
近年、猛暑による熱中症のリスクが社会的課題となっており、労働現場における対策の必要性が高まっています。とくに建設現場や運送業など、屋外での作業をともなう業種では、熱中症による労働災害が後を絶たず、深刻な問題となっています。厚生労働省の統計によると、2年連続で熱中症による死亡災害が30人レベルであり、死亡災害に至る割合が、他の災害の約5~6倍となっています。また、死亡者の約7割が屋外作業者であるため、気候変動の影響でさらなる増加が懸念されています。
このような状況を踏まえて、今年6月から労働安全衛生規則の改正により、事業者が講ずべき熱中症対策について、法令上明記されました。
熱中症を「見つける」→「判断する」→「対処する」ことができるようにする必要があります。具体的には、WBGT(湿球黒球温度)28度または気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業を行うときに、次の2つの報告体制を整備し、それを周知することが求められます。
1.熱中症患者の報告体制整備と周知
熱中症の被害拡大防止のためには、早期発見が不可欠です。そのため、①熱中症の自覚症状がある作業者、②熱中症の恐れがある作業者を見つけた者が、誰に報告すればいいかを明確にするとともに、熱中症の初期症状で早期に発見できる体制整備とその周知が求められます。
熱中症の自覚症状として、めまい、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感などが挙げられますし、他覚症状として、ふらつき、生あくび、大量の発汗などが挙げられます。これらの症状があれば熱中症を疑う必要があります。
2.熱中症の症状悪化防止措置の内容や実施手順の整備と周知
熱中症の疑いがある場合に、迅速かつ適確な判断を行い、悪化防止策を講じることが必要です。具体的には、次のような措置の実施手順などを整備しておくことになります。
①作業からの離脱
②身体の冷却
③必要に応じて医師の診察または処置を受けさせること
④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先および所在地等の周知
熱中症対策を怠った事業者は、作業や建設物使用停止命令等を受けたり、実施義務違反者には罰則も科されますので、内容を理解して対策を講じる必要があります。
また、そもそもWBGT測定器を設置して、職場環境を把握し、休憩場所の確保や作業時間の短縮などを検討するとともに、涼しい服装、水分や塩分の定期的な摂取などの熱中症にならないための対策も重要です。
なお、厚労省が「職場における熱中症予防情報」のサイトを公開しており、動画でわかりやすく解説しているほか、予防のためのチェックリストや予防法の解説、対策例の紹介などを行っています。すぐに活用できますので、ご参考にしてください。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
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<プロフィール>
岡本成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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