2024年05月02日( 木 )

日本版「#MeToo」裁判~女性蔑視・男尊女卑の日本社会(15)

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 検察審査会にも、当然一件記録は送付されており、被害者側の主張立証である告訴状と疎明資料、捜査機関による捜査資料がその内容である。これらの一件記録を補助審査員弁護士が読まないことはあり得ないから、補助審査員弁護士は当該員面調書の存在は知っていた。そして、法律の専門家であるだけに、当該員面調書の重要性を理解していたはずである。

 現時点で、補助審査員弁護士に当該員面調書を審査員は読んだのかどうかの説明を求める必要があるが、まずその第一の障害が氏名の隠蔽である。報道関係者は、このような極めて重大な情報開示すら容易でなくしている氏名の黒塗り隠蔽に強く抗議する必要がある。今からでも遅くはなく、補助審査員弁護士の氏名開示を求め、同時に弁護士業務遂行において氏名隠蔽が弁護士の社会的責任に反する弁護士倫理違反として懲戒請求すべきである。

 審査員らは告訴状と添付疎明資料すら読まされていない可能性がある。これでは犯罪構成要件事実の存否の判断は不可能であり、不起訴相当議決はもはや既定の路線であった可能性が高い。これらの犯罪行為(業務妨害行為、証拠隠滅行為)が少なくとも補助審査員弁護士と裁判所職員である検察審査会事務局員及び事務局長らが法律専門家として意識的に行った可能性が高い。

 この弁護士と裁判所職員の競合による犯罪は、ある意味、弁護士会も共犯者である。補助審査員が必要であるとしても、それが裁判所の選任によるとすることは、裁判所無謬説を根拠とするもので、現実には不当である。それは歴史が証明している事実である。

 補助審査員を弁護士一人に限定していることも見るからに不合理で、事件に応じた専門家である必要があり、それには学識経験者にまで枠を広めるべきである。そして、なによりもその人選が公正中立でなければならない。そのためには、複数の選任でなければならない。一人であることは極めて不都合である。これらの問題を弁護士会は黙認してきた。

 検察審査会審査員の無作為抽出の事務は基本的に住民台帳を管理する市町村に委ねられている。審査員は裁判官と同じく、忌避事由がないことが必要であるが、この確認事務が裁判所職員のみが可能である理由は全くない。そうであれば、補助審査員の選任も含めて市町村の事務とすることで、中立公正性が担保できる。現在の日本では、裁判所が一番信用できない役所である可能性が否定できない。それは、現在までの多数の冤罪の最終決定者が裁判官であることを示すまでもない。現に、本件事件は裁判所職員(検察審査会事務局員・事務局長)への信頼が揺らいでいる事件である。

 弁護士会は常にその会長選を巡って熾烈な選挙戦を展開する。官僚出身弁護士と生粋の在野弁護士との見解の相違がこのような検察審査会の法的構造にもあるからである。

 報道関係者はここまで踏み込んで刑事司法・「検察審査会の実態」を報道すべきである。

(つづく)
【凡学 一生】

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