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2019年08月02日 09:30

AIoTを軸に新しいかたちの日台産業連携を模索する!(後)

日台連携は、2018年から「全面深化」の時代に入った

 来賓挨拶の後は、DVDの上映『これからの台湾が生み出す、アイデアと産業への活力』が行われ、短い講演が4本続いた。最初の講演は陳龍・TJPOプロジェクトリーダーで、演題は「TJPOの産業推進実績、およびAI、IoTを用いた日台連携ビジネスチャンス」であった。

 陳氏はまず、TJPOのこれまでの歩み・成果を振り返り、そのうえで日台連携の将来について語った。TJPOは「枠組み構築」(2012年設立~13年)「目標設定」(2014~15年)、「国際連携」(2016~17年)と経て2018年から「全面深化」の時代に入った。

 全面深化とは(1)政府間交流プラットフォームの強化(経産省は7年間で32回、日本の地方産業団体の来台をサポート、2,084回の商談を実施)(2)地方連携を拡大(愛媛、香川、高知、鹿児島、秋田、三重、和歌山とMOUを締結、40の交流窓口を構築)(3)重点産業組織のネットワーク交流を深化拡大(日台連携はこれまで315件)(4)産業推進組織ネットワーク交流の進化と拡大(富山県薬連合協会、九州経産局および九州環境エネルギー産業推進機構(K-RIP)など合計23件のマッチング実績)の4大側面で協力関係を強化することを意味する。

 最後に陳氏は、日台双方には共通の解決すべき領域(高齢化社会と老後の安心、持続的環境と移動可能性、職業転換と生涯学習、デジタル時代の産業イノベーション)があり、それぞれ「スマート医療」「スマートモビリティ」「スマート教育」「スマートリテール」の分野で多元的に連携することによって双方にビジネスチャンスが生まれると結んだ。

日本市場は特殊で、顧客の求めるQCDのレベルが高い

マイク小池 氏

 陳氏の話を受けて、台湾企業3社が具体的な話を展開した。1社目は、マイク小池 アドバンテック(研華科技)(株)社長兼日本地区最高責任者で、演題は「AI×IoTが繰り広げる新しい世界~台日Co-Creation/Cross Culture~」であった。アドバンテックは台湾を代表する企業の1つで、産業用コンピューター分野で世界シェアの34%を占め、世界IoT総合評価トップランキング100社の23位に位置する。(日本企業は22位までに1社も入っていない)

 マイク小池氏の話はこれから日台産業連携を考えるうえで参考になるものが多くあった。

 今年2月、アドバンテックはオムロン傘下の旧オムロン直方(株)(福岡県直方市)を買収し(80%の株式を取得)、アドバンテックテクノロジーズ(株)を設立したことを発表した。

 なぜ、この買収を行ったかの話のなかで、小池氏は「台湾は親日、日本も台湾に好感をもっている。だからお互いに何でも仲良く気軽にやろうという考えは、ことビジネスに限ってまったく通用しません」と喝破した。そして、小池氏は「日本市場はとても特殊です。顧客の求めるQCD(品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery))のレベルが非常に高い。今回のM&Aでアドバンテックがジャパンスタイルを満足させることができるという証を見せたかった」と続けた。

 結果、アドバンテックは日本での組み込みシステム分野における市場シェアの効果的な拡大と、地域に根差した製造サービスの能力増強を図り、IoTプラットフォームにおけるオムロン(株)との連携を強化し、大幅に売上高を伸ばす目標を掲げている。また話のなかで小池氏は、2021年の産業別AIoTの市場を、製造業で1兆円、リテールで1兆円、ヘルスケアで5,000億円、公共で9,000億円とし、そのなかの56%をサービス、30%をハードウエア、14%をソフトウェアが占めるとの見通しを語った。

電子設備産業はスマート機械の牽引を促進する機関車

王作京 氏

 2番目に登壇したのは、王作京・大量科技股份有限公司(TA LIANG)董事長で、演題は「台湾電子設備のトレンドと台日企業連携のビジネスチャンス」であった。同社は、プリント基板(PCB)生産ライン用コンピューター、数値制御機器(CNC)の世界トップ3のメーカーで、王氏は同時に台湾電子設備協会(TEEIA)の理事長を務めている。TEEIAは世界的に注目される台湾タッチパネル&光学フィルム展『Touch Taiwan』を主催する団体である。TEEIAは市場開拓およびビジネス交流において、日本九州との交流は8年目に突入している。2018年の九州全域の商談会実績は、企業数日本62社、台湾54社で商談件数は288件に上った。

 最後に王氏は、台湾のハイテク設備市場は約5,000億台湾ドル(約1兆7千億円)を超える一大市場であるが、自給率はわずか12%なので、まだ大きく発展の余地が残されている。電子設備産業はスマート機械の牽引を促進する機関車のような存在で、2018年の総生産高(設備+構成材)は3,300億台湾ドル(約1兆2千億円)だったが、23年には6,000億台湾ドル(2兆1千億円)、28年には1兆台湾ドル(3兆5千億円)になるだろうと抱負を語った。

AIに関する教材があまりにも少なかったことに驚いた

 最後の講演者は、張富傑・凌通科技股份有限公司(Generalplus)北東アジア地区責任者で、演題は「対話型AIチップの応用~教育分野をメインに~」であった。凌通科技は、主に集積回路(IC)ICチップやマイクロコントローラー(MCU)を製造する半導体メーカーである。

 張氏は、少し角度を変えて、AIoTと教育の分野で話を展開した。日本では来年から小学校で「プログラミング教育」が開始される。凌通科技では、それを睨んで、6月にビッグサイトで行われた教育展示会「学校教育総合展」に参加したが、AIに関する教材(AI電子教具)があまりにも少なかったことに驚いたという。張氏は日本に住む台湾人として、その背景に「日本文化」があるのではないかと考えている。確かに、日本と比べて台湾では老若男女ともITに嫌悪感はないといわれる。張氏は子ども向け教材の開発に、日台が産業連携を図ることができれば、文化的差異が解消され、日本市場に受け入れられる教材ができるのではないかと語った。

 セミナー終了後に参加者は会場を移し、和気あいあいとした雰囲気の中、来日した台湾政府要人や経済人との交流を図っていた。

 

(了)
【金木 亮憲】

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