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2019年12月02日 17:10

一帯一路と米中貿易戦争(1)

名古屋市立大学22世紀研究所特任教授、大連外国語大学客員教授、国際アジア共同体学会学術顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会会長、元東京経済大学経営学部大学院教授
中川 十郎 氏

I.一帯一路(BRI)と日本の対応

中川 十郎 氏
中川 十郎 氏

(1)一帯一路(BRI)は2013年、中国の習近平主席が打ち出した中国の東からユーラシア大陸を西へと物流インフラを構築する「陸のシルクロード」と海の物流網「21世紀海のシルクロード」を構築しようとする21世紀の巨大プロジェクトである。この一帯一路の沿線国は60数カ国、世界人口の60%の40億人、世界国民総生産(GDP)の30%、貿易額の30%、アフリカを含めると地球の陸地面積の50%強を占める巨大貿易圏が誕生しつつある。

(2)未来予測研究家として有名な米国のユーラシアグループ代表、イアンブレマー氏は「今日世界で未来戦略を有しているのはヨーロッパでも米国でも日本でもない、それは唯一中国だ」と喝破。世界の未来を見据えた中国のBRIを意識した発言だと思われる。

(3)筆者の過去20数年間の中央アジアの上海協力機構(SCO=中国、ロシア、インド、パキスタン、カザフスタンほか8カ国で構成)などの研究から判断し、BRIはこれまでの20年間のSCOでのメンバー関係国の協力、さらに過去に遡ると、漢時代の張騫の中央アジアとの結びつき、1200年代のモンゴル帝国のジンギスカンがユーラシア大陸で世界最大の帝国を築き、東西交易と文化交流に邁進した陸のシルクロードのDNA。さらには1400年代の明の永楽帝時代の「鄭和大艦隊」の南シナ海、インド洋、アラビア、アフリカとの海上交易にBRIの淵源があるように思われる。

(4)欧米の地政学者(英国マッキンダーのユーラシア・ハートランドー(中核)理論)、米国スパイクマンのリムランド(周辺)理論や、カーター大統領元補佐官ブレジンスキーの(ユーラシア西、中央、南、東のチェス盤理論)は「ユーラシアを制する者が世界を制する」と喝破。かかる観点からBRIを理解する必要があるように思われる。※注1)

(5)筆者の過去30数年(うち20年は海外に駐在。60数カ国での市場開拓・貿易業務に従事)の商社での国際ビジネスの経験から判断し、BRIは上記のような中国の過去からの長年の海外交易のDNAを受け継ぎ、中国が世界最大版図のユーラシア大陸を結節する21世紀の野心的な広域経済圏構想であると思われる。

(6)700年代の遣隋使、遣唐使の派遣以来、仏教、文化、経済面で日本がお世話になった中国が世界最大の経済貿易大国として2030年ごろには米国を凌駕するかもしれないという時期に、日本はBRIおよび、資金面で諸プロジェクトへの融資を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも積極的に参加することが日本の21世紀のグローバル経済戦略の為にも必須だと思われる。BRIやAIIBの欠点をあげつらうだけでなく、中に入って一衣帯水の隣国中国と中国国内のみならず、ユーラシアの発展途上国、さらには世界各国での諸プロジェクトで中国との協力の方策を前向きに研究し、日中相協力することこそ日本の将来の為にも肝要だと確信している。

(7)日本で地方自治体の東京都元知事の石原慎太郎が、それまで解決を将来の世代に任せると日中で合意していた尖閣島を、東京都で買い上げると唱え、それに対応し、民主党の野田内閣が尖閣島を国家で買収したことが発端となり、以来日中関係は悪化の一途をたどり、今日、日本のメデイアでは中国脅威論、中国への批判が目立っている。その批判が最近は極端になりつつあり、残念でならない。詳細は主要参考文献の一部を参照願いたい。

(つづく)

※注1:『ユーラシアの地政学』石郷岡 建、岩波書店、2004年、pp144~147

【主要参考文献】
『見えない価値を生む~知識情報戦略』石川昭・中川十郎編著、税務経理協会 2011年
『日本が危ない!一帯一路の罠』宮崎正弘、ハート出版 平成31年、
『中国が支配する世界』湯浅 博、飛鳥新社 2018年、
『米中対決の真実』古森義久、海竜社、2019年、
『2020年「習近平」の終焉』日高義樹 悟空出版 2019年、
『米中「冷戦」から「熱戦」へ』藤井厳喜、石 平WAC 2018年、
「一帯一路の衝撃」赤く染まるアフリカ、中東~『Wedge』2019年3月号
『軍事的視点で読み解く米中経済戦争』福山 隆、ワニブックスPLUS新書 2019年
『地政学で読み解く 海がつくった世界史』村山秀太郎 監修 実業之日本社 2017年
『地経学とは何か』JFIR World Review Vol.2, 2018年12月
『中国製造2025の衝撃』遠藤 誉、PHP 2019年
『アフラシアの時代 2100年の世界地図』峯 陽一 岩波新書 2019年
『戦争の地政学 米中もし戦わば』ピーター・ナヴァロ 文春文庫 2019年
『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』岡本隆司 東洋経済新報社 2019年
『東アジア共同体と日本の戦略』監修・進藤栄一、協力・中川十郎、桜美林大学北東アジア総合研究所 2011年
『ユーラシアの地政学』石郷岡 建 岩波書店 2004年
『物流は世界史をどう変えたのか』玉木俊明 PHP新書 2018年
『習近平と米中衝突』近藤大介 NHK出版新書2018年
『世界経済全史』宮崎正勝 日本実業出版社 2018年
『古代日中関係史~倭の五王から遣唐使以降まで』河上麻由子 中公新書 2019年
『ファーウェイと米中5G戦争』近藤大介 講談社 2019年
『漢帝国-400年の興亡』渡邊義浩 中公新書 2019年
『2050年の中国』胡 鞍鋼 他著 日本僑報社 2018年
『日米ハイテク覇権のゆくえ』NHKスぺシャル取材班 NHK出版新書 2019年
『未来の大国 2030年、世界地図が塗り替わる』浜田和幸 祥伝社新書 2019年
『一帯一路からユーラシア新世紀の道』進藤栄一・周瑋生編 共著・中川十郎、日本評論
社 2018年
『一帯一路の現況分析と戦略展望』科学技術振興機構、共著・中川十郎 2019年
『米中激突恐慌』副島隆彦 祥伝社 2019年

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