2024年04月20日( 土 )

JR九州、ハイエナファンドの餌食になる!~ファンドの圧力に屈して、100億円の自社株買い(後)

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東芝に利益を吐き出させた手法

 JR九州に自社株買いというかたちで利益を吐き出させるために、ファーツリー社は、ハイエナ軍団が東芝で使った手法を採り入れた。

 東芝は米国の原発子会社ウェスチングハウスの再生手続きによる巨額損失を計上、17年3月期に債務超過に陥った。債務超過を解消するために、17年12月、6,000億円もの第三者割当増資を行った。

 増資に応じた60のファンドには、うるさ型の「物言う株主」が顔をそろえた。東芝という屍臭に群がったハゲタカやハイエナの群れだ。

 東芝は稼ぎ頭だった半導体メモリ事業の売却で手元資金が1兆4,857億円増えた。東芝の豊潤なキャッシュに舌なめずりしたのが、増資を引き受けて東芝の株主となったハイエナの群れ。我らが増資に応じたから、東芝は倒産を免れた。その謝礼として、1兆1,000億円の自己株式の買い戻しを求めた。

 東芝メモリの売却で、手元資金が増えたうちの4分の3近くをファンド側に還元せよと迫ったわけだ。とんだ強欲ぶりだ。1兆1,000億円も吸い上げられたら、何のために東芝メモリを売却したのかわからない。

 18年4月、メインバンクの三井住友銀行取締役兼専務執行役員・車谷暢昭氏が会長兼CEOに就いた。車谷氏は東芝の再建を優先すると表明。ハイエナ軍団は勝負に出た。株主総会での投票を武器に、「要求を呑まないと、株主総会で取締役就任を認めないぞ」と揺さぶりをかけた。18年の株主総会での車谷会長の賛成率は63.04%。言うことをきかなければ、臨時株主総会を開き、いつでも首をすげ替えることができることを見せつけ、東芝=車谷会長は全面降伏した。

車谷会長はご褒美に100%近い賛成を得た

 東芝は構造改革費用などを考慮して自社株買いを7,000億円に決めた点に理解を求めた。手元資金が増えた半分近くをファンド側に渡しますから、それで手を打ちましょうというわけだ。

 かくして18年11月から7,000億円を上限に自社株買いを実施した。一度、債務超過に陥った転落していた企業が、ここまで、巨額の自社株買いを行った例はない。東芝が自社株買いに踏み切ったのは、ハイエナ軍団の圧力に屈したからだ。

 19年6月の株主総会で、車谷会長兼CEO(最高経営責任者)は99.43%の賛成率を得た。東芝は巨額増資の結果、海外投資家の保有比率は69.82%(19年3月末時点)を占める。ハイエナ軍団の言いなりになったから、そのご褒美に100%近い賛成を得た。

 東芝は虎の子の東芝メモリを売ったから、残りはスッポンポン。稼ぎ手を失った東芝は、2019年4~6月期の最終損益は1,402億円の赤字だった。
自業自得とはいえ、ハゲタカファンドに経営を蹂躙されるとこうなる、という悪しき実例だ。

JR九州は東芝の二の舞に

 JR九州は、東芝の二の舞になる恐れがある。自社株買いを呑ませるために、株主総会で青柳社長の首をとることができるぞ、とハイエナは力を誇示した。これでJR九州は白旗を掲げて降参。自社株買いに応じた。

 勝利したハイエナはどう出るか。鉄道会社とハイエナとの攻防には前史がある。西武ホールディングス(HD)の経営陣と米投資会社サーベラスの攻防は有名だ。西武HDにとって、本業はあくまで鉄道だが、投資会社にとってはプリンスホテルを保有するホテル会社だ。

 サーベラスは、西武鉄道の不採算路線の廃止や西武ライオンズの売却を提案して、揺さぶりをかけた。沿線住民やライオンズファンから猛反発を受けたが、それでビビるほどヤワではない。ハイエナの目的は、高値売り抜けだ。西武HDが2014年4月に上場をはたすと、サーベラスは同社株をすべて売却して、しっかりリターンを得た。

 ファーツリー社をはじめ、JR九州に群がったハイエナ軍団の狙いが、高値売り抜けにあることはいうまでもない。株価を引き上げるために、一段と自社株買いの圧力を強める。海外投資家に包囲されたJR九州は、東芝と同じようにハイエナの群れに翻弄されることになる。上場したことを後悔する日々が続くことになりそうだ。

(了)
【森村 和男】

(前)

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