2024年04月20日( 土 )

地場建設、不動産会社1,400社を組織化 個人の最大資産である住宅を「資産」へ(後)

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ハイアス・アンド・カンパニー(株) 代表取締役社長 濵村  聖一  氏

建築家が設計する「R+house」とは

 ――アールプラスハウスでは、建築家が設計する家を“売り”にしていますね。

 濵村 手軽に建築家と家をつくりたいと願う一方、建築家に家を建ててもらう方は多くありません。弊社の独自調査では、「建築家に自分の家を建ててもらうことに憧れたことはありますか」という問いには、71%の方が「ある」と回答しています。しかし、実際に建築家に依頼したのはわずか12%。多くの方は大手ハウスメーカーなどに依頼して、建築家との家づくりをあきらめているのです。その理由は、「設計料が高い」「どう知り合えばよいかわからない」「どう頼んでよいかわからない」などが挙げられますが、アールプラスハウスでは不透明であったコスト、建築家への依頼方法、家づくりの進め方に関する情報を提供しています。当初は建築家に設計してほしいと思っていても、結局は断念されたケースも多く、その潜在需要を我々が奪還します。

 アールプラスハウスは断熱性能でも低コスト高品質を掲げています。アールプラスハウスのUA値(外皮平均熱貫流率)(※)は地域によっては0.23(全国の全棟平均実績でも0.46)。ゼロ・エネルギー住宅(ZEH)という次世代の省エネ基準では、北海道が目安としている0.4以下を、はるかに上回ります。これを2,200万円程度とローコストで提供し、なおかつデザイン性にも優れています。

R+house

 ――“コスパ世代”と呼ばれる、「流行を追わず、高すぎたら家もクルマも不要」という層が、これから家を購入する時代がそろそろ到来します。

 濵村 この世代はとても合理的です。「家は3回建てないと満足した家が建てられない」という言葉がありますが、この世代には、建築家との詳細な打ち合わせを必要としない方が多いようです。合理的な世代に受け入れられるように、「アーキテクチャル・デザイナーズ・マーケット(ADM)」という商品を提供しています。ADMは、建築家によってあらかじめデザインされた住宅プラン集から選択できるシステムです。現在用意しているプランは約380です。建築家が手がける高気密・高断熱の高性能住宅を本体価格1,300万円~1,600万円で提供しています。アールプラスハウスとADMの2つの軸で、家づくりを提案しています。

 ――戸建賃貸事業についてはいかがですか。

RakutenStay×WILLSTYLE_松江

 濵村 低コスト高性能戸建住宅を賃貸する「WILL STYLE」という商品で、累計供給実績は、約3,500棟を数えます。創業時から続けてきた事業で、オーナーが保有している土地をそのまま眠らせてしまうのは惜しいという趣旨から、好評をいただいています。

 また、楽天LIFULL STAY(株)と提携して、「WILL STYLE」を楽天仕様に変え、訪日外国人や日本人向けの戸建型宿泊施設事業にも乗り出しました。18年5月から島根県松江市で、1号店となる「Rakuten STAY HOUSE×WILL STYLE 松江」の営業を開始しています。賃料月10万円を下回るといわれていた物件でしたが、宿泊施設として稼働してから3カ月間の月平均収入は60万円と6倍の売上になりました。戸建賃貸事業は今後、注力していく予定です。

地方創生とともに地場企業を元気に

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 ――最後に、まちづくりについてお聞かせください。

 濵村 私が理想としているまちづくりの1つのかたちは、岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」で、数少ない日本の地方創生の成功事例と言っていいものだと思います。ここは田んぼしかなかったところで人が次々と流出していく典型的な衰退地域でした。しかし、今や駅前の町有地10.7haを中心に、ホテルやバレーボール専用体育館、図書館、カフェ、産直マルシェなどが入居する施設を相次いでオープン。年間80万人が訪れる町になっています。そのキーマンが岡崎正信さんで、「オガールプロジェクト」の推進役として、紫波町の公民連携事業を企画推進しています。

 岡崎さんは、国土交通省の「新・建設業 まちづくり研究会」のメンバーにも名を連ねています。そのほかのメンバーは、早稲田大学研究院客員教授の赤井厚雄氏や、麗澤大学客員教授・元国土交通省土地・建設産業局長の内田要氏などです。赤井教授は弊社の社外取締役でもあり、弊社も「新・建設業 まちづくり研究会」にさまざまな提言をしている関係で、岡崎さんともまちづくりについて積極的に意見交換をしています。

 また、10年前より世界各国を回って、まちづくりのプロの方から情報を収集しています。とくに、自治体も関係しますので、法改正も必要になってきます。そこで弊社が運営会社となって、「地方創生まちづくりネットワーク」を創設しました。これは、地域で実務を行うゼネコンや工務店などを対象に、まちづくりの担い手として実務面で必要となる企画開発手法や施設の管理運営手法などを習得してもらい、持続可能なビジネスモデルを実践する地域建設業のネットワークです。

 地方には、遊休地がたくさんあります。その土地を保有するオーナーとテナント出店を希望する方、建物を建設する地域建設業者をつないでいく役割をはたしていきます。

 山口県では実績もできつつあり、今後、本格的なまちの再開発を行い、再開発の方策をパッケージ商品化していくことを検討しています。成功事例ができれば、全国で展開していきます。併せて、まちを再生する役割を担う地域建設業界も元気になっていくと確信しています。

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(了)

【長井 雄一朗】

※外皮平均熱貫流率(UA値)は、住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示す。

<プロフィール>
濵村  聖一(はまむら・せいいち)
1961年11月、山口県下関市出身。日本電池(株)(現・(株)GSユアサ)を経て、83年6月に(株)日本エル・シー・エー(現・(株)エル・シー・エーホールディングス)入社。同社取締役を経て、2001年5月に同社常務取締役に就任。04年5月、(株)エル・シー・エー・リコンストラクション代表取締役社長就任。05年3月にハイアス・アンド・カンパニー(株)設立とともに代表取締役社長就任し、現在に至る。

<Company Information>
代 表 : 濵村 聖一
所在地 : 東京都品川区上大崎2-24-9 アイケイビルディング5F
設 立 : 2005年3月
資本金 : 4億63万円
売上高 : (18/4連結)46億5,987万円
T E L : 03-5747-9800

(前)

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