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2020年01月10日 09:22

カルロス・ゴーン記者会見~森法務大臣によるコメントについて

森法務大臣コメント要約

(論評に関係ない表現は割愛した。番号は筆者付記。)

(1)今回の出国は密出国罪にあたる。(入管法違反。行政手続違反。いわゆる形式犯。審査をうけないことについて故意過失を問わない。出国審査を受けないことが違法で(不作為犯)、出国行為自体に違法性はない。参照・憲法 海外渡航移住の自由。かっこ書きは筆者注)

(2)ICPO から国際手配されている。(もちろん、日本の司法官憲が逮捕状を請求し、それをもとに国際手配を申請した。)

(3)ゴーンは有価証券報告書重要事項虚偽記載罪と特別背任罪で起訴されている。

(4)ゴーンは海外渡航禁止の保釈条件に違反して国外逃亡し、刑事裁判から逃避した

(5)密出国行為を正当化するため我が国の法制度や運用について誤った宣伝をした。

(6)我が国の司法制度は適正に運営されている。

(7)各国の刑事制度には違いがある。身柄拘束の手続は厳格である。

(8)刑事制度の是非は制度全体をみて評価すべきで一部のみを切り取った批判は適切でない。

(9)我が国の刑事司法制度を世界の人々が正しく理解するよう情報提供し疑問に答える。

(10)ゴーンは主張すべきことがあれば我が国の刑事司法手続きのなかで主張し、裁判所の判断を仰ぐべきである

批判 (1)(2)について

 密出国罪は出国審査をうけない不作為を処罰する形式犯であり、逮捕状を請求し、国際手配までして国内に連れ戻し同罪だけで処罰する例は現在まで本件事件以外には知らない。うがった見方をすれば、連れ戻して裁判にかけることは初めから不可能と知って、あえてゴーンが国外で自由に日本の司法制度の批判をするから、「犯罪者のくせに、司法制度を批判している」との弾劾効果を狙った宣伝である。それこそ司法制度の悪用である。それを証明する例が記者会見前日に逮捕もできない起訴もできないキャロル夫人に対する逮捕状請求とおなじICPO手配である。どこが適正公正な刑事司法手続きなのか。

 ただ、この弾劾作戦は日本の芸能人やマスコミ人には効果があり、「盗人猛々しい」との批判がテレビでは少なからず主張されている。権威主義と儒教思想が根底にある日本人の現状では良く効く薬ではある。

(4)について

 「刑事裁判から逃げた」という表現には極めて悪意がある。これは今後、刑事裁判を中止または停止させる底意があり、ゴーンの「正しい手続が保障された公正公平な裁判を望む」気持ちに真っ向から反する表現だからである。そもそも法務大臣が、裁判所が今後、ゴーンの裁判をどのように進行させるかについて、口を出しているのだから、司法権への敬意など微塵もない。このようなことを「語るに落ちる」という。

(5)について

 正当化とは具体的に何を意味するのか。まさかゴーンが無罪を主張していると理解しているのではあるまい。発言によれば、ゴーンは違法行為であったことは認めているから、無罪の主張はしていない。ただ、自分の個人的人権や家族の権利を守るためにはやむを得ない密出国であった(情状の弁解)といっており、事実、日本ではできなかった、自由な反論批判の記者会見を開いた。この一連の経過を目の当たりにしながらなお、正当化と批判することは、まったく事実の経過を無視した「聞く耳持たない」評論である。

 「誤った宣伝」という非難は誰が見ても具体性のない批判である。ゴーンの記者会見を聞いた筆者にはどの批判についても直ちに「誤った」と理解できるものはなかった。森法相はコメントの信頼性を高めるためにも、ゴーンの誤った宣伝を具体的に指摘すべきである。

(8)について

 この文章の主張は二重の意味で不適切である。1つは「切り取った一部」の意味が不明であること、2つは、これがより本質的で、刑事司法手続きの例え一部にすぎない部分であっても、人権侵害や違法部分があってはならない。何という馬鹿げた主張であるか驚きを禁じ得ない。ただ、一部にはゴーンの指摘する不正があることを認めたことになる。

(10)について

 この主張は、森法相の当該コメントの前から散見される多くの人々の主張である。これはある意味「聞く耳をもたない」論理であり、とにかく日本の刑事司法は絶対的に正しいことを前提にしているため、実際にひどい迫害と権利侵害にあった人にとっては「開いた口がふさがらない」論理となる。これはもはや問答無用の論理であることを自覚してほしいものである。

 ただし、一国の法務大臣がこのような論理で世界に我が国の司法制度の公正性を宣伝しても、世界のだれからも受け入れられないことだけは指摘しておく必要がある。

【凡学 一生】

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