2024年04月20日( 土 )

2016年発達障害者支援法が改正 雇用障害者数、過去最高を更新(4)

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 障害者の職業の安定を図る「障害者雇用促進法」が改正され、障害者雇用率(法定雇用率)の引き上げと、雇用対象となる障害者の範囲に「発達障害を含む精神障害者」が新たに加わった。厚生労働省が発表した2018年度の民間企業による障害者の雇用状況は、雇用障害者数・実雇用率ともに過去最高を更新。なかでも発達障害を含む精神障害者の雇用数が急増している。企業は発達障害者の雇用にどう向き合えばいいのか。

発達障害は治らない、「個性」ととらえる

 発達障害は既述したように、生まれながらに脳機能に何らかの不具合があることで起きる障害である。そのため「治る」ということはない。程度の差はあるものの、一生その特性が続くと考えられている。

 宮尾氏はいう。

 「従って、治療や軽減させることを目指すのではなく、障害を『個性』ととらえて、成長の過程にあった適切なサポートを行うことが重要となってきます。発達障害の子どもも、日々成長していきます。多少の偏りはあるかもしれませんが、誰もがすばらしい可能性を秘めています。適切な環境で適切なサポートを受けることによって、その可能性を広げ、優れた能力や長所を伸ばしていくことができます。前述したように、国も発達障害者支援法という法律をつくって、支援に積極的に取り組もうとしています。また、発達障害の子どもたちに適した『特別支援教育』を実践する学校や学級も増えています」

 たとえばASDの人は、集中力が高く、普通の人なら敬遠しがちなルーティンワークや緻密性を必要とする作業が得意といわれる。

 宮尾氏が続ける。

 「ADHDの人も、高いエネルギーと行動力があり、発想力が豊かでいろいろなアイデアを出すのが得意です。好きなことや得意なことをしている時は、目を見張るような集中力を見せることがあります。それぞれに得意な分野や向いていることがあるのです」

 発達障害のある人は、一般の従業員と比べれば明らかにミスが多く、問題行動を起こしがちといわれる。仕事の現場では、苦手なことやうまくできないことばかりに目がいき、それに対する支援の方法ばかりを考えがちである。

 宮尾氏はいう。

 「しかし、ASDの人もADHDの人も、自分はうまくできていない、ミスをしたということはわかっています。注意を受けるたびに、『どうして自分はうまくできないのか』と自信をなくし、落ち込んでしまう場合もあります。それぞれに得意な分野や向いている仕事を任せてみて、思わぬ頑張りをみせたり、小さな成果を上げたりしたときには、ストレートにほめてみましょう。上司からほめられる体験は、本人の意欲を引き出し、仕事のパフォーマンスにもつながっていくでしょう」

 発達障害者の支援とは、職場にとって「必要な人材」にしてあげることが最終目標である。

(了)
【古木 杜恵】

<プロフィール>
宮尾 益知(みやお・ますとも)

 東京都生まれ。徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。
『発達障害の基礎知識』『職場の発達障害』など多くの著書がある。専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学、発達障害の臨床経験が豊富。

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