2024年04月26日( 金 )

AI・ロボットの時代だからこそ待望される「新縄文人」の出現!(中)

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(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏

普遍的な道はSDGsのゴールと言っても過言ではない

 ――この危機を乗り切るためには「新縄文人」の出現が待望されるわけですね。その前に、先生のお考えになる縄文道について教えていただけますか。

【普遍的な道】

 加藤 縄文道というのは、大きくいうと、「普遍的な道」と「大和の道」にわかれます。

 普遍的な道には4つあります。

 1つ目は、「自然の道」(自然との対話‐共存)です。縄文時代の約1万年以上の生活を一言でいうと、自然と融和し、共存していました。そのすばらしい自然との関係は、現代にも生かせると考えています。

 2つ目は、「平和の道」です。縄文時代の殺傷率は平均1.8%です。一方、4大文明をはじめとする大陸の大きな文明は10%~12%であったことがわかっています。縄文人は武器をつくらず、もたず、1万年以上もの間、非常に平和に暮らしていたことがわかります。

 3つ目は、「母性の道」です。縄文時代は女性の役割がとても高かったことがわかっています。土器の製作も、織物も、さらに祭祀の役割をはたしていたのも女性でした。日本列島の北から南まで約2万点の土偶が発掘されています。そのなかに、縄文ビーナスとか縄文の女神とか、女性を象徴した土偶がたくさんあります。考古学者の富樫雅彦先生は「日本人はとっくの昔に男女共同参画社会、要するに母性を尊重する社会をつくっていた」と言われています。

 4つ目は、「公平の道」(富と尊厳)です。貨幣経済でなかったことにもよりますが、富の平均的な配分を実現させていました。1万年以上もの間、平等社会が続いていたのです。

 これら4つの道は、国連が2015年に発表いたしましたSDGs(「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」)のゴールと言っても過言ではありません。SDGsとは、すべての人々にとって、より良い持続可能な未来を築くための青写真です。貧困や平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を目指しています。

【大和の道】

 次に、「大和の道」(「日本人の道」)です。大和の道には3つあります。

 1つ目は、「芸術の道」(日本美の極致)です。日本人のもっている基本的な美意識の原点が縄文の時代にあるということです。岡本太郎画伯も縄文人の芸術性、表現力の豊かさを指摘しています。

 2つ目が、「技術の道」(匠の道)です。科学技術とフロンティア精神、創意工夫の精神があったことは間違いないと考えられています。縄文時代につくられた丸木船について、造船工学の先生のなかには「科学技術に対する大変な知見がないとああいう物はできない」と言われている方もおられます。

 3つ目は新渡戸稲造先生が唱えた「武士道の道」(侍の道)です。武士道とは、日本において武士の間に形成された道徳規範で、主君に対する絶対的忠節を重視し、犠牲・礼儀・質素・倹約・尚武などが求められました。また「武士道」は世界共通の人間精神であり、これからは、「縄文道」と「武士道」が共存し、相互補完関係を形成していく時代になるのではないかと私は考えています。

環境適応力、日本化力、復元力が縄文道の強み

 ――ところで、先生は縄文文化の持つ強み、底力はどのようなものとお考えですか。

 加藤 私は今3つの点に注目しています。

 1つ目は、「環境適応力」です。縄文1万年以上は、自然環境が相当厳しかったと考えられています。その自然環境を破壊することなく、うまく共存して、知恵を出して生き抜いていくのは大変なことでした。日本人の環境にうまく適合していく能力はこの時に養われたと思います。

 2つ目は、「日本化力」(「換骨奪胎力」)です。あらゆる文化に適応することができ、しかも、それを理解・消化して、日本の文化が持つ特有の風土・環境に適合させ、そこに独自の文化を創造していく力を本来、縄文のDNAを持つ日本人はもっています。

 3つ目は、「復元力」です。日本人は今までの歴史のなかで天災地変、戦争、経済危機を何とか乗り切ってきました。その秘密はどこにあるかについて、さまざまな分野の学者のいろいろな説があります。私は縄文時代に形成された文化の知恵によるところが大きいと考えています。私の親しい古代史作家の関裕二先生は、3.11の約3カ月後に、『日本人はなぜ震災にへこたれないのか』(PHP新書)を出版し、贈呈してくれました。その際、関先生がおっしゃった「すべてのカギは縄文にあります」という言葉が印象に残っています。私は、その本を今でも大事にしていますが、やはり縄文時代1万年以上というのは、大きな日本人の財産になったと感じています。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
加藤春一氏(かとう・はるいち)

 (一社) 縄文道研究所 代表理事・東京エグゼクティブ・サーチ顧問。

 1944年満州大連にて日本の陶祖 加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。1968年上智大学経済学部卒業後 大手商社・日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間5大陸56カ国訪問。1998~2016年 東京エグゼクティブ・サーチ勤務(2000年から2008年まで社長)、世界のサーチファームITPグループ日本代表。2016年(一社)縄文道研究所創設 代表理事に就任。

 明治大学公開講座 講師(2015年~現在)、上智大学非常勤講師、兵庫県立大学大学院客員教授を歴任。著書として、『能力Q セルフプロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア‐パースへのいざない』(「国会図書館永久保存版」ヒューマノミックスめいけい)ほか多数。

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