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2020年02月03日 15:25

【変わる地方銀行】フィンテック対応でSBIと提携~筑邦銀行

 ネット金融大手のSBIホールディングス(SBIHD、東京都港区)と筑邦銀行(福岡県久留米市)が資本業務提携する。ネット金融と地方銀行の組み合わせは、九州の地銀再編の行方もさることながら、地銀が金融、保険、証券といった枠を超える「フィンテック」(金融と技術の融合)への対応能力を高めて生き残れるかを占うテストケースといえる。

■地銀とネット金融の「親戚づきあい」

SBIホールディングスと筑邦銀行による九州初の「共同店舗」。顧客サービスの相互補完を狙う=久留米市東櫛原町
SBIホールディングスと筑邦銀行による九州初の「共同店舗」。顧客サービスの相互補完を狙う=久留米市東櫛原町

 久留米市東櫛原町の住宅と商店が混在する道路沿いに、筑邦銀行とSBIHDの提携を象徴する建物がある。「筑邦銀行SBIマネープラザ」。筑邦銀行とSBIグループの「SBIマネープラザ」が運営する共同店舗で、顧客の資産運用相談に応じている。

 この共同店舗は18年6月のオープン。SBIにとって地銀との共同店舗は全国で清水銀行(静岡市)に次ぎ、九州では初の試みだった。

 金融、保険、証券の垣根が低くなったとはいえ、銀行が窓口で扱える金融商品は信託投資や保険など流動性の低い商品に限られる。一方、ネット証券が扱える金融商品は流動性が高く、顧客の信用を得やすい対面販売の場がほとんどない。共同店舗はこうした弱点を相互補完できる形態で開店後2年以上が過ぎた。

SBIホールディングスとの業務・資本提携の道を選んだ筑邦銀行本店=久留米市諏訪野町
SBIホールディングスとの業務・資本提携の道を選んだ筑邦銀行本店=久留米市諏訪野町

 「SBIグループとは2年以上の付き合いがあり、お互いに信頼関係ができていた。SBIから『少し株を持たせてほしい』と話があった。一緒に協力しよう、親戚づきあいをしようということ」。1月17日、筑邦銀行本店で提携を発表した佐藤清一郎頭取はそう語り、共同店舗での“付き合い”もSBIの資本参加を認める判断材料の1つになったことを明かした。

 今年4月には2店舗目の共同店舗を福岡市の西鉄薬院駅近くの「ちくぎん福岡ビル」に開く。同ビルには筑邦銀行の福岡営業本部が入っている。ここでも主地盤の久留米市と同様の運営を考えているという。

 筑邦銀行はさらに、電子版の地域通貨の発行構想も温めている。昨年8月、福岡県宗像市で開かれた宗像環境国際会議で、スマホ決済可能な「常若(とこわか)通貨」を会議会場や周辺の飲食店など地域限定で発行、流通させる実証実験を実施した。通貨の有効期間は9日間。九州の金融機関初の試みだった。

 モデルは、岐阜県の飛騨信用組合(高山市)が発行する電子版の地域通貨「さるぼぼコイン」。営業エリアの高山市、飛騨市、白川村で使えるスマホ決済サービスだ。利用者は組合本支店などのチャージ機でスマホにチャージ。加盟店が置く二次元コードをスマホのカメラで読み取って決済。通貨の有効期間は1年。市税の納付もできる。

■地銀も対応を迫られる「フィンテック」の脅威

 18年6月施行の改正銀行法は、銀行の勘定系システムの原則公開を義務付けた。同システムは顧客との取引状況が一目瞭然になる、銀行のいわば“心臓部”。金融庁への登録が条件とはいえ、非金融機関へのデータ開放は金融業界の仕組みや考え方を一変させた。

 流れを加速するのが「フィンテック企業」と呼ばれる通信技術を金融に採り入れる新興勢力。銀行の預金、融資、為替の三大業務の見直しを迫る。中でも「ブロックチェーン」と呼ばれる分散型台帳技術はフィンテックの核心とされる。

 ブロックチェーンは、コンピューター間の複数の取引履歴(取引データ)をまとめた「ブロック」を、連なる鎖(チェーン)のように保存する状態。分散管理することで安全性を担保する。

 各銀行のコンピューターは各自のシステムでデータ(台帳情報)を管理し、データ形式や管理方法はまちまち。現状ではデータの連携は容易ではないが、ブロックチェーン上で情報共有する仕組みにすることでそれが可能になる。台帳情報更新の際は、参加者間で合意して内容の正当性と一貫性を保って不正を防ぐしくみだ。

 「常若通貨」もこうしたデジタル技術を駆使する。筑邦銀行は18年7月から、分散型台帳技術の情報収集を目的に、岩手銀行(盛岡市)が主導する「金融サービスプラットフォームコンソーシアム」にも参加している。

 ただ技術開発には巨額の資金とIT人材が要る。実証試験で筑邦銀行は分散型台帳技術を採用した。独自技術を開発する「Orb(オーブ)」(東京都港区)が支援し、通貨管理や決済情報の基盤システムは九州電力が提供した。「Orb」はSBIHDの出資先でもある。

 「何でもかんでも自前ではできない。自分たちがやれること、外部の力を借りることをしっかり区別しないといけない」。SBIとの提携発表で、佐藤頭取は迷わずそう話した。

■生き残りを模索する地方銀行~最適解はどこに

 銀行は、融資と預金の金利差で儲けるのがビジネスモデルだった。人口減少に歯止めがかからず超低金利は長期化。その一方で銀行との付き合いは“店舗よりスマホ”の時代。現行の通信速度の100倍とされる5Gの普及が、さらに後押しするとみられる。

 SBIHDは全国の地銀などを傘下に置く⾦融持ち株会社構想を持つ。筑邦銀⾏は素早いビジネスモデル転換を狙って、新興勢⼒のネット⾦融をパートナーに選んだ。⾃主性を保ちつつ経営基盤の強化も視野に入れているとみられる。こうした“両にらみ”戦略が「最適解」になるかは即断できないものの、悩める地銀の生き残り策として新興勢力やフィンテックとの連携が選択肢に上ること自体は、もはや止められない潮流となりそうだ。

【筑紫次郎】

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