2024年03月29日( 金 )

海上保安庁、関空島周辺海域の航行制限を東京湾周辺でも検討

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海上保安庁は1月31日から、荒天時に関西国際空港(以下、関空島)周辺を航行する船舶に対し、関空島から3マイル(約5.5km)以内の船舶の航行を制限する運用を開始している。
2月8日に行われた第4回目有識者検討会では、関空島周辺の海域以外で航行制限を検討すべき海域として、東京湾周辺海域が議題に挙げられた。


航行制限の「対象外」とされる船舶の種類

 第4回目有識者検討会では、本運用の具体的な説明がなされ、荒天時における関空島周辺海域の航行制限について、航行制限の「対象外」となる船舶の詳細が公表された。「対象外」とされる船舶は以下の通りとなる。

⑴総トン数100t未満の船舶
⑵警察艇、消防艇や、海難救助などを行う船舶
⑶巡視船、巡視艇、監視取締艇などの海上保安庁の船舶

 ただし、危険を回避するためやむを得ず制限区域内を航行する船舶や、泉州港を出港する船舶については、同庁に要連絡の上、海上保安庁長官が認めれば、航行制限の対象外となる。

 なお、本運用に違反した船舶については、海上交通安全法第47条に基づき、3カ月以下の懲役または30万以下の罰金が科される。

台風21号を基にしたシミュレーション

 併せて、上記運用ルールに基づくシミュレーションも公表されている。昨年9月4日に近畿地方を通過した台風21号を基にシミュレーションした場合、気象庁が9月1日午前11時、大阪府に台風襲来による暴風警報の可能性を発表。この時点で第五管区海上保安本部は、台風の規模や予想進路などから、航行制限についての検討を開始。同日午後3時時点で、警報による航行制限の実施および実施期間を「9月3日午前8時から解除するまでの間」と定め、海事関係者に周知するとしている。海保関係者によると、気象庁の暴風警報発令が昼過ぎから夕方にかけて行われた場合は、航行制限の発令が夜間から深夜にかけて行われる可能性もあるという。

 航行制限にともない懸念される物流への影響について、海保関係者は「施設管理者と十分に意思疎通を行ったうえで実施し、問題が出ないようにする」とし、運用上何らかの支障が出た場合、関係各所との協議により柔軟に対応していくとしている。

東京湾内の海域を3マイルルールで当てはめると

 今回の有識者検討会議で、関空島周辺以外の検討海域として挙がった東京湾内の海域。第三管区海上保安本部が公表した資料によると、昨年9月30日の台風24号接近時(同日午後8時時点)には、およそ492隻の船舶が東京湾内に錨泊。このうち、285隻が港付近、207隻がそれ以外の海域(海側)に錨泊している。

 当時の状況を基に、(1)東京湾内の海上施設(対象9施設)周辺3マイル以内を航行制限した場合(2)対象9施設のうち、東京国際空港(羽田空港)、東京湾アクアラインの2施設周辺3マイル以内を航行制限した場合で当てはめて比較すると、(1)の場合、航行制限による影響を受ける船舶はおよそ230隻、(2)の場合はおよそ94隻とされる。ただし、これら航行制限による影響を受ける船舶がどのような安全対策を取ればよいのかについての具体的な方策は提示されていない。前述の海保関係者は、「東京湾の航行制限についてはまだ検討中の段階」と前置きをしたうえで、「まずは第三管区海上保安本部による情報提供を行い、そのうえで必要に応じ、法律の適用を視野に入れた運用が検討されるのでは」と話している。

 3月中旬には、第5回有識者検討会議が開かれる。年度内をメドに、関空周辺以外の海域を含めた再発防止策のあり方についての意見がどのようにまとまるかが注目される。

【長谷川 大輔】

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