2024年04月20日( 土 )

AI・ロボットの時代だからこそ待望される「新縄文人」の出現!(前)

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 今、日本が急速に、世界的に注目され出した。とは言っても、それは経済や政治の話などではない。「文化」の話である。日本は、欧米や大陸のどの国にもない歴史をもっている。それは、縄文時代という、1万年以上にわたる自然と共存共生した歴史である。そして、遺伝学者の齋藤成也先生(国立遺伝学研究所教授、東京大学大学院教授)によれば、現代に生きる私たちも、この縄文人のDNAの12%を引き継いでいる。

(一社)縄文道研究所 代表理事で東京エグゼクティブ・サーチ 顧問の加藤春一氏に聞いた。

(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏

世界的に危機が訪れていることに気づき始めた

 ――今、急速に世界のさまざまな分野で、日本の「縄文」が注目され始めています。

 加藤春一氏(以下、加藤) 世界的に危機が迫っていることを多くの皆さんが気づき始めたからだと思っています。かつて地球には、大恐竜時代というのがありました。しかし、地球上に現れたあのすごい、すさまじい恐竜でも、なぜかは諸説がありますが、姿を消していったのは紛れもない事実です。以下は、「縄文文化」の偉大さについての内外からのコメントです。

 20世紀最高の文化人類学者と言われた故レヴィー・ストロースは、日本に3度来日し、「縄文土器」との最初の出会いで、直ちに縄文人の優れた造形感覚と制作の裏に隠された知恵を見抜き、日本文化の素晴らしさを高く評価しました。

 21世紀の世界的知性といわれるカリフォルニア大学のジャレット・ダイヤモンド博士は、2015年のNHKの番組で「縄文文化は世界史的に見て世界的な偉業である」と称えました。また同番組で、縄文土器の土偶ビーナスがサザビーズにおいて、約2億円で落札されたと報じられました。

 建築学者の泰斗である上田篤元大阪大学教授は「縄文人を知らずして日本文化を語るなかれ」「縄文文化は日本文化の原点」、現代日本が直面している問題と閉塞状況を「今一度縄文文化に立ち返れば乗り越えられるのではないか」と主張しています。(『縄文人に学ぶ』新潮新書)

 日本では、2018年は「縄文元年」と言われました。春には、山岡信貴監督による映画「縄文にハマる人々」の上映が全国各地で始まり、7月には上野東京博物館で「縄文―一万年の美の鼓動」展(30万人以上が観賞)があり、この縄文展は10月にはパリに移動「日本文化会館」において開催、フランス人に新鮮な驚きとともに迎えられ、多くのフランス国民を魅了しました。

今まさに日本人は5つの危機に直面しつつある

 さて、私はよく講演でお話するのですが、日本にも今5つの危機が迫ってきています。

【自然災害が起こる】

 1つ目は自然災害の危機です。一例を挙げれば地震です。日本で歴史に残っている最初の地震は416年の允恭(いんぎょう)地震と言われています。この允恭地震から数えてこれまで震度7以上の地震が174回起きています。単純計算で、約9年に1回起きていることになります。しかも、昭和・平成(1925年から2016年)までに日本で発生した震度7クラス(震度6後半含む)の地震は49回で、約2年に1度の計算になりその間隔は狭まっています。

 日本列島は世界に類例のない、地球を覆っている10数枚のプレートのうち4枚のプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピンプレート)の衝突部にあり、世界的にも活発なサブダクションゾーン(沈み込み帯)のフロントに位置しています。

 このような現実を前にすれば、今問題になっている「原子力発電」の今後の方向性も自ずと決まってくるのではないかと思います。

【サイバーアタック】

 2つ目はサイバーアタックの危機です。NICT(国立研究開発法人「情報通信研究機構」)により開発されたNICTER(サイバー攻撃観測・分析・対策システム)の観測によりますと、2018年の「海外送信元から日本国内に向けて行われたサイバー攻撃のパケット総数」は18年1月1日~12月31日で約1,900億回、すなわち1日平均で約5億2,000万回もの攻撃を受けています。

 2017年は1,400億回だったので約1.4倍になりました。海外送信元からのサイバー攻撃は急増しており、国際連携、技術開発、高度セキュリティー人材の育成、法制備などが急がれるところです。今後も、10月には令和天皇即位式、11月にはローマ法王来日、2020年には「東京五輪」とサーバーアタックの格好の標的となりやすい行事が続きます。

【世界金融恐慌危機】

 3つ目は世界金融恐慌の危機、そしてその日本への甚大な影響です。2018年(国際決済銀行・BIS調べ)で世界の不良債権総額は247兆ドル(2京7,000兆円)、うち民間部門総額は174兆円(1京9,000兆円)で、ともにリーマン・ショックの前年(2007年)の不良債権額を超えています。世界の成長は完全に勢いを失っております。グローバル社会では、その危機が世界のどの国でおきても、日本への大きな影響は防ぎようがありません。

【労働力不足の危機】

 4つ目は労働力不足の危機です。約10年後の2030年の労働力に関する調査データがあります。(「労働市場の未来統計2030」パーソル総合研究所)同調査では、2030年の7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、644万人が不足するとしています。

 産業別に、とくに大きな不足が予測されるのは、少子高齢化やサービス産業化の進展により、今後も大きな需要の伸びが予測され、労働供給の伸びがそれに追いつかない、サービス業、医療・福祉業などの業種です。

【「人間意識」危機】

 5つ目は人間力、人間性、人間観の危機です。日本人のとくにリーダーにおいて、人間力の弱体化、人間性の劣化、人間観の貧化などによるモラル、コンプライアンスの欠如が急速に増大しています。リーダーの不祥事が日本の至るところで日常的に起こっています。

 それは日本が豊かで総サラリーマン社会になったことが原因と言われています。確かに、戦前の1940年代は90%が個人事業主で10%がサラリーマンだったのに対し、2019年現在では、90%がサラリーマン、10%が個人事業主に様変わりしました。

 そして、このことは若い層にも多大な影響を与えています。APEC14の国や地域の調査ならびにOECDの調査でも、世界各国と比較して日本の若者は、断トツで上昇志向がない(管理職になりたくない、社長になりたくない)ことがはっきりでています。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
加藤春一氏(かとう・はるいち)

 (一社) 縄文道研究所 代表理事・東京エグゼクティブ・サーチ顧問。

 1944年満州大連にて日本の陶祖 加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。1968年上智大学経済学部卒業後 大手商社・日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間5大陸56カ国訪問。1998~2016年 東京エグゼクティブ・サーチ勤務(2000年から2008年まで社長)、世界のサーチファームITPグループ日本代表。2016年(一社)縄文道研究所創設 代表理事に就任。

 明治大学公開講座 講師(2015年~現在)、上智大学非常勤講師、兵庫県立大学大学院客員教授を歴任。著書として、『能力Q セルフプロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア‐パースへのいざない』(「国会図書館永久保存版」ヒューマノミックスめいけい)ほか多数。

(中)

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