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2019年09月19日 16:00

福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(中)

 福岡市の指定管理者である「(福)福岡市身体障害者福祉協会」(以下、協会)に勤務していた50代の女性職員(Aさん)が今年5月、自殺していたことがわかった。関係者への取材から、自殺の原因として上司からのパワハラが疑われる証言や証拠が見つかっている。

 さらに職員間の関係悪化に気づきながらも、それを見過ごしてきた組織の体質も自殺の背景にあるとみられる。問題視されるのはAさんの自殺を隠蔽するかのような法人のあり得ない対応。これまで遺族は法人から一連の経緯に関する説明を受けていないことがわかっている。職員1人の死に向き合えない組織に、命と深く関わる福祉サービスを提供する資格はあるのか。

協会本部建物 ふくふくプラザ
協会本部建物 ふくふくプラザ

 Aさんは、その後も仕事を続けていたが、今年4月に協会に休職を申し出た。休職理由として、手帳には「めまいや吐き気、不安な気持ちに襲われ、十分なサービスが提供できない」という旨のメモが残されている。通院した心療内科が発行した診断書によると「自律神経失調症」で、「2カ月間の自宅療養と少なくとも4カ月の通院治療を要する」との記載がある。仕事の悩みを抱え、精神的に追い詰められていたのだろう。休職することで、唯一気持ちが晴れていたという利用者の訪問もできなくなってしまった。

 本当にこの仕事に生きがいを感じていたのだろう。ところが、事務局からは「復職する場合には、同じポジションには戻れない」という旨の説明を受けていたこともわかった。今となっては、自殺の真相はわからない。しかし、取材で見つかった事実を並べていくと、Aさんの心には落胆や失望があったのではないかと推測できる。なお、Bさんは6月より降格、6月末をもって、休職していることがわかっている。

問われる組織の在り方、死と向き合っているのか

 「組織さえしっかりしていれば、失われずに済んだ命だったのではないか。このまま闇に葬られてしまえば、再び繰り返される」―――そう涙ながらに語った関係者が指摘したのは、法人の「隠蔽体質」と「危機管理のなさ」である。

 Aさんの死が噂されるようになり、事務局はAさんが亡くなったことをヘルパーらに告げたことがあった。しかし、説明されたのは、「体調不良で4月に休職していたAさんが亡くなった」ということだけ。死の理由については、触れなかった。尋ねたヘルパーもいたようだが、事務局は「事情は聞かないでください」と返答をかわすのみだったという。

 「Aさんの死因(自殺)を知れば、利用者に心理的な負担を負わせることになるから」といって、事務局は「利用者を守るため」という説明を繰り返していたというが、はたしてそうだろうか。背景にパワハラがあったため、協会はその死因を公にしなかったのではないか。それでは、完全な保身のための隠蔽である。直接利用者やその家族と接するヘルパーには、Aさんのことを聞かれた場合は「わかりません」「退職した」と答えるように指示があったという。

目的不明のカウンセリング

 協会のつじつまの合わない対応は続く。

 5月下旬ごろより、ヘルパー対象に心理カウンセリングが実施されるようになった。いじめ自殺が起きた教育機関で実施されるカウンセリングのようなものだが、当時は職員の多くがAさんの死因を知らされないままであり、目的もわからずカウンセリングを受けることになる。「意味がわからなかった」―――そう関係者は口をそろえる。

 さらに6月半ば、法人は管理職を対象に突如、これまで実施したこともないパワハラ研修を実施。今回のような事件が起きないよう、再発防止のために実施されたとみてよい研修だが、事情を知らない管理職は違和感を覚えていたという。Aさんの自殺を受けて実施されたものであり、協会はパワハラが関与していることを認識している裏返しでもある。Aさんの死に、パワハラが関与していないなら、こんなタイミングで研修を行うはずはない。

 遺族に聞いた協会の弔問の様子も変だ。協会事務局がこれまで3度弔問に行っているが、遺族によると、訪れた職員のほとんどが個人名を明かさなかったという。弔問に行って、身分さえ明かさない。もはやその理由すら想像もできない。

時系列でまとめた事柄
※クリックで拡大

(つづく)
【東城 洋平】

【福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族】の記事一覧

福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(前)(2019年09月19日)
福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(中)(2019年09月19日)
福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(後)(2019年09月20日)

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