合同庁舎移転&跡地活用がカギ~博多駅・筑紫口再開発(5)
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九大・箱崎跡地への合同庁舎移転策
これまで博多駅周辺――なかでも筑紫口エリアに着目しながら、開発の歴史や現在の状況などを見てきたが、筑紫口を語るうえで外すことができないものがある。それは、「福岡合同庁舎」の存在だ。
福岡合同庁舎は、九州地方整備局や九州経済産業局などの国の出先機関が集積した施設で、筑紫口エリアにおける中核的な施設といってよい。だが、2007年3月に竣工した新館を除けば、福岡合同庁舎(68年11月竣工)、福岡第2合同庁舎(74年12月竣工)など、すでに築45年以上が経過して老朽化が進んでおり、そう遠くない時期に新たな施設整備が必要になることが想定される。また一方で、政府が策定した「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」では、首相官邸などの行政中枢機能が使用できなくなった場合に備えた代替拠点の検討候補地の1つとして福岡市が挙げられているが、博多駅周辺が99年6月と03年7月の2度にわたって、豪雨による御笠川の氾濫による浸水被害を受けたことを考えると、リダンダンシーの観点からも、現在地に国の重要機関を集積することは、決してベストだとはいえまい。
そうした現在の合同庁舎が置かれた状況を考えた場合、地元の経済団体である福岡経済同友会によって17年1月に策定され、同年4月に高島宗一郎・福岡市長に提出された意見書の提案内容が興味深い。
同友会による意見書では、高度都市機能の受け皿としての九州大学・箱崎キャンパス跡地のポテンシャルを評価したうえで、そこに福岡合同庁舎に集積している国の出先機関を移転することが提案されている。また、市内外に立地したほかの出先機関についても移転・集積を行うことで効率化が図れるとし、福岡県庁とも直線道路で結ばれることで、国・地方自治体の連携が円滑に進む効果も見込めるとしている。さらに、九州の広域防災拠点の一翼を担う施設や非常物資の集配拠点としての機能の併設についても触れ、BCP(事業継続計画)への対応力の強化も提案には盛り込まれている。
一方で、箱崎キャンパス跡地に移転・集約された場合の今の合同庁舎の跡地については、都心部における貴重なまとまった土地である点を挙げ、ホテルや商業地など都心にふさわしい高度利用を推進すべきとの意見が示されている。この同友会による提案は、それぞれの立地的特性を鑑みた九大・箱崎キャンパス跡地と筑紫口・合同庁舎跡地との同時活用を考えた場合、非常に理に適っているといえよう。
実は、筑紫口エリアの現在地に合同庁舎ができる前に一度、その候補地として、大濠エリアでの建設が検討されたこともある。だが、周辺に福岡城を始めとした歴史的遺構も多く、また全国でも有数の水景公園である大濠公園の景観への影響を考えた結果、大濠への合同庁舎の建設は見送られ、当時はまだそれほど開発が進んでおらず、開発用の土地にも十分な余裕があった現在地へと建設された経緯がある。それを考えると、福岡合同庁舎は必ずしも現在地になければならないという性格のものでもなく、今後の拡張性やエリアの発展などを考えた場合、箱崎キャンパス跡地への移転という提案には一考の余地があるだろう。
交通結節点である博多駅エリアに求められるのは、単なるまちの賑わいだけではない。今後、博多コネクティッドを契機としながらエリアのさらなる機能強化が進むことで、福岡、そして九州の成長をも牽引していくような、新たな博多のまちが誕生していくことを期待したい。
(了)
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