2024年02月26日( 月 )

水と油?!不動産とテックは融合できるか GAテクノロジーズの例――

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(株)GA technologies
代表取締役社長 CEO 樋口 龍 氏

代表取締役社長 CEO 樋口 龍氏
代表取締役社長 CEO 樋口 龍氏

業界が抱える課題

 ――現状の不動産業界が抱える課題について、どのようにお考えですか。

 樋口 弊社が考える不動産業界の課題は、(1)「消費者と業者間の情報格差」、(2)「ICT技術の遅れによるアナログな業務体系」、(3)「中古不動産の低い流動性」です。

 まず(1)について、不動産は“一生に一度の買い物”といわれるほど、消費者の不動産取引経験は少なく、消費者と不動産業者との間に大きな情報格差が存在しています。たとえば、不動産ポータルサイトで見られる「おとり物件」や誤情報(徒歩分数表記の誤り、新駅などの情報がアップデートされていないなど)の多さを見ても顕著でしょう。実際に「グローバル不動産透明度インデックス」によると、日本はOECD加盟国37カ国中17位と、ほかの先進国の不動産サービスの現状と比較しても、明らかです。

 次に(2)について、今なお不動産取引においては、紙の契約書やFAX、電話でのやり取りが主流であり、物件情報やユーザー情報のデジタル化、データベース化は遅れています。一方で、住宅購入層といわれる30~40代や、賃貸居住者の主力となる20代は、“デジタルネイティブ層”といわれる、オンラインでの消費行動に慣れ親しんだ世代です。彼らが不動産の契約主体となっていくこれからの将来において、アナログな不動産取引の転換は必然ともいえます。

 最後に(3)について、空き家問題が指摘される一方で、今なお日本国内では“新築神話”を唱える人は少なくありません。少し前のデータですが、国内の不動産流通全体に占める既存住宅(中古不動産)取引の割合は14.7%と、欧米(米90.3%、英71.1%、フランス59.4%)に比べて非常に小さいのです。近年では、宅建業法の改正によるインスペクションの活用促進や、中古不動産価値評価の見直しにともなって状況は改善しているものの、さらなる改善が求められているのが現状といえます。

リアルとテックを1チームに

 ――不動産業界と不動産テック業界には、まだまだ大きな壁があるように感じます。

 樋口 PropTech(不動産テック)には、ユーザーのサービス体験はもちろん、組織づくりにもテックとリアルの融合がカギになります。PropTech企業は、不動産事業からスタートしてテクノロジー化を進めるタイプと、システム開発を行う企業が不動産領域に進出するタイプの2つに大きく分けられます。

 前者のタイプの多くは、社内にエンジニアもいなければ、テクノロジー活用できておらず、システムづくりはベンダー頼りでうまくいかないといった問題を抱えていました。また、後者も同じように、業界の知見や不動産ならではのビジネスの進め方がわからず、なかなかうまくいかないといった問題がありました。PropTechが注目され始めた4~5年前には、こうした問題が散見されていました。

 近年では、組織内に両者のスペシャリストを抱えて、事業を進めるケースが増えています。弊社でも、エンジニアと一緒にサービス構築や改善を進める体制づくりを図ってきました。我々も不動産販売事業(リアル)からビジネスを始めましたので、不動産事業者や顧客が直面する不便さや問題などに、同じく直面してきたのです。こうした課題に対しては、自社でエンジニアを採用することで、現場の声を反映したプロダクト開発を実現してきました。

 さらに、AIやブロックチェーンなどの専門組織も立ち上げ、自社内で研究開発ができる体制づくりにも取り組んできました。不動産の現場で、エンジニアと同じチームでサービス構築や業務改善に取り組むことで、早いサイクルでPDCAを回すことができるようになりました。

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 ――不動産テックへの関心は、より高まっているようですね。

 樋口 課題は多々あるものの、深刻化する人手不足や働き方改革を背景に、関心は高まっています。国土交通省も、2019年10月1日より、賃貸では電子化に関する社会実験が、また売買でも個人向け取引でのIT重説の社会実験が開始されるなど、行政による不動産取引の電子化が進み始めました。

 19年版の「不動産テックカオスマップ」によると、PropTechサービスが305個に達したといわれており、日本で初となるPropTechに特化したベンチャーキャピタル「デジタルベースキャピタル」の設立が発表されました。最大10億円規模を目標とするPropTech特化ファンドも組成されています。

一気通貫だからできる

 ――玉石混交の不動産テック業界のなかにあって、御社の強みは何でしょうか。

 樋口 「不動産の世界に足りなかったものすべて。」をコンセプトに「RENOSY」を展開しています。これは、AIやRPAなどのテクノロジーを活用した各種サービスを通じて、これまでにない不動産体験を提供するということです。

 一般的な消費者にとって、スムーズに不動産取引を完結することは困難です。不動産購入のプロセスは、大きく分けると「きっかけ・学習」「検索」「検討・契約」「アフターフォロー」の4つで、最初の2つを一般的な不動産プラットフォームが、後半の2つを不動産事業者が担っているのが現状です。

 このような分業型のサービス提供では、事業者によって問い合わせ対応やアフターフォローなどの質にバラつきが出てしまったり、業者間のやりとりが不透明になってしまったりと、必ずしもユーザー利便性の優れた体験ということはできませんでした。

 RENOSYは、4つのプロセスを一気通貫で提供することで、顧客のスムーズなサービス利用と高クオリティなユーザー体験への変革を追求してきました。これにより、検索、購入、居住(購入後の管理)、リノベーション・リフォーム、売却の各フェーズにおいて、不動産に関するデータを収集することが可能となります。これらのデータを活用した新たな付加価値の創出が、RENOSYの次の狙いです。

【長井 雄一朗】

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