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2019年06月06日 15:47

九州企業の衰退・勃興 平成を振り返る(12)

新しいビジネスモデルが提供する足を使わない営業スタイル ベルフェイス(株)(前)

 若干20歳で起業し、福岡発の中小企業PRを支援するウェブ動画メディア「社長.tv」を構築した中島一明氏。将来有望な若手経営者として注目を集めていたが、2015年4月に自ら立ち上げた会社を解任される。同氏は、解任後すぐに新会社ベルフェイス(株)を立ち上げ、拠点をIT企業がひしめき合う東京に定め進出。その後、わずか3年で業界No.1、上場企業を含む約1,000社にサービス提供をするという実績を上げた。19年5月23日、中島氏を招きMAX倶楽部特別講演会((株)データ・マックス主催)を開催、飛躍するビジネスモデルを語ってもらった。

異色の経歴をもつ奇才の経営者

MAX倶楽部特別講演会の様子

 私は、兵庫県の尼崎市で生まれ、福岡県の太宰府市で育ちました。太宰府西中学校を卒業後、春日高等学校に入学しましたが、1年で中退しました。15歳の時に、そのまま筑紫野市二日市の測量会社に正社員で入社しました。今、33歳ですが、社会人歴でいえば、19年目となります。

 初めて起業した20歳まで、たくさんの経験を積んできました。もともと取り組んでいた格闘技のキックボクシング、バイクでの日本一周旅行、資格を取り宮古島でのダイビング、19歳の時には、1人でバックパッカーとして世界1周の旅に出て、1年間で約30カ国を回りました。世界を回りながら、1日用紙1枚以上を目安にビジネスプランを書き出すことを日課とし、200枚以上の事業計画書を作成しました。この事業計画書は、アイデアベースというよりは、銀行に提出する創業支援制度の書類に則ったフォーマットを使用し、1日3~4時間かけて1枚作成するようにしていました。

 事業計画書を基に、(株)ディーノシステムを設立しました。21歳の時です。設立当時は、事業計画書が230枚ぐらいあり、すぐにうまくいくだろうと思っていましたが、現実は違いました。起業して1年目などには、消費者金融からお金を借り、創業時のメンバーに「給料」というよりは「お小遣い」を渡すような体制となっていました。

 そこで打開策はないだろうかと悩んだ末、きっかけとなればと考えたのが起業した先輩方へのインタビューでした。本屋に並んでいる各著名企業の経営者の本も良いですが、その存在が遠すぎてピンと来ることがありませんでした。そこで、いくつかの異業種交流会で知り合った目の前にいる地元・福岡の経営者の方々にインタビューすることにしました。経営者の方とは交流会で名刺交換し、翌日には会いに行きました。

 インタビューを始めた時は22歳で、創業時の流れ、会社の理念などを聞いて勉強させていただきました。直接聞く社長たちの話は、巷で聞かれるように華やかなものだけでなく、とてもリアルで本当につらい思いをして経営されていること知り、とても勉強になりました。

社長.tvで経験した成功と失敗

 社長インタビューの様子をビデオで撮影し、編集した動画のインターネット無料配信を始めました。それは、福岡で起業したい人に向けての発信でした。「経営者の先輩方の話、生の声を聞ける機会があってもいいじゃないか」と思ったのが始まりです。

 「社長.tv(ティービー)」というかたちで、サイトに約100名の社長を無料で掲載しました。そのうち、社長.tvは新卒採用に役立つこともあり、「掲載したい」という声をいただくようになりました。無料掲載のほかに、経営者同士を集めて交流会、懇親会などを行っていましたので、徐々に参加希望者が増えてきました。それにともない、無料から有料サービスに変えて、1社あたり月額約2~3万円の掲載料金でビジネスにしました。このサービスは好評で、約2年で掲載企業が約300社に増えました。毎月300~600万円くらいが安定的に入ってくるようになり、私を含め10人未満の会社運営が少しずつ安定してきました。

 福岡で社長.tvの認知度が広がってきたので、次に全国展開を考えました。社長.tvは沖縄から北海道まで毎月立ち上げていきました。各地の保険会社を中心に代理店契約を結び、現地営業は任せることにしました。社長.tvの代理店になりたいという企業は多く、次の2年間で一気に46都道府県で立ち上げました。

 しかし、実際には代理店があまり営業活動しなかったのですが、それは契約を結ぶ動機がこちらの思惑と違ったからです。社長.tvの代理店契約は、保険会社のように法人営業をしている企業にとって、経営者と直接会う機会が増えることが一番の魅力でした。代理店の多くが、インタビューという切り口によって、経営者とアポイントが取りやすくなり、関係性をつくることができると考えていました。結局、代理店は社長.tvを、保険を売り始めるきっかけとしていることが多く、このことが全国規模で起き始めました。全国行脚を行い、社長.tvの理念を伝え、営業研修をしてみましたがうまくいかず、代理店契約を中心とした全国展開を行うことを一度あきらめました。

 次に実行したのが、インサイドセールスでした。インサイドセールスとは、リモート営業、つまり遠くにいる営業先に対して、直接うかがうのではなく電話やメールなど通信媒体を利用して営業することです。福岡にコールセンターを立ち上げ、電話営業だけで、全国の顧客を獲得するビジネスモデルをつくりました。約40人の社員、アルバイトを採用し、電話だけで社長.tvの概念、メリット、掲載費などを伝える営業を行いました。この手法は効率が良かったのですが、すぐに受け入れられず結果も出ませんでした。急に電話がかかってきて、その場で営業をするというのは「怪しい」と感じる企業が多かったのです。また、直接訪問して行う営業トークも通用しませんでした。どうやったら訪問せずに関係を繋ぐことができるか、試行錯誤し続けました。

