2024年03月29日( 金 )

国内中核港湾としての将来像~博多港の歴史と現況、そしてこれから~(前)

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 1899年(明治32年)8月4日に開港した博多港は港湾法上の国際拠点港湾、港則法上の特定港に指定されている。そして九州経済を支える中核の港湾としての役目を担い、さらに東アジア諸港における国際競争力の強化のため、国際海上コンテナターミナルの整備が年々進化し続けている。外国人旅客数およびクルーズ船寄港数も、国内トップクラスであるなど、九州、そして国内港湾を支える存在だ。博多港のこれまでをおさらいしながら現状をレポートする。

三津七湊の1つ

 博多港のルーツは諸説あるが、日本書紀に536年(宣化天皇元年)に那津が記されている。その後、遣隋使、遣唐使、遣新羅使が那の津から出たことが、記録されている。1019年(寛仁3年)に女真族の一派である海賊が壱岐・対馬を襲い、さらに博多を襲った刀伊の入寇が起こった。11世紀後半に宋の貿易商である謝国明が、『博多綱首』と呼ばれ日宋貿易をつくり、貿易商や多くの宋人が暮らす大唐街を形成し、博多港の礎を築いた。12世紀半ば、博多に平清盛が築いた日本初の人工の港『袖の湊』で日宋貿易がさらに活発となった。 1276年(文永11年)文永の役、1281年(弘安4年)の弘安の役と呼ばれる元軍が博多を襲った“元寇”。文永の役の後に築かれた防塁は、今も当時の博多の湾の歴史を語る遺跡として存在感を示している。

 室町時代の末期に日本最古の海洋法規集である『廻船式目』に、日本の十大港湾として記されている三津七湊の港湾都市の1つとして、博多津が三津に位置付けられた。(三重県津市の安濃津、大阪府堺市の堺津)。博多港は、室町・安土桃山時代の戦火による荒廃や、豊臣秀吉の太閤町割りによる復興。江戸期に入り徳川幕府が実施した鎖国によって貿易が衰退など歴史的な潮流に翻弄され、栄枯盛衰を繰り返した。

 明治期は、1889年(明治22年)に特別輸出港、前記した開港の指定を受け、再び博多港が復権した。さらに、1951年(昭和26年)重要指定港湾、1990年(平成2年)特定重要港湾、2011年(平成23年)には日本海側拠点港湾の指定を受けるなど、国内有数の港湾として進化・発展を遂げてきた。
 古来より博多港は、国内情勢における転換や激動期の歴史を見つめ続けてきたことが、わかる。そして、国内の商業発展で中心的な存在であり続けている。

広域にわたり機能を発揮

 博多港のエリアは、広域に渡る。
 福岡市が公表している資料によると【表1】のように、農林水産業、製造業、倉庫業を中心にさまざまな分野において港湾として多様な機能を発揮しており、地域経済とともに市民の生活にも不可欠な港であることが一目瞭然である。

国内外需要とも安定度増す

 国土交通省が公表している港湾統計(港湾取扱貨物量等の現況)最新データによると、国内の海上出入貨物量は、安定傾向にある(総計28億3,654万5,000t前年比101.9%。うち外国貿易12億5,224万4,000t、内国貿易15億8,430万1,000t:2017年調べ)。

 福岡市が公表している直近(2017年)データによると、博多港においては、総計3,323万9,832t(前年比106.1%)で、うち外国貿易は1,879万5,222t(同108.1%)、内国貿易は 1,444万4,610t(同103.5%)という結果であった(【表2、3】)。国内外貿易需要とも安定した数値を示していることが明らかである。

【表3】海上出入貨物量の推移

 さらに博多港の入港船舶数は、29,915隻(前年比99.6%)、総トン数は8,513 万4,616総t(同101.8%)。うち、外国航路は隻数4,454隻(同95.2%)、総トン数6,647万908総t(同 101.9%)、内国航路は隻数25,461隻(同100.4%)、総トン数1,866万3,708総t(同101.6%)であった(【表4、5】)。入港の隻数は、微減しているものの、総トン数が増加している現象は、物量の扱いがさらに上昇していることの証である。

【表5】入港船舶の推移

 博多港における、国家間の貿易の輸出入の内訳は、双方とも中華人民共和国が群を抜いており、続いて大韓民国、アメリカ合衆国と続いている。輸出の総数は7,658,195t、輸入は11,137,027tで、40.7%:59.3%の構成となっている。輸出入とも中華人民共和国が40%近いシェアを有していることは、注目すべき点である(【表6】)。

 品目では、輸出は完成自動車が圧倒的な数値を有している。主たる輸出国は、中華人民共和国が60.6%と断トツのシェアで、韓国(8.5%)、アラブ首長国連邦(5.1%)と続く。輸入においても、中華人民共和国が一番のシェアを誇り、家具装飾品(中国:62.7%)を始め、衣服・身廻品・はきもの(中国:81.5%)、麦、動植物性製造飼肥料、電気機械(中国:75.8%)、野菜・果物と続く(【表7】)。中華人民共和国は、現況の日本との貿易においては、いまだ重要な取引国であるといえよう。

 博多港の内国貿易においては、移出は沖縄県と東京都、移入は東京都が高いシェアを示している【表8】。

(つづく)

【河原 清明】

(後)

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