2024年05月01日( 水 )

豆腐食文化で貢献する経営理念は何処へ行った「粉飾決算の横行」~(株)梅の花

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 梅の花グループは(株)梅の花および子会社8社ならびに関連会社2社で構成され、外食産業では「湯葉と豆腐の店 梅の花」「和食鍋処 すし半」、テイクアアウト事業では持ち帰り寿司「古市庵」を展開している。加えて百貨店での小売事業を強化してきた。創業者である梅野重俊氏の「ヘルシー豆腐食文化で尽くす」理念経営の支持層を固めて事業発展をはたし、上場までこぎ着けてきた。

 そこに「不適切な会計処理」という指導がなされた。一体、梅の花グループに何が起きているのか。「不適切な会計処理」というのは意味不明。わかりやすく『粉飾決算の画策』と読んだ方がわかりやすい。

基幹店は大繁盛しているが

 同社のHPに記載している梅野会長のメッセージから紹介してみよう。すばらしい経営理念の文言がちりばめられており感動させる。梅野会長の顔写真は清々しさを強烈に伝える表情をしている。1点の曇りもない顔つきである。「さすが理念経営の見本の経営者」という印象を与えてくれる。

梅の花コメント
梅の花コメント
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 まずは現場となる、梅の花の基幹店にうかがってみた。福岡市西区にある「梅の花 西の丘店」は高台に位置し、周辺には高級住宅が立ち並んでいる。立地条件は最高。この店は玄関からも一流料亭の雰囲気を醸し出している。「日本伝統の食材をベースに四季折々の旬の素材を提供する創作懐石料理」と謳っているだけあって、店づくりにはこだわりがある。「だからこそ顧客が押し寄せて来るのか」と納得できる。

 週末の土曜日に予約を入れると「20時しか空いていません」と告げられた。「17時ごろ電話してみよう」と思い直して予約電話を入れたが、「もう満席になりました」とのつれない返事。翌日曜日も17時に申し込んだのだが、これまた満席である。おそらく少なくとも前日に予約を入れないと思いが叶わないのであろう。ある程度の所得階層には支持を得ているといえる。同じことはサラリーマン層対象の店でもいえる。天神店にも2回、正午前に飛び込みで行ったが、いずれも「予約により満席」として断られた。

 都心部、郊外それぞれに繁盛しているのになぜ、不適切な会計処理(粉飾決算操作)が生じたのか?

第三者委員会が成立、そして調査発表

 第三者委員会の調査を読み解くと2019年4月期の決算手続きが発端である。会計監査担当者から「同社店舗に関する固定資産の現存判定に、おかしな操作がある」という指摘があった。要は店舗の固定資産償却を少なめになるよう操作していたということであろう。赤字決算を隠す常套手段である。指摘された同社は、19年6月26日に第三者委員会を設置して2カ月の調査を経て8月28日に発表した。

 不適切な会計・粉飾処理が行われるようになったのは、09年9月期決算からだと指摘されている。前期に大幅な赤字が生じたため、「2期連続で巨額の赤字を計上すればどうなるのか?」と不安に駆られて不適切な会計処理に走ったと動機の説明がなされている。不安とは銀行からの厳しい対応、世間体の悪さなどを気にした対応であったようだ。このとき、梅野会長はどう指示を下したのだろうか。また、理念経営とのかい離に悩んだのであろうか。

 しかし、不適切な操作が10年にもおよんだことは驚きであるが、第三者委員会の報告書では会社ぐるみでなく、経営計画室の個人プレーで行ったとされている。梅野会長がまったく関与していないとは考えられない。ただし、経営者の強いリーダーシップの影響下で担当者が忖度したものという意見も述べられている。冒頭で爽やかな代表メッセージを紹介したが、何か白々しさを覚える。経営理念を語る水面下では粉飾決算操作を10年間、画策し続けていたのである。

 結果、19年度の決算において特別損失は減損損失15億328万円(大半が店舗固定資産償却の評価損)を加えて16億3,625万円となり、当期利益赤字9億8,169万円という大赤字となった。「これが上場会社の統治・統制なのか!」と批判したくなる。同社の財務内容が抜群であれば急場を凌げるであろうが、借入168億円(2019年4月期において)を背負っての繰り返しである。

 この取締役メンバーで経営改善ができるのか?

【改善項目に対する取締役の現状】
代表取締役兼CEO:梅野重俊(創業者)
代表取締役兼COO:本多裕二(18年9月就任)
取締役相談役:梅野久美恵
取締役執行役員:上村正幸、村山芳勝、鬼塚崇裕
取締役監査など委員:山本治(常勤)
社外取締役監査など委員:森忠嗣(エイチ・ツー・オー リテイリング常務)、荒木勝(公認会計士)、藤本宏文(元西日本シティ銀行専務)

 これで組織改革が対応できるかどうかは不明である。

今後の業績の見通しは

 さて、第三者委員会の報告を受けて同社が経営改善に乗り出し、業績回復をはたしたとなれば「ハッピー、ハッピー」となるのであるが、現実は甘くない。20年上半期は売上高160億4,845万円、経常赤字5億4,768万円になる。年換算でいえば10億円以上の通期赤字が見込まれる。赤字の理由として「夏場の天候不順で来客数が減った」と記載されている。

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 業績不振を言い訳にするのは打つ手がないときの定番である。打開策が皆無状態といえる。最悪なのは売上不振で、これを明確に発表すべきである。前期と売上比較してみると、19年4月期は7カ月決算で194億9,960万円であるから12カ月換算で334億2,789万円、今期は320億9,690万円と約13億円の売上ダウンである。確かに前期は冬場、今期は夏場の売上の違いがあるが、20年第3四半期分の統計が集まれば大勢は判明する。

 ここで肝心なことは、売上不振の根本的な原因を究明すべきである。まずは(1)粉飾決算を積み重ねてきた事実が公になり、固い顧客層(理念に共鳴していた層)の嫌気離れである。(2)社内にも倦怠感が充満して「接客にマイナスを与えているのではないか」という仮説を立てての組織改善が遅れているということであろう。

 この核心的な解決を当経営陣たちが達成できるとは思えない。20年4月期の動向次第では、大変革を迫られるであろう。

【青木 義彦】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:梅野 重俊
所在地:福岡県久留米市天神町146
設 立:1990年1月
資本金:50億8,294万円

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