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2020年02月21日 13:00

アベノミクスがもたらす「資本栄えて民滅ぶ」国の未来(4)

経済学者・評論家 植草 一秀 氏

 第2次安倍内閣が発足して丸7年の時間が経過した。企業利益は倍増し、株価は3倍水準に上昇し、メディアがアベノミクス成功とはやし立てるが民の竈の火は燃え尽きる寸前だ。2019年の出生者数は初めて90万人を下回った。民を温める政策に転じなければ日本崩壊は近未来の現実になる。若者が未来に夢と希望をもてない国に、夢と希望の未来は到来しない。

経済政策大転換なければ大崩落へ

 日本経済が民主党政権時代を上回る超低迷を続けているのに、企業収益が倍増してきたのは、労働者に対する分配所得を圧縮してきたからだ。労働者1人あたりの実質賃金は第2次安倍内閣発足後に5%も減少した。民主党政権時代でさえ横ばい推移だった。

 労働者に対する分配所得を際限なく圧縮してきたからこそ、経済超低迷期の企業利益倍増が実現した。その利益増大を反映しているのが株価上昇である。つまり、株価上昇は経済全体の推移を映しているのでなく、労働者の苦しみを映している。

 アベノミクス下で雇用者数が増加し、有効求人倍率が上昇したのは事実だ。しかし、増えた雇用の大半が非正規労働だ。労働者の分配所得全体が圧縮されたが労働者の数だけが増えた。そのために1人あたり実質賃金が5%も減少した。雇用者数が増えたことは経済政策成功としてアピールできる代物でない。

 消費税増税は社会保障拡充や財政再建のためだと説明されてきた。しかし、税収推移の現実を見ると、これも真っ赤な嘘だ。消費税が導入された1989年度から2019年度までの31年間の税収推移を見ると、消費税収累計397兆円に対して、法人三税減収累計額298兆円、所得税・住民税減収累計額275兆円である。消費税で397兆円増税して、法人税と所得税・住民税で573兆円減税を実行してきたというのが現実の姿だ。

 労働者は賃金を圧縮されたうえに巨大な税負担を押し付けられてきた。その一方で利益が倍増した大企業に対して法人税負担を大幅に引き下げてきた。富裕層は金融所得の分離課税で著しく優遇されたままである。 

 さらにいえば、消費税増税で社会保障拡充のはずが社会保障も無残に切り刻まれてきた。安倍内閣は要介護1、2の生活援助サービスを保険給付の対象から外し、介護保険の利用者負担を原則2割に引き上げることを検討している。

 公的保険医療を利用する際の被保険者本人窓口負担は1997年3月までは1割だった。ところが、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年4月に窓口負担が1割から2割に引き上げられた。さらに、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4月から、70歳に達した高齢者の窓口負担が1割から2割に引き上げられた。

 社会保障制度を拡充するための消費税増税だと説明してきたのだから、消費税増税にともない医療費の本人窓口負担を引き下げるなら理解できる。ところが、現実には消費税増税とともに医療費本人負担引き上げが実行されてきた。

 日本の人口全体に占める生活保護制度利用者の比率は2%に満たない。ドイツや英国の5分の1の水準だ。日本の生活保護利用率が著しく低い最大の理由は、生活保護を利用する要件を満たしているが制度を利用していない者が8割を占めているからだ。各種「いやがらせ」が存在して、制度の利用が妨げられている。

 アベノミクスがもたらす帰結は「資本栄えて民滅ぶ」である。2020年の日本経済は米中貿易戦争の帰趨に左右される世界経済動向から強い影響を受けるだろう。米中対立が緩和され、世界経済が緩やかに回復するなら、日本経済にもプラスの影響がもたらされるかもしれない。

 しかし、日本経済には本質的な重大問題が残存している。民を苦しめ、資本だけを優遇する政策の延長上に浮上するのは人口減少加速と消費需要の急激な減少である。これが日本経済を根底から崩壊させる原因になる。2020年に政権退場と経済政策大転換が実現しなければ日本の近未来に絶望が到来することを避けられない。

(了)

<プロフィール>
植草 一秀(うえくさ・かずひで)

 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、スタンフォード大学フェロー、早稲田大学教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、オールジャパン平和と共生運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続している。経済金融情勢分析を継続するとともに、共生社会実現のための『ガーベラ革命』市民連帯運動、評論活動を展開。政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。

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