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2020年02月27日 07:00

縮むニッポン、健康寿命延伸で「生涯現役社会」は実現するか(中)

 第201通常国会が令和2年1月20日に召集され、安倍晋三首相は衆参両院の本会議で行った施政方針演説のなかで、内閣の最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障制度に関し「本年、改革を実行する」と表明した。2025年、日本では団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に突入し、社会保障費の急増する見通しだ。年金改革とともにいよいよ待ったなしとなった国民皆保険の抜本的な見直しが本格的に始まることとなる。

健康寿命延伸市場規模2030年に37兆円へ

 今では当たり前になった「健康寿命」。実はこの言葉の歴史は意外と浅い。平均寿命は寿命の長さを表しているが、一方の健康寿命は日常的・継続的に医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し自立した生活ができる生存期間。WHO(世界保健機関)が2000年にこの概念を提唱し、健康寿命が高いほど、寿命に対する健康寿命の割合が高いほど、医療費や介護費の削減に結び付くとされている。

 日本では、安倍晋三首相が2013年にアベノミクスのなかで掲げた新たな成長戦略「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」の筆頭課題として「国民の『健康寿命』の延伸」をあげ、これによってこの言葉が日本の表舞台に登場した。

 日本再興戦略では、目指す社会像として「予防から治療、早期在宅復帰に至る適正なケアサイクルを確立」「効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し老いることができる社会に向け、健康寿命伸長産業の育成、予防・健康管理の推進に関する新たな仕組みづくり」が明記され、健康寿命延伸市場規模を当時の16兆円から2020年には26兆円、そして2030年には37兆円にするとされた。

 さらに2015年10月に一億総活躍国民会議が立ち上がり、2016年6月には「ニッポン一億総活躍プラン」が取りまとめられた。働き方改革が一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置づけられ、2016年9月に「働き方改革実現会議」が立ち上がり、翌2017年3月に「働き方改革実行計画」、そして働き方改革関連法案が成立した。

 並行して一億総活躍社会実現のために、人生100年時代を見据えた経済社会のあり方を構想すべく、2017年9月には「人生100年時代構想会議」を立ち上げ、2018年6月に「人づくり革命?基本構想」が取りまとめられている。

アベノミクス第三弾、生涯現役社会の実現

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 2018年、安倍首相は働き方改革の第二弾として「生涯現役社会」の実現を掲げた。これは事実上「アベノミクス」第三弾となり、人生100年時代の到来に備えて、今までパンドラの箱であった高齢者就業に対していよいよメスが入った。

 それまでの調査では高齢者の8割が70歳以降も働くことを希望しており、働く高齢者ほど健康な状態である人が多く、医療・介護費が低いということもわかっていた。そこで、高齢者雇用のさらなる促進や健康寿命の延伸などに向けた具体策が検討されることになった。

 高齢者を65歳以上と定義すると、2012年は1人の高齢者を3人弱で支える“騎馬戦”型の社会であったが、2017年には1人の高齢者を2.1人で支える状態になり、2050年には1人がほぼ1人を支える“肩車”型の社会になってしまう。

 これを、高齢者を75歳以上とすると、2017年には1人の高齢者を5.1人で支える状態となり、2050年でも1人支える人数が2.7人の“騎馬戦”型に戻り1人あたりの社会保障負担も軽くできる。

 もちろん高齢者就業にはメリットだけでなくデメリットもある。しかし、今の65歳は50年前の65歳とは見た目も健康状態も大きく異なり、高齢者の定義が現状に合わないことも事実だ。ちなみに、日本老年学会と日本老年医学会は2017年に75歳以上を「高齢者」、65~74歳を「准高齢者」とする提言を発表している。実は世界の多くの国で65歳以上が高齢者と定義されているが、医学的、生物学的に明確な根拠はない。

未来投資戦略2017、高齢社会の近未来像

 2017年6月に発表された「未来投資戦略2017~Society 5.0の実現に向けた改革~」においても「健康寿命の延伸」がトップで登場。ここでは、新たに高齢社会の近未来像が具体的に明記された。

 団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年には、ビッグデータ・AI(人工知能)など技術革新を最大限に活用し、最適な健康管理と診療、自立支援に軸足を置いた介護など、「新しい健康・医療・介護システム」が確立、健康寿命をさらに延伸し世界に先駆けて生涯現役社会が実現しているとされている。

 この未来投資戦略の肝はデータ・AI・IoT等の活用だ。たとえば、これまでばらばらだった患者の健診・治療・介護情報が統合され、遠隔診療により通院負担が軽減されたり、最適なケアプランにより要介護度が改善されたり、さらには介護現場でのロボットやセンサー等の活用によって、夜間の見守りなどの職員の厳しい労働環境は大幅に改善されるといった方向性が示されている。

 2018年に施行された「次世代医療基盤法」において、匿名加工された医療情報の医療分野の研究開発への利活用を進め、医療保険のオンライン資格確認および医療などへのID制度の導入について規定されたことを受け、2020年度からは研究者・民間・保険者などが健康や医療、介護のビッグデータを個人の履歴として連結し分析するための「保健医療データプラットフォーム」も本格稼働する予定だ。

(つづく)
【継田 治生】

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