であった。

 大塚家具の特徴は、会員に家具の「まとめ買い」を促すことにある。販売手法は、来店客に名前や住所を書いてもらい、会員登録したうえで、広いショールームで、従業員が案内する。会員制は他社にないもので、会員制を基にした高価格帯の家具で成功した。ホテルは高価格家具の上得意先であった。かつては1人あたりの客単価が30万円を超えていた。

 久美子氏は「消費者の購入スタイルは単品買いに変わった」「受け付けや提案は客が抵抗を感じている」と判断した。「(1人でも)入りやすく、見やすい、気楽に入れる店づくり」を目指し、店舗にカジュアルな雰囲気を施して積極的な接客を控える手法を取り入れた。

 久美子氏は、父の経営路線を全否定した。このことが、14年のワイドショーを賑わした劇場型親娘ゲンカにエスカレートしていく。そして娘が父を追放するのである。

一橋大学でケインズを学んだキャリアウーマン

 大塚久美子氏は1968年、埼玉県春日部生まれの東京育ち。父親の勝久氏には、自慢の娘だったようだ。白百合学園中学校・高等学校理系コースを経て、一橋大学経済学部に進学した。ケインズの「確率論」をテーマにした卒業論文を作成。1991年に富士銀行(現・みずほ銀行)に総合職として入社した。

 大塚家具はそのころ、大規模小売店法(大店法)の改正を受け、全国に店舗を拡大しようとしていた。バブル経済期に計画された建物は次々と完成するのに、肝心の借りるテナントがないということで家賃が下がり、大きな売り場を必要とする家具屋にはとてつもないチャンスが到来した。

 当時、関東以外では初となる大阪への出店計画がもち上がっており、急速に社員が増え、組織体制の構築が急務になっていた。久美子氏はある時、銀行の人事部に呼ばれ「父親の会社に入ってはどうか」と説得された。勝久氏が人事の責任者に依頼したのだろう。

 久美子氏は大塚家具に入社。96年取締役に就任。小倉出店をめぐり、激論をかわし、創業者のカリスマ性だけに頼る商店経営に見切りをつけて大塚家具を去った。

春日部から日本橋までリヤカーで箪笥を運んだ

 もともと久美子氏がやりたかったのは、富士銀行時代に担当したIR(投資家向け広報)だった。1年間の休業を経て、05年に東京都千代田区に広報・IRコンサルタント会社、クオリア・コンサルティング(株)を立ち上げ、代表取締役に就き、06年からは筑波大学法科大学院に通った。経営者と弁護士の間に入る通訳のようになるという気持ちで勉強した。

 スタートアップ企業は、営業力が100%である。しかし、久美子氏は秀才だが、営業力はない。後に聞いたところでは、勝久氏が久美子氏のために客を紹介してやっていたそうだ。

 起業家としてうまくいきそうにないので、父親がつくった大塚家具で、コンサルタント理論に基づく経営をやりたかった。それが社長にこだわった動機だとみている。それはそれでかまわない。問題は創業者の父親に接する態度だ。

 埼玉県春日部市の桐箪笥職人の家に生まれた勝久氏は、職人にならずに家具販売の道に進み、中学生時代から父親の仕事を手伝った。

 勝久少年は、父親とリヤカーに箪笥を積んで、春日部から東京・日本橋まで往復80kmの距離を百貨店に納めに行ったという逸話が残っている。
勝久氏が血と汗で築いたのが大塚家具だ。二代目は自分がいくら優秀でも、創業者の艱難辛苦の生き方を全否定すべきではない。久美子氏に、これだけは言いたい。
「創業者の生き方をリスペクトせよ!」。  

(了)
         【森村 和男】

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