2024年04月16日( 火 )

ドラッグストア業界が挑む「食と健康」市場創造戦略~製配販連携で10兆円産業目指す(中)

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「未来投資戦略2018」では「食による健康の増進」を記載

 経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課の上村昌博課長は、経済新市場づくりの観点から政策的な点に触れ、取り組みを紹介した。

 同氏は、「向こう100年くらいは、人口構成が大きく変わる。6割が高齢者で、4割が若い人たちだ。そこで予防・健康増進が大事になる。そこに新しい産業の可能性があると考えている。早期発見、行動を変えてもらうということが大事だ。そのためにも栄養、食の役割が極めて重要になる。それを支援するのが経産省の役割だと思っている」と話した。

 同省は、予防を基本とするような健康医療サービスをどう提供していくか、どういう体制で行っていくかが課題だとして、早期診断技術の開発支援、定期健診の徹底、技術開発試験を行っていることを紹介した。

 上村課長は、政府の成長戦略のなかに盛り込まれている「未来投資戦略2018」(6月15日閣議決定)についても解説。「食による健康の増進」を進めていくことが明記されている点に触れ、健康メリットのあるトクホ、機能性表示食品などについて、今年から5年間で科学的な知見を進めていく取り組みを紹介した。

 同省の取り組みは、5年先の保健行政における新しい保健機能食品を目指していこうという施策。政府の閣議決定を踏まえ、同省では、食を通じた「健康システムの確立」を目指している。

「街の健康ハブステーション」構想の実現目指す

 ここで「食と健康」が市場創造につながる社会的要因について考えてみよう。要因としては、次の5つが考えられる。

 (1)超高齢社会で健康ニーズが高まっている。(2)国の健康寿命延伸政策の目玉として、機能性表示食品が制度化された。(3)予防・健康管理の取り組みが国家的課題となっている。(4)公的医療・介護保険サービスの抑制策が始まっている。(5)公的医療・介護保険外サービスの産業化が始まっている。
 大手製薬企業で機能性表示食品やOTC医薬品の商品開発を行う担当部長は、こう話す。

 「“食と健康”による市場創造は、製薬企業がもっと積極的に関わることが必要だ。製薬業界でもすでに、機能性食品や機能性表示食品の分野に参入しているところが多数ある。健康寿命延伸を推進する企業として、食の分野でもはたすべき役割は大きいだろう」―。

 超高齢社会のなかで、健康ニーズはますます拡大し、多様化することが予想されるだけに、そうした潜在ニーズを顕在化させることが「街の健康ハブステーション」構想の目的でもある。その重要な柱の1つとして、「食と健康」による市場創造があり、その実現にDgS業界は今、総力を挙げて取り組もうとしている。

実証実験は、地域、業態の異なる東京・神奈川・千葉の4店舗で行う

 同プロジェクトは、製配販(メーカー、卸、小売)に加え、行政(厚労省・経産省・消費者庁)、日本栄養士会などの協力を得ながら、19年2〜3月に実証実験を実施し、中間報告を3月の「JAPANドラッグストアショー」で発表する。

 今回の実証実験は、地域・業態の異なる東京・神奈川・千葉の店舗で行う。店舗選定に当たっては、(1)比較的高齢者が多い郊外型立地店舗、(2)管理栄養士が地域包括支援センターなどと連携して、在宅患者訪問栄養食事指導業務などに取り組んでいる店舗、(3)DgSが旗艦店舗として、在宅に取り組む独立薬局と連携できる店舗、(4)外来・在宅調剤に取り組み、健康食品などの適正販売、情報提供に取り組む店舗(健康サポート薬局など)―を基準に選定。

 実証実験を行う店舗として、ウエルシア薬局、フィットケアエキスプレス(カメガヤ)、スギ薬局、トモズ(住友商事グループ)の4店舗が決定した。棚割り・陳列・販促や登録販売者・管理栄養士などを活用した販売マニュアル案については、4月〜6月に開かれる常任理事会で承認を得る予定。そのうえで各企業、店舗に通知。「食と健康」による売り場づくり、そのための品ぞろえ(機能性表示食品や介護食品、その他)を行い、販売強化を目指すという。

 また、同プロジェクトでは、ビジネスモデルともいうべき、成功事例店舗を1年以内に立ち上げる計画だ。この店舗を情報発信拠点として、生活者を積極的に「食と健康」のマーケットに参加させる戦略を描いている。

 これを定着させるためには、製配販の連携が不可欠だが、とくに生活者に接遇する登録販売者・管理栄養士などによる店頭からの情報発信は、極めて重要となる。これに備えJACDSでは、昨年から商品について情報提供を行う登録販売者、管理栄養士などのために、コンシェルジュマスター制度による人材養成も始めている。店頭では、米国でDgSの薬剤師が薬の飲み合わせや服薬指導などに使用しているデータベース「ナチュラルメディシン」を店頭に配置する方針だ。

(つづく)

【取材・文・構成:大川 善廣】

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