2024年05月03日( 金 )

潜在市場を掘り起こす 時間貸しプラットフォーマー

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 2019年12月、創業から6年での東証マザーズ上場を果たした(株)スペースマーケットは、民泊やライドシェアなどで注目されるシェアリングエコノミーにおける「空間の時間貸し」という分野で注目されている。同社代表取締役社長・重松大輔氏に、上場や今後の方針について話を聞いた。

マザーズ上場

 ――昨年12月に、創業から6年で東証マザーズ上場を果たされ、株価も公募価格を上回る水準で推移しています。

 重松 創業当時から、東京オリンピック前の2019年の上場を目標としていました。通過点でしかありませんが、1つの目標を達成できたということは、スタッフが非常に優秀でいてくれたという部分が大きく恵まれていたと感じ、大変感謝しています。株価については、どちらかというと公募価格が保守的だったことが要因の1つだったと思います。

 ただ、評価していただいていることは素直に嬉しいですし、新しい市場への期待値を含めての株価だと思います。周りの方々を含め、世の中から期待の声をいただいていることで、社会の公器として身の引き締まる思いを感じています。

 まずは、「スペースシェアリング」というものを世の中に広げていきたい。あくまでも、上場は手段です。スペースシェアリングというものが、以前より浸透してきたのは感じていますが、まだまだ認知度は低いと思いますので、上場を機に、もっともっと業界を盛り上げていきたいです。

KPIは稼働件数×単価

 ――御社のKPI(重要経営指標)は、スペース件数と平均月額利用料を掛けたもの(GMV)ですが、今後GMVを伸ばすには何が必要だと考えていますか。

 重松 より多くのスペースが稼働していることが重要なので、利用スペースの単価と回転率を重視しています。そのためにも、ホスト(スペース提供者)の方々に、より質の高いスペースを提供していただく必要があります。スペースの質が高ければ、利用者の満足度も高いのです。GMVは、市場の活性化を目指すうえで追い求めなければならないことで、プラットフォーマーとして大切な指標だと自覚しています。

 スペースマーケットで取り扱いが多いのは、時間貸しによる収益最大化の効果が高い築古の物件です。一般的な賃貸市場で眠っていた価値を、時間貸しであれば掘り起こすことができる場合も少なくないのです。ほんの数時間利用する方は、躯体や外観はあまり気にしません。目的に合った立地や、必要な機能があることが大事なのです。オフィスも好評で、一般的なオフィスビルが稼働していない平日の夜や週末のパーティ需要で利用されています。

 ――借り上げはせずに、マッチングに特化して実施していく方針ですか。

 重松 現状では、そのように考えています。そのため、質の高いスペースとホストをどれだけ増やしていくことができるのか、というのがポイントです。

 ――ホストには、どのような方がいますか。

 重松 ホストの方々は、大きく分けて2つのタイプがいます。事業として本格的に行っている代行業者の方と、遊休資産の有効活用を目的としている方です。前者のほうが4割ぐらいを占めている状況です。物件を紹介する内容(写真や文章)や、オペレーションについて経験値を重ねていただいて、魅力的なスペースを提供するカルチャーをつくっていただくことになると思います。市場が拡大すれば、個人の方の参入もより増えてくるでしょう。

 ――今年はオリンピックイヤーですが、影響はありますか。

 重松 高稼働になりそうです。各種スポーツイベントの、パブリックビューイングならぬ“プライベートビューイング”の人気が出てきています。知らない大勢の人と大きなスクリーンで見るのではなく、仲間内で大画面テレビのあるスペースを貸し切って、自由なスタイルでスポーツ観戦する需要が増えています。

使いやすいサービスへ

 ――強化を検討している部分はありますか。

 重松 オペレーションを効率化するための投資は行っています。AI活用の物件マッチング、レコメンド機能などの強化を図っています。また、問い合わせ対応の効率化については、サービスの改善により、そもそもユーザーの「わからない」を減らすことで問い合わせ自体を減らすこともできます。もっと使いやすいサービスへと改善を重ね、スペースシェアの文化を広げていきたいと考えております。

 ――プラットフォーマーとしての事業領域拡大、もしくは他社との連携についてはどのように考えていますか。

 重松 昨年11月、合計38社と連携して「スペースマーケット・パートナーズ」を立ち上げました。スペースシェアにおける体験価値向上を目的に、デベロッパーなどスペースの開発段階でのパートナー、清掃や飲食サービスなどのパートナーなど、それ以外にも多岐にわたる事業者と連携しています。スペースシェアの周辺市場全体で成長できるよう、引き続きパートナーを増やしていく予定です。

 スペースマーケットでシェアされている物件は東京がメインですが、近畿、名古屋に次いで福岡も重要なマーケットです。当然、福岡は今後強化していくエリアです。そして、アジアを中心に国外にも広げていきたいですね。まずは、日本の皆さまにとって身近なサービスとなるよう、引き続き邁進します。

【麓 由哉】

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