2024年04月18日( 木 )

豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計(5)

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東京都の建築確認審査は建築基準法のみをチェック?

 東京都の「建築基準法には鉄量の規定がない」との主張にも関連するが、マスコミからの「東京都の建築確認審査において 建築基準法以外の法令・規準・条例等を審査の対象とするのか?」という質問に対して 東京都は以下のように回答している。

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 東京都の「建築確認においては建築基準法以外の法律への適合はチェックしない」という回答は建築確認の実態とかけ離れた 乱暴な主張である。

 建築基準法第6条では、建築確認について、「その計画が建築基準関係規定、及び、条例、その他、建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律、並びに、これに基づく命令、及び、条例の規定で政令で定めるものに適合するものであることについて、建築主事の確認を受ける」ことを義務付けている。

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 建築基準法第6条に示された「条例、その他の法律、命令」などは建築基準法ではない。また、「建築規準関係規定」については建築基準法施行令第9条に示されているが、建築確認においては、建築基準法以外の消防法などの法律に適合していることを確認しなければならないとされている。

 実際の建築確認審査の現場においては、建築基準法以外の法令・規準・告示・条例などにも適合していなければ、確認機関から合理的な説明及び是正を求められ、それら全ての規準等をクリアできなければ、建築確認済証が交付されることはない。

 仮に、東京都だけが、建築基準法のみをチェックし建築基準法以外の関係規定をチェックせずに建築確認を行っているのであれば、建築基準法以外に不適合な項目を抱えていても建築確認済証を交付された物件の実例を示していただきたいものである。

 建築基準法は細かい数値などを定めている法律ではなく、いわば憲法のような存在である。具体的な基準・規準・規定などは、建築基準法施行令などの法令や告示、条例、命令・通達等により規定されており、これらを解説した文献が国土交通省監修の建築物の構造関係技術基準解説書であり、建築確認審査の際に技術基準解説書を逸脱した設計の場合には合理的な説明を求められ、合理的な理由がない場合には設計の補正をし、適合させなければ建築確認済証が交付されない。

 建築の専門家は、このような解説書やガイドラインを守り、設計を行うのである。したがって、「鉄量のことが建築基準法に規定されていないから鉄量が不足していても問題ない」などという東京都の反論は論外である。

 「構造計算適合性判定機関も、国の建築基準法が定めた最低限の基準しかチェックはしない」という東京都の回答があり、これは東京都の全ての判定機関の実態を東京都が説明したものと理解する。

 しかし、例えば、福岡県や愛知県の適合性判定機関では、判定の目安である判定事例集に、「鉄骨鉄筋コンクリート造柱脚が非埋め込み形である場合、保有水平耐力計算のDs値は鉄筋コンクリート造としてDs値を決定すること」と明記されており、これが守られていなければ、もちろん構造計算の修正を求められる。東京都の回答が正しいと仮定すれば、東京都の判定機関と較べ、福岡県や愛知県の適合性判定機関のチェックは過剰であり、建築主に余計な建築コストを負担させていることになる。

 建築確認業務は「羈束行為(行政庁の行為のうち自由裁量の余地のない行為)」である。東京都と福岡県・愛知県の間で、法的手続きとして行政の行為に差が生じてはならない。各地の行政庁の間で、建築確認審査に大きな差が生じている事態は放置できないので、国土交通省が指導し、早急に統一を図るべきである。

(つづく)
【桑野 健介】

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