【検証】日本政府、経団連などが牽引するもSDGsはまだ道半ば
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年05月13日 07:05

【検証】日本政府、経団連などが牽引するもSDGsはまだ道半ば

日本のSDGsモデル構築目指す

 2015年9月に国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)とは、30年までをターゲットにした17の分野からなる開発目標(指針)だ。「誰1人取り残さない」をキャッチフレーズに、「持続可能で調整と包摂性のある社会の実現」を目指している。2000年から15年までをターゲットにした「MDGs」(ミレニアム開発目標、2000年採択)の後継目標であり、MDGsが主に途上国を対象にした目標だったのに対し、SDGsはすべての国を対象にしている。SDGsでは、各国政府に限らず、自治体や企業、一般市民など「すべてのステークホルダー」を参画主体とし、世界のあらゆる課題解決に貢献することを掲げている。

 日本政府は16年5月、総理を本部長とするSDGs推進本部を設置し、アクションプランの策定やジャパンSDGsアワードの創設のほか、SDGs未来都市(29都市)、自治体SGDsモデル事業(10都市)の選定などを実施。SDGsを「自治体の地方創生実現に資するもの」と位置付けている。日本政府は、日本のSDGsモデルを構築し、20年のG20サミット、東京オリンピック・パラリンピック、25年の大阪万博などで情報発信する考えで、アジアやアフリカなどへのビジネス展開も視野に入れている。

 自治体のSDGs推進、地方創生などに向け、18年8月に「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が設立された。会長には、北九州市の北橋健治市長が就いている。このプラットフォームは、SDGs未来都市などに選ばれた自治体と企業、大学、NPOなどの民間団体が連携し、課題とその解決策などに関する情報交換や、ステークホルダー間の連携などを促進し、SDGs推進による地方創生につなげるのが目的。テーマごとに16の分科会が設置され、活動が行われている。都道府県や市町村、民間団体など645団体(19年3月末現在)が参加している。

IoTやAI、ロボットなどで新たな社会を

 日本の経済界もSDGsの推進に乗り出している。(一社)日本経済団体連合会は17年11月、「企業行動憲章」を改定。「イノベーションを通じて社会に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図る」を始めとする10の原則が盛り込まれた。この改定では、「Society 5.0」の実現を通じたSDGsの達成が柱になっている。

 「Society 5.0」とは、内閣府が示した、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合したシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の新たな未来社会を指す言葉。「狩猟社会」(Society 1.0)、「農耕社会」(Society 2.0)、「工業社会」(Society 3.0)、「情報社会」(Society 4.0)に続く、人類史上5番目の新しい社会とされている。大企業を中心とする経団連は、IoTやAI、ロボットなどによるイノベーションによって、SDGsを推進することを明確に打ち出しており、SDGsに関する特設サイトも開設する入れ込みようだ。大手企業すべてが対応しているわけではないが、少なくとも、CSRの世界では「SDGsは共通言語」として定着している。

 経団連がSDGsを重視したのには、ESG投資の拡大が背景にある。ESG投資とは、SRI(社会的責任投資)として、企業の「環境」(Environment)、「社会」(Social)、「企業統治」(Governance)を考慮する投資。企業への投資の是非を判断する際、財務情報だけでなく、環境対策やダイバーシティ、取締役の構成などのCSR(企業の社会的責任)も投資基準になる。

 世界全体のESG投資の運用額は2,500兆円を超えていると言われ、日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資にシフトしている。企業がESG投資を受ける際、SDGs推進の有無は大きな意味をもってくる。GPIFでは「GPIFによるESG投資と、投資先企業のSDGsへの取り組みは、表裏の関係にあるといえる」としており、企業のSDGsへの対応が投資基準になっている。

