• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年12月02日 15:08

人工知能(AI)はこれからが本来の意味での発展に向かう!(1)

 今1冊の本『AI兵器と未来社会』(朝日新書)が大きく注目されている。人工知能(AI)第3次ブームのバブルは2018年後半を境に陰りを見せ始めた。現在のAIの実体がIT技術の延長線上にあり、ターミネーターのような人の知能レベルに近い本来の人工知能の到来がまだ先であることの認識が広まりつつあるからだ。しかし、今こそ、一過性の狂騒曲で一喜一憂することなく、悪戯な脅威論や万能論でもなく、その本質を捉える議論ができる。著者である栗原聡・慶応義塾大学理工学部教授に聞いた。

慶応義塾大学理工学部 教授 栗原 聡 氏

人工知能(AI)について正しく理解してもらう必要を感じた

 ――『AI兵器と未来社会』(朝日新書)が注目されています。本書をお書きになった動機から教えていただけますか。

 栗原 聡氏(以下、栗原) 現在の人工知能(AI)に関する出版物を見ていると大きく2つにわかれます。1つはAI研究者が書く技術書です。技術書なのでもちろん我々研究者にとってはとても役に立ちますが、数字や記号が多く、とてもテクニカルで、一般向けの書籍からは乖離があります。

一方、AI研究者でないアナリストなどの方々が書く一般向けの読み物も多くあります。AIに精通された方もおられますが、その多くはわかり易さを優先、面白さを狙い、本来的なAIの実態をミスリードさせる危険性を感じさせるものも散見されます。そこで、少しブームが落ち着き始めた今こそ、広く一般向けにAIを正しく理解してもらう必要性を感じました。

知能とは生物が生き抜くために環境に適応する能力のこと

 ――まずは、AIと「知能」に関して教えてください。

 栗原 AIという言葉が、時にはハリウッド映画の「ターミネーター」、時には日本漫画の「鉄腕アトム」「ドラえもん」などと、実態と大きく異なるものを想像させ、1人歩きしています。また「AIに仕事が奪われる」などの人間と人工知能(AI)を対比させるマスメディア報道もその流れに拍車をかけています。

 人工ダイヤモンド、人工心肺、人工降雪機などと「人工」が付く言葉はたくさんあります。人工とは人がつくることを意味します。人がつくるのであれば、その対象がどういうものであるかが明確にわかっている必要があります。

 たとえばダイヤモンドとは「炭素の同素体の1つであり、実験でたしかめられているなかでは天然で最も硬い物質である。結晶構造は多くが八面体で、十二面体や六面体もある。宝石や研磨材として利用されている。ダイヤモンドの結晶の原子に不対電子が存在しないため、電気を通さない」などとわかっているので、人工ダイヤモンドをつくることができます。

 では、「知能」とはどのようなものでしょうか?以外と思われるかもしれませんが、知能には今のところ明確な定義はありません。いろいろな定義があり過ぎて定まっていないと申し上げた方がよいのかも知れません。

 私は知能とは「生き抜くために環境に適応する能力」と考えています。また「生物が等しく持つ必須な能力」というイメージをもっています。そして、生物はもっていますが、現在の人工知能搭載ロボット(低汎用型)がもっていないものが、「生きる目的」と「その目的を達成させる自律性や能動性」です。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
栗原 聡氏(くりはら・さとし)

 慶応義塾大学大学院理工学研究科修了。NTT基礎研究所、大阪大学産業科学研究所、電気通信大学大学院情報理工学研究科などを経て、2018年から慶応義塾大学理工学部教授。博士(工学)。電気通信大学人工知能先端研究センター特任教授。大阪大学産業科学研究所招聘教授、人工知能学会倫理委員会アドバイザーなどを兼任。人工知学会理事・編集長などを歴任。人工知能、ネットワーク科学等の研究に従事。著書として、『社会基盤としての情報通信』(共立出版)、『AI兵器と未来社会』(朝日新書)、翻訳『群知能とデータマイニング』、『スモールワールド』(東京電機大学出版)など多数。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年05月27日 16:30

Zoomが中国で利用規制~新規の無料ユーザー登録が不可に

 ここ数日、中国において、「Zoom」の無料ユーザーがログインできない事態が生じている。24日、記者が日本、中国、香港の友人たちとZoomで会話をしようとしたところ、...

2020年05月27日 16:10

緊急事態宣言全面解除 「新しい生活様式」46ヶ条の総まとめ

 「新しい生活様式」とは何か! すでに実践済みとは思いますが、改めて政府が唱える46項目の「新しい生活様式」を掲載します

名ライオンズマン・和田耕司氏のライオンズクラブ「惜別の辞」

 和田耕司ライオンより、ライオンズクラブ脱会にあたっての「惜別の辞」が送られてきた...

2020年05月27日 13:36

【BIS論壇No.322】コロナ後の日本、世界経済予測

 今回のコロナパンデミックは2003年のサーズに比べ、グローバル化の加速もあいまって、伝染病が短期間に世界に蔓延。世界の経済活動にかつてない深刻な影響を与えている...

宇都宮健児都知事誕生の可能性

 新型コロナウイルスの人口あたり死者数のデータを見ると地域差が歴然としている...

2020年05月27日 11:26

春日市温水プール大規模改修、中野建設JVが3.5億円で落札

 春日市発注の、「春日市温水プール大規模改修工事(建築工事)」を、中野建設・キムラJVが3億5,850万円(税別)で落札した...

2020年05月27日 10:56

危機に直面し、自らをイエス・キリストにたとえる孫正義の自信と勝負魂(1)

 日本では緊急事態宣言が解除されたが、先行きに対する不安は残ったままだ。そのため、政治家はいうにおよばず、ビジネスの世界でも冒険心や挑戦の気概を失い、立ち止まってしま...

2020年05月27日 10:18

「徒歩の調査」から見た福島第一原発事故 被曝地からの報告(中)

 放射線の話になると、さまざまな単位が出てくるため、以下に簡単に説明しておきたい。原発事故の記事が出ると、多くの読者はこれで訳がわからなくなる...

2020年05月27日 07:00

【書評】『やる気を引き出す言氣の心理学――働き方か生き方改革か』柳平彬著(ぱるす出版)

 著者の柳平氏は、昨今議論されている働き方改革について、より大事なことは1人ひとりの「生き方改革」ではないかと主張する。その理由は人の潜在的な能力を引き出すには...

2020年05月27日 07:00

博多阪急3月期、売上高4.7%減 インバウンド、コロナ禍響く

 エイチ・ツー・オー・リテイリングの発表した2020年3月期決算によると、博多阪急の売上高は...

pagetop