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2019年09月11日 09:00

「平成の大失敗」の歴史潮流は少なくとも、あと数十年は続く!(3)

東京大学大学院情報学環教授 吉見 俊哉 氏

平成は社会が危機に陥り、対応に失敗し、沈滞した時代

 ――ここから、「平成ミュージアム」の建物のなかに入ります。まずは各階に行く前に、大きく平成時代とはどんな時代だったのかを教えていただけますか。

 吉見 それには2018年3月から4月にかけて朝日新聞社が行った世論調査(「平成」がどんな時代だったかを8つの選択肢から2つ選ぶ)が参考になります。

 その答えとして、「動揺した時代」という回答で42%、これにつぐのが「沈滞した時代」で29%でした。これらに対し、「明るい時代」は最下位でした。この傾向は、同社が2009年に20歳以上に限定して行った世論調査から変化していません。2009年でも、最多の解答が「動揺した時代」で42%、第2位の「沈滞した時代」も40%、「明るい時代」は最下位でした。すなわち、多くの日本人にとって「平成」は自分たちの社会が危機に陥り、対応に失敗し、沈滞していった時代と認識されています。

 「平成」の30年を日本の段階的な衰退過程と捉えるなら、この過程は4つの「ショック」によって拍車がかけられてきたといえます。第1のショックは、1989年に頂点を極めたバブル経済の崩壊であり、第2のショックは95年の阪神・淡路大震災と一連のオウム真理教事件であり、第3のショックは2001年のアメリカ同時多発テロとその後の国際情勢の不安定化であり、第4のショックはもちろん11年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故になります。「平成」は、日本社会がこの4つの国内外のショックとその後の変化に対応を迫られ、自らのかたちを変容させていった過程といえます。

世界経済における日本の存在感がものすごく低下しました

 ――1階のフロア「平成の経済」についてご案内いただけますか。

 吉見 平成経済の大失敗を如実に表しているのは、平成30年間を通して、日本の世界経済における存在感がものすごく低下したことです。世界の企業の時価総額ランキングはその象徴です。平成元年(1989年)世界の企業の時価総額ランキングでは、1位がNTT、2位が興銀、3位が住友銀行、4位が富士銀行、5位が第一勧業銀行と上位を軒並み日本企業が占め、上位50社のうち32社が日本企業でした。

 それから30年後の平成30年(2018年)の同じランキングで、上位50社に辛うじて残ったのはトヨタ自動車だけで他の31社はすべて消えました。

 この経済の縮小と反比例するかのように国および地方の長期債務残高は膨らみ続け、平成末には1077兆円という天文学的数字に達しました。この数字は、企業のみならず国全体がいつ破綻してもおかしくないということを意味し、債務危機に陥ったギリシャやイタリアよりも悪くなっています。並行して、この衰退は働く人々の生活も変容させ、たとえば1人あたりの名目GDPの推移を見ても、90年代半ばから低迷し始め、やがて香港に抜かれ、2010年代末には、世界20位代半ばで韓国とそれほど変わらなくなりました。

日米関係(日本のアメリカへの従属)が深く関わっていた

 その原因を歴史的に見ていくと、平成時代の日本経済には3つのクラッシュ(崩壊)があったことがわかります。1つ目は、1990年前半の「バブルの崩壊」です。ここには日米関係(日本のアメリカへの従属姿勢)が深く関わっています。バブル発生の原因を遡って考えれば、1985年のプラザ合意が原点と言っても過言ではありません。すなわち、日米関係がバブルを生み、やがてその日米関係がバブルを崩壊させたのです。

 2つ目は「金融の崩壊」(1997年)です。一連の金融破綻のなかで、深刻さを最も顕著に現したのは山一證券の破綻でした。山一證券は1997年11月24日開催の臨時取締役会で自主廃業に向けて営業休止を決議しました。顧客口座数286万口座、預かり総資産24兆円という巨大企業の倒産でした。翌98年には、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が相次いで破綻しました。

 3つ目は「家電の崩壊」です。かつて、日米貿易摩擦の主要因の1つとなり、日本の技術力の象徴でもあった日本の電機産業は、平成末までに見る影もないほど衰退していきました。この衰退は、1990年代の半導体グローバル競争で、日本企業がアメリカと韓国、台湾の企業に次々と敗れていったあたりを起点と考えることができます。今では、想像すらできませんが、90年に世界の半導体メーカーの売り上げで上位10社のうち6社は日本企業でした。一連の「日米半導体協議」などを通じてアメリカが本気で日本を潰そうとした結果、2010年になると、インテルなどのアメリカ、サムソンなどの韓国、そして台湾にまで追い抜かれていきました。

【プラザ合意】
 1985年9月22日の日本・米国・英国・フランス・西ドイツ5カ国蔵相中央銀行総裁会議における合意。ドル高・円安から円高への契機となり、合意前1ドル230円台のレートが、1987年末には1ドル120円台のレートで取引されるようになった。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
吉見俊哉(よしみ・しゅんや)

 1957年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授兼東京大学出版会 理事長。同大学副学長、大学総合研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割をはたす。2017年9月から2018年6月まで米国ハーバード大学客員教授。著書に『都市のドラマトゥルギー』、『博覧会の政治学』、『親米と反米』、『ポスト戦後社会』、『夢の原子力』、『「文系学部廃止」の衝撃』、『大予言「歴史の尺度」が示す未来』、『平成時代』など多数。

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