2024年04月25日( 木 )

国内中核港湾としての将来像~博多港の歴史と現況、そしてこれから~(後)

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再開発でさらなる進化を遂げる博多港

 以上のように博多港の歴史と直近(2017年)データによる貨物関連の現況について述べた。2年前のデータであり、外交的なファクターが以前より変化しており、「昨今のアメリカと中国の貿易問題の影響、さらに韓国との関係悪化により貿易扱い高が減少傾向にある」と福岡市内の業界関係者の談。一方で、台湾との貿易高が上昇し始めており、今後の国際情報によって、国家間の貿易構図が大きく変わってくることも視野に入れておくことが肝要である。

 そして国内需要に目を向けると、農産物がキーファクターとなる。「福岡県を始め九州各地は、良質な農産物の生産地が多数存在する。その農産物を博多港に集結させて、国内外へ流通させる仕組みづくりを行うことが、今後必要となる。生産者と流通させる側が一体となって取り組んで、博多港を拠点とした流通チャネルを構成していくことで、より地域経済を活性化させることが実現する」(前出業界関係者)と語る。続けて「とくに、根物野菜の輸出においてはより強化することが肝要だ」としている。つまり、出口戦略の1つとして、農産物の輸出の強化で活性化させることが挙げられている。
 さらに博多港のこれからの構想・計画を立案し、実践していくことが求められている。

 つまり博多港は、真のアジアのゲートウェイ=玄関口となることが求められる。今回は、物流・流通分野をターゲットにして述べたい。

 これからの博多港の役割は、最も東アジアに近く長距離基幹航路のルート上にある博多港として、これからのアジアの成長と発展を取り込むのに、絶好のポジションのロケーションである。このポジションをいかして、九州 国内における集荷を進め、欧州・北米に至る長距離基幹航路の維持と拡充、そしてアジアとの航路ネットワークの充実・強化に着実に取り組み、 長期的な展望に立って、国内の中核拠点港として、“アジア・世界へとつながる元気な港づくりに取り組んでいくことが最優先される。

 そして国際間での分業化を推進する旗手となり、自動車、IT製品等の核となる高付加価値の部品などを、博多港から輸出する。そしてアジア各国の工場にて製造し、製品化された完成品が港を通してアジア・世界へと輸出されるという構造が、今後とも定着していくものと予想される。このため、博多港が、高付加価値型製品を輸出する港として 東アジア圏でその存在感を高めていくためには、博多港だからこそできる迅速でかつ環境保全を尊重した物流を実行する─時代の要請に適応した独自の輸送モードを駆使し、先導的で個性際立つ物流戦略を立案していくことが重要である。

 それらに関連し、世界各国へと輸出されるコム製品や二輪自動車は、堅調な取扱量を維持している。また、高付加価値型製品は、これまで航空輸送が主流だったのが、国際RORO船などの海上輸送により、航空輸送に遜色のないリードタイムの実現か可能となったことから、絶対量は少ないものの、取扱量は確実に増加している状況にある。博多港は、九州の産業を応援し、高付加価値型製品を取り扱う港として、“ものづくり”に貢献する港づくりを目指していくことである。EU圏においては、海陸上の多様な輸送モードが、国境を越えて網の目状につながり、 円滑でスピーディーな物流を実現している。英国と欧州本土をつなぐ海上輸送モードの約80%が、トラックシャーシが直接乗入できるROROタイプの船舶であり、東アジア圏においても、EU圏の物流と同様に、将来は、国内輸送と同じスピードをもった輸送がさらに進化していく。東アジアとの高速物流を実現する国際RORO船や国際フェリーは、 港湾施設の整備が特段必要ではなく、 コンテナ輸送に比べて振動が少なく、電子部品や精密機械などに最適な輸送手段である。博多港は、 JR貨物福岡ターミナルが近く、 鉄道に対応した12フィートコンテナの輸送が可能であり、民間事業者の新たなビジネスチャンスがもたらされる。これからの物流は、少量・多頻度化など、さまざまなニーズにも適切に対応しながら、スピード・低コスト・環境負荷の低減が求められている。 そのオーダーに対して国際RORO船等の独自の輸送モートを駆使して 東アジアとの高速物流ネットワークづくりを推進していくことが肝要である。

 そして国内においては、博多港は歴史上、甚大な被害を被るような津波は発生しておらず、全国的に見ても 大規模な地震の発生確率は低いとされる。つまり、災害に強い地理的条件を有する港として認知されている。2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。太平洋側港湾においては、今後とも大規模な地震発生が予見されるなか 博多港は、その地理的条件を遺憾なく発揮し、災害時において、太平洋側港湾の代替機能を担える港づくりを、より推進していくことである。すなわち、日本海側の航路をより充実させていくことである。

 そのほか、箱崎地区の再開発、アイランドシティエリアの有効活用など、まだ着手できる事項は多数ある。官民そして市民も参加した、博多港の再開発とより進化した港湾事業を実践できるグランドデザイン、そしてよりスピーディーに実践することが今後求められる。

(了)

【河原 清明】

(前)

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