対応遅れる中小企業SDGs偽装問題

 大企業ではSDGsへの理解、対応が進みつつあるが、中小企業を見ると、SDGsに対する認識、理解不足が際立つ。経済産業省関東経済産業局が18年10月、1都10県の中小企業(サービス業、製造業、建設業、小売業、卸売業など)を対象に実施したウェブアンケート調査によれば、「SDGsについてまったく知らない」と回答した企業が約84%に上る一方で、「SDGsについてすでに対応・アクションを行っている」企業は1.2%に止まった。回答のあった企業のうち、6割以上が従業員5人以下の零細企業という会社規模の偏りはあるが、100社中1社程度しかSDGsに対応していないのは、お寒い状況だ。

 SDGsへの対応は、それ自体は難しいものではないが、当然“何でもアリ”ではない。「SDGsウォッシュ」という言葉がある。企業などがSDGs推進のために既存の活動と目標との紐付けを行い、あたかもSDGsの達成に貢献しているかのように装っているが、実態として“内容がともなっていない”“大げさに表現している”ケースなどを指す。SDGsへの貢献は、義務ではなく、自発性に委ねられている。チェックする仕組みなどもないので、こういう本末転倒なことが起こり得る。ウォッシュ回避のガイドラインが策定されているが、根絶は難しい。

 「SDGsに対応する(取り組む)」とは「SDGsに貢献する」ことであり、「具体的な成果を出す」ことだ。国や企業などのステークホルダーにその意思と誠実さがない限り、壮大な「うわべだけのキレイごと」で終わってしまうだろう。    

【大石 恭正】

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年05月31日 07:00

ストラテジーブレティン(252号)~「コロナパンデミック中間総括」(後)NEW!

 コロナ以前から3つの歴史的趨勢が起きていた。1. ビジネス、生活、金融、政治のすべてを覆いつくすIT・ネット・デジタル化、2. 財政と金融の肥大化による大きな政府の...

2020年05月30日 07:00

危機に直面し、自らをイエス・キリストにたとえる孫正義の自信と勝負魂(4)

 このインドネシア事業については、日本ではまったく報道されないが、他にもソフトバンクの進めるアジアビジネスは広範囲におよんでいる。とくに、「アジア電力網構想」は...

2020年05月30日 07:00

どうなるこれからの新幹線 計画から50年で開業は半分(中)

 自由民主党所属の参議院議員で、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームのメンバーでもある西田昌司氏は、新幹線整備の経緯について次のように分析する。

2020年05月30日 07:00

最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(中)

 スーパーシティによく似た言葉として、「スマートシティ」というものがある。「スマートシティ」とは、IoT(モノのインターネット)などの先端技術を用いて、基礎インフラと...

2020年05月29日 17:27

【北九州市】週明けも学校の授業を午前中のみに~新型コロナウイルス感染者増大を受け(5月29日現在)

 北九州市では、5月23日から28日にかけ連続で感染者が発生し、28日は21名と大きく増えている...

2020年05月29日 16:18

国交省・民都再生事業に認定 「舞鶴オフィスプロジェクト」8月着工へ

 国土交通省は今年4月21日付で、「舞鶴オフィスプロジェクト」を民間都市再生整備事業として認定した...

2020年05月29日 16:00

国交省が中間とりまとめ ESGを踏まえた不動産特定共同事業の検討会

 ESG投資の拡大やブロックチェーン技術の台頭、クラウドファンディング市場の拡大など、不動産を取り巻く環境は近年大きく変わってきた。このような潮流を踏まえ、国土交通省...

2020年05月29日 15:53

どうなるこれからの新幹線 計画から50年で開業は半分(前)

 新幹線とは、「時速200km以上で走行できる幹線鉄道」を指す。1964年に開業した東海道新幹線(東京~新大阪)以来、75年には山陽新幹線(新大阪~博多)、91年に上...

2020年05月29日 15:41

ホテルオークラ福岡、レストラン店舗の営業再開を発表

 ホテルオークラ福岡は6月1日より、同ホテルのレストラン店舗の営業を再開すると発表した

2020年05月29日 15:00

厚生労働省公表の「ブラック企業」 4月30日発表 九州地区(福岡を除く)

 20年4月30日に公表(20年3月31日更新分)された福岡を除く九州地区分は下記の通り...

pagetop