 その結果、300社だった掲載数が、インサイドセールスを始めてから約2年で6,000社にまで伸びました。これは掲載料だけで毎月約1億4,000万円は入りますので、年商も14~15億円まで伸びました。BtoB(法人営業)で新規営業、アウトバンドでインサイドセールスを行うビジネスモデルは、おそらく日本で最初に完成させたと思います。

 しばらくは業績も好調で、社員も約100名まで増えました。しかし、その後、業績は急激に落ちていきました。新規事業も行っていましたが、うまく波に乗れず資金もどんどんなくなっていきました。ついに社員の給料にも困窮するようになったのが27歳のころです。初めてリストラを、自主退職を促したというかたちで行いました。約100名の社員を約40名にすることで人件費を抑え、全国を回り代理店に協力を仰ぎながら何とか倒産は免れました。問題はやはり資金でした。当時は倒産寸前のため、銀行の融資も受けることができませんでした。

 最終手段として、私は保有していた会社の株(全株7割)を、愛知の会社に約2億5,000万円で売却しました。始めは、私がオーナーシップをもてるという条件下で交渉を続けており、すべての株を売却する予定はありませんでした。しかし、契約をする直前に先方からすべての売却を条件にされました。その段階では、すでにほかの売却候補は断っていたので、資金繰りを考えると提示された条件を呑むしかありませんでした。倒産危機を乗り越えたものの、私のモチベーションは上がりませんでした。それは、株主も感じるところがあったようで、株主が社外取締役の採用など積極的に口を出してくるようになりました。こうなってくると、私のモチベーションはさらに下がってしまうという悪循環です。

 そして、私が29歳の時に、当時の副社長と株主がタッグを組み、私を解任するという事態になり、ほとんどのものを失い、連帯保証人になっていたので数千万円の借金だけが残りました。解任された後は、毎月90万円の支払いをせざるを得ない状況となりました。

業界に衝撃を与えた新星ベルフェイス

 私は解任されてから「1,000億円の会社じゃなくて、十数億円の会社をとられたわけだから、まぁいいや」と約3日で開き直りました。2015年4月30日に解任されましたが、3日前にベルフェイス(株)を立ち上げていましたので、解任直後から新企業の経営を始めていました。

 ベルフェイスという会社は、前職時に培った「訪問せずに営業する」スタイルで会社の規模を約20倍まで押し上げた経験を生かしたサービスを提供しています。インサイドセールスを実際に取り組んだことで、営業では必ずしも訪問しなければならないことはない、訪問の有無と会社の信用はあまり関係がないということを確信していました。もちろん、取り引きの金額、内容で違いはあります。インサイドセールスのメリットと同時に出てきた課題が、訪問するメリットをどのように取り込むかということでした。

 たとえば、訪問することでお互いの顔を見て、目線であったり、仕草であったりを感じ取ることができます。パンフレットなどの資料もリアルタイムで見てもらい、説明することができる。場合によっては申込書をその場で記入してもらい回収することができることなどです。前職の時は、電話による音声しか届けることができず、「資料は後ほど見ていてください」としか伝えることができませんでした。仮に成約いただいたとしても、郵送される契約書が手元に届くのを待つしかありません。

 私はこの経験を踏まえ、これらのメリットを備えつつインサイドセールスができる、営業を効率化することができるソリューションはないだろうかと世界中を探しました。リモートで相手と顔を合わせて会話をする方法はすでにいくつかありました。たとえば、Skypeサービス、FaceTime、Facebookメッセンジャーなどのテレビ電話サービスなどです。しかし、どれも営業ソリューションとしては十分に使えるものではありませんでした。どのサービスも、すべての顧客が所有している備品では対応できなかったり、顧客の個人情報が必要な媒体だったりしたからです。

 たとえば、Skypeサービスでは顧客が使っているブラウザの違いやPCカメラの所持、プログラムのインストールの有無などの問題があり、仮に繋ぐことができたとしても、PC設定の問題から声が聞こえないなどの不具合も多くありました。LINEなどのSNSでは、顧客にログインIDなどの個人情報を開示してもらわなければならない問題がありました。これらの問題は過疎地であればあるほど、大きな問題でした。実際に利用したり、探したりすることで、営業マンがネットを通じて、営業を前提としてコミュニケーションを取るツールは世界に1つもないことに気づきました。

 そこで、私は「営業に特化したSkypeのようなものをつくろう」と考えました。「営業をもっと効率良くしていきたい、もっと営業範囲を広げたい」という企業に有料で提供しようと考え、つくったのが「bellFace」というサービスです。このサービスを活用することで、営業マンはリモートで営業先と顔を会わせることができ、リアルタイムにパンフレットなどの資料を説明することができます。音声は両社がもっている電話で繋ぎますので、音声が届かないということもありません。

 また、このサービスは専用のアプリケーションや、プログラムをインストールする必要もなく、あらゆるメーカーのPC、ブラウザでも対応し、スマートフォンやタブレットなど、ほかの端末にも対応しています。これを使えば、「今、5分だけなら時間があるよ」などと営業先からいただいたチャンスを、より効果的に生かすことができ、事前にアポイントを取っておけば、時間ちょうどに打ち合わせを行えるようになります。

(つづく)

<プロフィール>
中島 一明(なかじま・かずあき)

ベルフェイス(株)代表取締役社長。福岡市出身、1985年生まれ。15歳で起業を志し、高校を中退。その後、19歳で世界約30カ国をバックパッカーとして旅する。21歳で(株)ディーノシステムを設立、「社長.tv」と呼ばれる広告メディアを展開し一世を風靡する。しかし、紆余曲折を経て2015年に同社を退社。同年ベルフェイスを立ち上げ、画期的なサービスを展開し、その圧倒的な成長率からIT業界でも注目を浴びている。

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