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2019年03月08日 15:07

混雑緩和の効果は限定的?! 都が時間帯別運賃を検討へ

都営地下鉄神保町駅

 東京の通勤ラッシュ時における電車の混雑率は殺人的だ―国土交通省の資料によると、東京メトロ東西線の木場~門前仲町区間の199%を筆頭に、2位のJR総武線各駅停車の錦糸町~両国間が197%、3位のJR横須賀線の武蔵小杉~西大井間が196%、4位のJR南武線の武蔵中原~武蔵小杉間が189%、5位のJR東海道線の川崎~品川間と日暮里・舎人ライナーの赤土小学校前~西日暮里間がともに187%となっている。

 東京都は2017年度から、民間企業と連携して「朝が変われば毎日が変わる」をキャッチフレーズに通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす働き方改革の1つ「時差Biz(ビズ)」キャンペーンを展開している。ほかにも、各民間企業が自主的に実施している在宅勤務である「テレワーク」なども混雑緩和策の一助となっている。

 これらの混雑緩和策に加えて東京都は、19年度からラッシュピーク時と比較的余裕がある時間帯の運賃に差をつける「時間帯別運賃」の是非について検討する方針を固めた。これは19年度予算案のなかに「快適通勤の実現に向けた混雑緩和策等の検討調査」の項目を入れ、輸送力強化などの観点から、先端技術も活用した車両や運行システムの改良など中長期的に実現可能な施策について検討するもの。具体的には信号システムを工夫することで電車の運行間隔を短縮する方法や、電車の運行本数を増やす工夫について議論する。このうちの1つに、「時間帯別運賃」も俎上に挙がっている。快適通勤に向けた混雑対策の検討・調査費は5,000万円が計上された。

 「国交省とも相談し、どの程度の規模で何ができるか、それとも難しくて実現困難なのかを洗い出しをしていく」(東京都)といい、今後は、アメリカ、イギリス、シンガポールなどの導入事例を調査し、有識者や鉄道事業者からも意見を聞きつつ、混雑緩和策の効果的な施策を模索していく方針だ。ただし、自動改札システムの改修の負担もあり、実現の可否については不透明。東京都としては、「膨大なお金がかかということになれば、実現は難しい」とのスタンスだが、混雑緩和について、「いろいろな政策を総動員しながら組み立てをしていく」とのことだ。小池百合子・東京都知事も「満員電車ゼロ」を重点政策に掲げており、東京都のラッシュ時の混雑解消の試みについて注目が集まりそうだ。

【長井 雄一朗】

「時間帯別運賃の導入検討」について

(公財)日本都市センター 研究員
 高野 裕作 氏

公益財団法人日本都市センター
高野 裕作 氏

 東京のような大都市圏において通勤時の混雑を解消するため、時間帯別運賃を導入したとしても、効果は限定的であろう。いまの行動パターン(+時差通勤など多少の行動変容)のまま混雑を解消するなら、圧倒的にインフラが足らず、線路の増設、駅の改良など、大掛かりな投資が必要になる。その原資としてピーク時の運賃を増額するということであれば、特定都市鉄道整備促進特別措置法の枠組みで過去に加算運賃を適用していた事例もあり、ここで議論されている時間帯別運賃と運賃変動の幅は異なると思われるが、特段新しい議論とも思われない。

 むしろ、現状は定期利用によってピーク時ほど安い運賃の利用者が多いのだから、定期割引率の見直しなど、その是正から始めることも考えられるのではないか。根本的には、東京都心への通勤需要・オフィスの集中が問題なのであるから、これを分散させることを目指すべきであり、分散させる衛星都市や地方都市の魅力(住民にとっても、事業者・経営者にとっても)を高めることが求められ、その1つとして公共交通を充実させることは効果的と思われる。

 時間帯別運賃について、米・英・シンガポールなどで適用例があるというが、とくに福岡や北九州のような地方中枢都市くらいの規模であれば、ドイツの運輸連合のような運賃・サービスの統合を目指すべきだと考える。運輸連合のもとで実現しているサービスでは、バス、路面電車、地下鉄、郊外鉄道、さらには水上バスなどを含め、都市圏の公共交通は1つの運賃体系の下で利用することができ、異なるモード間で運賃が加算されることはない。また、ダイヤの連携も図られ、乗り換えもスムーズになるように工夫されている。具体的な運賃体系は都市圏ごとに異なるが、市内の中心部は均一料金とするゾーン制などわかりやすい制度が導入されているほか、一日乗車券を大人1人がもっていれば子どもも複数人乗ることができるなど、自家用車への対抗を意識した低廉な運賃が提供されており、それと比較すれば時間帯別の変化などは小手先のテクニックに過ぎない。

 一方、最近はMaaS(Mobility as a Service)という言葉も注目されているが、自動運転やシェアリングサービスだけでMaaSが実現するのではなく、上述のような統合された、利用しやすい公共交通ネットワークのサービスが基盤として整えられ、そのうえにICTによる最適化がなされてこそ、真の意味でMaaSになり得ると考えられる。使いやすい運賃、統合されたサービスによって、市民の行動は自動車依存から公共交通利用に変わり、生活の質が向上し、企業にとっても魅力的なまちとなることが期待される。

 使いやすい、低廉な運賃の導入によって事業者の収入が減ってしまうということに対して、欧州では当たり前に公的資金によって公共交通が運営されているが、日本では公共交通に対する公共の支出はあまりに少ないのが現状である。市民の生活の質の向上のために、公的な資金による運営のための財源のあり方など、これまでの考え方とは違う、議論が求められている。

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