2024年04月17日( 水 )

厳しさ増すゴルフ場~宇部興産が宇部72を譲渡

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 【表1】は宇部興産の100%子会社である宇部興産開発(株)が運営する宇部72カントリークラブを、ゴルフ場運営会社の市川興業(東京都練馬区)に譲渡するお知らせである。

【表1】ゴルフ事業の譲渡に関するお知らせ

宇部興産株式会社

ゴルフ場事業の譲渡に関するお知らせ

2019年12月20日

 当社は、当社の完全子会社である宇部興産開発株式会社(山口県山口市。以下「宇部興産開発」)が運営するゴルフ場事業を、市川興業株式会社(東京都。以下「市川興業」)に譲渡することを決定しましたので、お知らせいたします。

1.譲渡の目的と概要

 宇部興産開発が運営するゴルフ場事業(以下「本事業」)は、1960年の営業開始以来、4コースを有する西日本最大級のゴルフ場として発展し、数々のトーナメントも開催されてきました。

 しかしながら、国内のゴルフ人口が減少傾向をたどる中にあって、ゴルフ場業界は今後も厳しい事業環境が見込まれることから、利用者の皆様への更なるサービス向上と本事業の中長期的な発展を図るためには、ゴルフ場経営を主要事業とする企業に本事業の運営を委ねるべきであると判断し、市川興業に譲渡することといたしました。

 事業譲渡に当たっては、2019年12月に宇部興産開発が設立した「株式会社宇部72カントリークラブ」(以下「宇部72CC」)へ本事業を分割移管させた上で、宇部72CCの全株式を市川興業に譲渡いたします。

2.譲渡対象会社および事業の概要

※クリックで拡大

3.譲渡先の概要

※クリックで拡大

4.日程

※クリックで拡大

5.連結業績に与える影響

 本件に伴い、特別損失を約48億円計上し、法人税等を考慮した親会社株主に帰属する

 当期純利益は約25億円減少する見込みです。2020年3月期通期連結業績予想につきましては、2019年10月28日に公表しました業績予想の修正が必要と判断される場合には、速やかに公表いたします。

お問い合わせ先
ニュースリリースについてのお問い合わせ
〒105-8449 東京都港区芝浦一丁目2-1シーバンスN館
宇部興産株式会社 CSR・総務部 総務・広報グループ
TEL:03-5419-6110
(注:原文を一部変更)

~この表から見えるもの~

 宇部72カントリークラブ(以下、宇部72CC)は上田治氏、ロバート・ボン・ヘギー氏が設計。

 1960年10月29日、宇部72CCとして、阿知須コース、江畑池コース、万年池西コース、万年池東コースの4コース(72ホール)を開業。

 宇部72CCは4コースを有する西日本最大級のゴルフ場で49年余りの歴史をもつ。多くのPGAツアー競技や日本女子オープンゴルフ選手権競技(1995年、万年池西コース)、日本シニアオープンゴルフ選手権競技(1998年、万年池東コース)の舞台にもなった名門のゴルフクラブだった。

しかし、年々ゴルフ人口は減少しており、今後はさらに厳しさが見込まれることから、宇部興産と宇部興産開発は、ゴルフ場経営を主要事業とする市川興業に譲渡することを決断したようだ。

 宇部興産および宇部興産開発は昨年12月19日、宇部72CCを市川興業に譲渡する決議を取締役会で承認。翌12月20日、ゴルフ場の理事会でも承認され、2020年3月2日に譲渡される予定。

【表2】、【表3】、【表4】、を見ていただきたい。宇部72CCを譲渡する宇部興産の経営成績推移表と、譲渡を受ける市川興業が運営しているゴルフ場である。

https://www.data-max.co.jp/files/article/20200106-hamasaki-hyou-04.jpg
※クリックで拡大
https://www.data-max.co.jp/files/article/20200106-hamasaki-hyou-05.jpg
※クリックで拡大
https://www.data-max.co.jp/files/article/20200106-hamasaki-hyou-06.jpg
※クリックで拡大

~これらの表から見えるもの~

 宇部興産の2020年3月期の売上高は前期比▲251億円の7,050億円(▲3.4%)。経常利益は前期比▲68億円の410億円(▲14.2%)。親会社に帰属する当期純利益は、宇部72CCの譲渡を織り込んだ特別損益▲30億円計上して、前期比▲49億円の275億円(▲15.1%)を予想している。

 市川興業は佐野クラシックゴルフなど10カ所のゴルフ場を運営している。山口県のゴルフ場は33カ所あるが、すでに、ブルーラインカントリー倶楽部(長門市)を運営しており、譲渡を受ける宇部72CCの4コースを合わせると5カ所になる。

・九州でも宮崎県のハイビスカスゴルフクラブ、宮崎国際空港カントリークラブ(いずれも宮崎市)の2カ所を経営しており、今後さらに増えるものと予想される。

【表5】、【表6】を見ていただきたい。福岡県のゴルフ場と九州各県のゴルフ場比較表である。

https://www.data-max.co.jp/files/article/20200106-hamasaki-hyou-07.jpg
※クリックで拡大
https://www.data-max.co.jp/files/article/20200106-hamasaki-hyou-08.jpg
※クリックで拡大

~この表から見えるもの~

 山口県のゴルフ場は33カ所で、1ゴルフ場のパーヘッドは41,024人。

 九州7県のゴルフ場は222カ所で、パーヘッドは57,670人。パーヘッドを下回っているのは宮崎県で36,968人。以下、佐賀県38,772人。熊本県43,669人。大分県45,377人。長崎県57,618人で5県。上回っているのは福岡県89,651人と、鹿児島県59,259人の2県だけとなっている。

 九州7県の2019年10月1日の人口は、2015年10月1日に実施された国勢調査より▲213,568人の12,802,761人(▲1.6%)。7県のうち福岡県だけが前年比+8,557人で、福岡市が+53,976人の1,592,657人(3.6%増)と大きく増加したことが主な要因となっている。福岡市周辺のゴルフ場は単独経営が可能だが、地方のゴルフ場は経営統合せざるを得ない環境にあるのが読み取れる。

<まとめ>

 筆者は2001年6月に山口銀行の取締役宇部支店長に就任。宇部72CCがある阿知須町は当時山口市と宇部市に挟まれた吉城郡阿知須町だった。2003年末頃、当時の飯田宏史阿知須町長と藤田忠夫宇部市長と飲食する予定を組んでいたが、直前に飯田氏からキャンセルの申し出があったことが思い出される。

 2001年の夏、山口きらら博が開催されたことから県庁のある山口市との関係が深く、宇部市ではなく、山口市との合併が密かに進んでいたようだ。

 翌2004年6月9日、山口市、小郡町、秋穂町および阿知須町での1市3町による『山口県央部1市3町合併調査研究会』を設置。

 2005年10月1日に1市3町は山口市と対等合併して山口市に編入された。

 もし、阿知須町が宇部市と合併して宇部市に編入されていれば、宇部興産は宇部72カントリークラブを市川興業に譲渡しなかったのではないだろうか。

【株式会社データ・マックス顧問 浜崎裕治】

関連記事