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2019年01月23日 11:58

排泄予測デバイス「DFree」で実現する人の尊厳を大切にする介護へ(前)

トリプル・ダブリュー・ジャパン(株) 代表取締役 中西 敦士 氏

 現在、全国で介護を受けている方は約600万人。自分で排泄をコントロールできなくて便が漏れてしまう方は20~65歳で300万人以上、65歳以上で130万人以上といわれている。排泄で困っている人の役に立ちたいという想いから生まれた世界初の排泄予測デバイス「DFree(ディーフリー)」は、超音波を使ったセンサーで膀胱を検知し排尿のタイミングを予測して、使用者のスマートフォンにトイレに行くタイミングを知らせる。今まで排尿がいつ起こるかわからずに漏らしてしまうことで悩んでいた人も、排泄の悩みや不安が軽減されることで前向きに生きる意欲を高めることができる。

排泄の悩みを軽減する「DFree」はどこから生まれたのか

トリプル・ダブリュー・ジャパン(株)
代表取締役 中西 敦士 氏

 「DFree(ディーフリー)」を開発したトリプル・ダブリュー・ジャパン(株)の代表取締役 中西敦士氏は、「米国に留学していた当時に引っ越し作業をしていて、トイレが近くになかったため、トイレに行くことができずに自分のお腹にたまっていた『うんこ』をもらしてしまう経験をした。その忘れられない経験から、排泄で困っている人の悩みを解決したいと決意し、ディーフリーの開発を始めた」と話す。

 ディーフリーは介護で排泄介助をしている人や、排泄のタイミングがわからずに漏らしてしまう人に、排泄のタイミングを予測して知らせる機器だ。今まで、いつ排泄が起こるかわからずに困っていた人は前もって排泄の予測ができるようになるため、トイレに行くタイミングがわかるようになる。介護者からも、トイレ誘導がスムーズになったという声が届いているそうだ。

 ディーフリーは現在、トライアルを含めて500以上の介護施設で排尿予測デバイスとして利用されている。しかし、排尿のタイミングを予測して知らせる機器という今までになかったアイデアをかたちにするには、多くの課題があった。たとえば、どのようなデータを取得したら排尿のタイミングを予測できるのかということは、今まで前例のない課題だった。そのため、高度な知識をもつ社内の専門家とともに、1つひとつ検証して製品をつくり上げていったという。

 そして、前例のない革新的なデバイスを、既存のサービスが確立されている介護業界に導入する場面では、どのように最初の一歩を踏み出したのだろうか。中西社長は「発売前の2015年にクラウドファウンディングを行った時に、介護施設の方々から『排泄介助の役に立つので、ぜひ早く製品化してほしい』と多くの声を受け取ったことが、介護施設向けにディーフリーの販売を始めたきっかけ。今までになかった新しい製品を市場に導入するときには、ユーザーや業界の課題や目指しているものを理解して、いかに現場のニーズにマッチさせるかが大切」と話す。

DFree(ディーフリー)

 介護施設にディーフリーを導入するにあたっては、社内で介護の資格を取得して勉強会を行い、社長と社員が介護の現場に入り込んで業界の状況やニーズを把握した。そして、介護の現場で実感した排尿の悩みを軽減するという視点で製品を完成させたという。発売当初には応援してくれる方々や協力会社を得ながら、徐々に販売規模が広がっていった。製品の試験段階から現場に足を運び、肌で感じたことを生かして現場のニーズを汲むという地道な取り組みが、最も顧客のニーズに合った人の心をつかむ製品の誕生につながると感じる。

 また、ゼロから製品を生み出すことは、前例がないために成功の可否の判断が難しい。中西社長は「まず、本人の覚悟が大きい。そして、前例がなくてもやってみることに対する周りの理解や、失敗を次の成功に生かせる土壌が生まれたら、多くの企業がイノベーションに取り組みやすくなるのではないか」と話す。中西社長はディーフリーの開発にあたり、形になる前からディーフリーが完成して世の中の役に立つことを確信しており、迷いが一切なかったという。イノベーションを起こす場面では、本人が確信をもって取り組む姿勢も成功の秘訣ではないかと感じる。

(つづく)

【取材・文・構成:石井 ゆかり】

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