• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年04月24日 07:00

世界を変える「ブロックチェーン」と日本発の可能性(2) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

中国―先見性とスピードで世界を凌駕

 ここ数年、国家の規制にとらわれない企業連合の誕生に世界の耳目が集まるようになってきた。アマゾンにしてもマイクロソフトにしても国家の枠を超えた研究開発の動きを強めている。彼らは資金面でも人材面でも国家を超えた存在となる可能性を秘めているわけで、その動きを加速させつつあるのが「ブロックチェーン技術」である。となれば、ビジネスのあり方や国家の有り様も変わらざるを得ない。

 アメリカのクリントン元大統領といえば、ビジネス的嗅覚が人一倍鋭いことで知られる。言い換えれば、お金儲けには目がない存在である。そのクリントン氏曰く「ブロックチェーンは90年代末のeコマースに匹敵する。いや、それ以上かもしれない。まさに “金の卵を産むガチョウ”だろう」。というわけで、アメリカのみならず世界を回り、ブロックチェーン技術の伝道師のような旗振り役を務めているのがクリントン元大統領だ。

 とはいえ、この分野で最先端を走っているのは中国である。習近平国家主席曰く「ブロックチェーンと人工知能(AI)、そしてモノのインターネット(IoT)が世界の経済構造を変えている。中国はこの分野で世界No.1を目指す」。(中国社会科学院の17年次学界での発言)

 国家の肝入りということもあり、中国では国営中国中央電視台(CCTV)が18年6月の番組で「ブロックチェーンはインターネットの10倍の価値を生むだろう」と報道。その報道の直前となる4月には100億元(約1,697億円)を投じたブロックチェーン工業団地を開所し、というベンチャー企業も旗揚げした。

 それ以外にも、中国政府の動きは素早く、アリババ、テンセントといったIT企業と組んで、ブロックチェーンと分散型プラットフォームの開発を促進する決定を下し、国家予算の投入にも積極的な姿勢を見せている。この技術の応用分野は金融から医療、教育まで幅が広い。アリババとテンセントが出資した保険会社「衆案保険」(ZhongAn社)はすでに100以上の病院と提携し、診断記録、金融、支払い業務をブロックチェーンで行うサービスを始めている。

 日本ではあまり知られていないが、アリババはブロックチェーン技術に関する特許では世界一の座を占めている。何と、IBMやマスターカードより多い100近い技術特許を獲得済みだ。17年の国際特許406件(16年は134件)のうち、中国企業は56%を押さえているのである。

 「グレーター・ベイエリア」と呼ばれる香港、マカオ、深圳、広州地域では中国の中央銀行にあたる人民銀行が進める「ベイエリア貿易金融ブロックチェーン・プラットフォーム」の拠点化が着々と進んでいる。何かとアメリカから目の敵にされている感の強いファーウェイに至っては、18年11月から世界を相手にしたブロックチェーン・サービス(BCS)を立ち上げた。

 中国ではすでに263ものブロックチェーンに特化したプロジェクトが進行中である。これは全世界で展開されているブロックチェーン関連事業の4分の1を超えるシェアを確保したことを意味する。この新たなシステムの導入に関していえば、中国はアメリカをはるかに凌駕している。先見性とスピードの速さでは中国が官民一体の強みを発揮しているといえよう。現時点では金融業界が最も積極的な導入を図っており、中国では615の企業がサービスを提供中である。22年までには世界で117億ドルがブロックチェーンによって使用されるとの予測が専らだ。PwCの調査によれば、「3年ないし5年以内に、中国がブロックチェーン技術で世界をリードする」とのこと。残念ながら、日本の存在感が薄いのが気にかかる。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年02月18日 15:51

最優先課題は安倍内閣に終止符を打つことNEW!

 新型ウイルス肺炎の第2の感染拡大中心地となっているダイヤモンド・プリンセス号は安倍内閣によるウイルス培養船である。同号に対しては2月1日に沖縄那覇で検疫を行い日本へ...

2020年02月18日 15:14

トライアル、「スマートストア」化推進~東篠崎店にAIカメラ、レジカート導入NEW!

 トライアルカンパニーが店舗の「スマートストア化」を進めている。大量のAIカメラを導入し売り場の欠品防止に活用する一方、レジカートでレジ待ち時間をゼロにするというのが柱。

2020年02月18日 14:49

アベノミクスがもたらす「資本栄えて民滅ぶ」国の未来(1)NEW!

 第2次安倍内閣が発足して丸7年の時間が経過した。企業利益は倍増し、株価は3倍水準に上昇し、メディアがアベノミクス成功とはやし立てるが民の竈の火は燃え尽きる寸前だ。2...

2020年02月18日 14:03

社名を名乗らず勧誘し商品送りつける~鹿児島市の健康食品会社に業務禁止命令NEW!

 経済産業省九州経済産業局は2月14日、健康食品や自然食品の販売を手がける(株)RK企画(鹿児島市)に対し、業務の一部(電話勧誘販売に関する勧誘、申込受付および契約締...

2020年02月18日 14:02

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡 氏(1)NEW!

 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全...

2020年02月18日 11:30

【シリーズ】生と死の境目における覚悟~第2章・肉親を「看取る」ということ(5)NEW!

 石田弘次郎(仮名)の姉は、母の葬儀後、すぐ東京に戻った。前回記したように、姉は母の遺品整理で「金目」のモノは自分が引き取った。つまり「カネ」のためのみに遺品整理を行...

2020年02月18日 11:23

久田屋で街焼肉をもっと身近に~糸島の老舗ヒサダヤNEW!

 福岡県内で「肉のヒサダヤ」7店舗の運営を手がけ、最高品質の国産和牛を、専門店だからこそ実現可能な価格帯で提供する(株)ヒサダヤ。1971年の創業以来、糸島市を拠点に...

2020年02月18日 10:30

ホームセンター大手5社のシェア44.1%~鈍い寡占化、M&Aの遅れが一因NEW!

 データ・マックスが売上高上位5社(DCMホールディングス、カインズ、コメリ、コーナン商事、ナフコ)の2018年度の市場シェアを調べたところ44.1%と5年前から2....

2020年02月18日 10:00

これからのカードは指紋センサー搭載カードに(後)

 BTBLが開発した指紋センサー搭載カードは、既存の金融機関のクレジットカード向けのカードだけでなく、未来の電子身分証明書など、幅広く活用されていくことになると李代表...

2020年02月18日 09:48

【働き方改革はブラック企業を漂白できるか】「何を言うか」より「何をしたか」で評価される企業へ(前)

 経営者や上司が自らの立場を利用し、地位や人間関係で立場の弱い従業員や部下に対して精神的・身体的な苦痛を与えることが日常的に行われている会社―これらは俗に「ブラック企...

pagetop