2020年3月「アジア共同体ネットワーク評議会」設立!(後)
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鹿児島大学法文学部 教授 木村 朗氏
幅広い分野の市民が参加する国際民間交流団体を目指します
――前回は現代社会の時代認識を共有させていただきました。いよいよ「アジア共同体ネットワーク評議会(当初は東アジアの日中韓を中心に)」の概要について教えてください。
木村 「アジア共同体ネットワーク評議会」の目的の第一は、最終的な目的地とその到達ルートを明確にする海図をつくることにあります。多用かつ多面的な調査研究を通じて、平和と繁栄に基づくアジア共同体の姿を描き出し、それを実現するための具体的な方策・道筋を提言します。第二に、民間レベルの国際交流を通じて、アジア地域の、とりわけ東アジアの日中韓を中心にした相互理解と友好関係を促進・強化し、開かれた地域ネットワークを構築することです。
この「アジア共同体ネットワーク評議会」構想は、3年前の9月に沖縄の琉球大学に事務局を置いて沖縄と日本本土を結びつけることを目的として立ち上げられた東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会をさらに発展させるかたちで生まれたものです。当初は東アジアの日中韓を中心にネットワークを構築し、将来的にはアジア地域全体の共同体実現を目指しています。また、沖縄・済州島・海南島という3つの島をその活動拠点として重視し、東アジア共同体・島嶼会議の開催も視野に入れています。
「アジア共同体ネットワーク評議会」は、日中韓3カ国から選ばれた3名の共同代表、木村朗(日本)、金汝善氏(韓国・済州大学教授、アジア共同体研究センター長)、金哲氏(中国 安徽三連学院大学副学長)が中心となって運営が行われます。その顧問には、日本は鳩山友紀夫氏(第92代総理)、中国は胡徳平氏(第3代中国共産党中央委員会主席)、韓国は丁世均氏(元国会議長)のご賛同を得て、就任していただくことになりました。
アジア共通の共同体意識の醸成には、アジア各国市民の相互理解・信頼の深まりが欠かせません。そこで、本団体は政府主導のトップダウン方式ではなく、民間主導のボトムアップによる共同体構築を重視します。また、本団体は研究者だけが参加する単なる研究組織ではなく、アジア地域の研究者をはじめ、経済人、文化人、ジャーナリスト、弁護士など、幅広い分野の市民が参加する国際民間交流団体を目指します。会員を国内外の一般市民、に開くとともに、民間レベルでの国際交流の促進に力を入れていきます。とくに多くの若者や女性の参加を強く呼びかけたいと思っています。
沖縄を東アジアの軍事の要から平和の要に転換させること
――日本の本部所在地を沖縄の那覇市に置くと聞きました。それはなぜでしょうか。
木村 本団体は、アジア(日本、中国、韓国、ASEAN諸国など)における平和・共生の確立および国際協力の進展に寄与するために、民間レベルでの国際交流による相互理解と友好関係の深化を目指しています。民間国際交流のネットワークづくりのハブとして沖縄を選んだのには、以下の2つの理由があります。
1つは、沖縄が今も昔も、人を惹きつけてやまない個性的で豊かな自然・伝統・文化をもっているからです。かつて、琉球は、東南アジアから東アジアに至る広大な交易圏の拠点の1つでした。同じように現在の沖縄も、数多くの本土観光客および外国人観光客(2018年に総人数でハワイを超えました)や企業人・ビジネスマンをアジア各地などから惹きつけており、新時代のアジア交易の中心となる可能性を秘めていると思うからです。
もう1つの理由は、第二次世界大戦での過酷な地上戦、米国による占領統治、今なお続く米軍基地の過大な集中など、沖縄が背負わされた歴史・経験から平和の尊さを学ぶことによって、国境を越えた市民の交流がいかに重要なのかを東アジア地域全体に発信できると考えたからです。併せて、沖縄を東アジアにおける軍事の要から平和の要に転換させる具体策も探求していくつもりです。
20年3月沖縄で「第1回東アジア共同体・島嶼会議」開催
――活動内容・事業内容などは決まっていますか。
木村 基本計画は大きく下記5つの柱で構成されています。
(1)本団体主催による主要な国際会議・シンポジウムの開催
国際会議・シンポジウムは毎年春(3~4月)と秋(9~10月)の2回に分けて開催地や規模・テーマなどを変えて開催いたします。
2020年3月28日・29日に、本団体の設立と合わせて、「第1回東アジア共同体・
島嶼会議」(於:沖縄キリスト教学院大学)を開催する予定です。(2)調査研究の実施と公表
(3)社会教育、人材育成に関するイベントの開催
(4)学習会・研究会の開催
(5)各種の情報発信~(1)会誌の発行(年1回)(2)報告書の公表(3)ホームページ作成私たちが提唱しているのは「不戦共同体」の構築なのです
――時間になりました。読者にメッセージをいただけますか。
木村 EUなど国際地域統合は21世紀世界の必然的な流れです。世界は間違いなく、「世界共同体」の方向に向かって歩み始めています。しかし、そのプロセスは2つあります。
1つは、特定のグローバル資本や帝国が主導する垂直統合です。しかし、私たちが提唱しているのはもう1つの「グローバリゼーション」、すなわち、より公平で開かれたかたちの「不戦共同体」の構築です。その実現のために「アジア共同体ネットワーク評議会」があります。私は、NATOも日米安保も21世紀を通して続いていくとは思っておりません。それはトランプ米大統領も指摘しているように、軍事同盟ほど時代遅れの発想はないからです。
読者の皆さまで、私たちの構想にご賛同いただける場合は、ぜひ、木村朗(携帯番号:090‐2856‐0955、E-mail:kimura@leh.kagoshima-u.ac.jp)までご一報ください。多くの市民の皆さまと手を携えながら、歩んで行きたいと考えております。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
木村 朗氏(きむら・あきら)
1954年生まれ。鹿児島大学法文学部教授。日本平和学会理事、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会共同代表、東亜歴史文化学会副会長、国際アジア共同体学会常務理事。著書として、『危機の時代の平和学』(法律文化社)、共編著として、『沖縄自立と東アジア共同体』(花伝社)、『沖縄謀叛』(かもがわ出版)、『「昭和・平成」戦後日本の謀略史』(詩想社)
『誰がこの国を動かしているのか』、『株式会社化する日本』(詩想社新書)など著書多数。関連記事
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