2024年04月19日( 金 )

APAMANグループがサンフランシスコのコワーキングスペースに参入(4)

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fabbit(株)

 世界を席捲するGoogleなどのIT企業が立ち並ぶ米国の西海岸。「IT企業の聖地」シリコンバレーに近く、革新的なサービスで急成長企業を生み出すサンフランシスコの街。サンフランシスコに注目するAPAMANグループのfabbit(株)(ファビット)は、世界に挑戦するスタートアップ企業を支援する新コワーキングスペースを1月23日に開設し、オープニングセレモニーを開催した。米国IT企業はなぜ強いのか。世界を視野に米国展開する企業の動向と展望を見つめた。

1%の成功に向けて革新的な行動が必要

オープニングセレモニーのパネルディスカッション(左から、ステファン・フシェ氏、リカ・ナカザワ氏、ムクル・アガルワル氏、那珂通雅氏)
オープニングセレモニーのパネルディスカッション
(左から、ステファン・フシェ氏、リカ・ナカザワ氏、ムクル・アガルワル氏、那珂通雅氏)

 オープニングセレモニーでは、fabbitアドバイザリーボードメンバーでボードウォーク・キャピタル(株)・代表取締役・那珂通雅氏がモデレーターとなり、「fabbitがどのように日系企業の米国ビジネス展開をサポートできるか」を1つ目のテーマにパネルディスカッションが開催された。パネルディスカッションでは、fabbitアンバサダーのStéphane Fouché(ステファン・フシェ)氏、Rika Nakazawa(リカ・ナカザワ)氏、BootUP Ventures(ブートアップ・ベンチャーズ)の創立者兼最高経営責任者(CEO)であるMukul Agarwal(ムクル・アガルワル)氏が登壇した。

 フシェ氏は、「(合)DMM.com(ディーエムエム・ドットコム)などの日本企業で勤務した経験から、日本とシリコンバレーの文化や商習慣の違いを実感している。スタートアップ企業が文化の壁を乗り越えられるよう、fabbitがゲートウェイとしてサポートしていくことを期待している」と話した。

Rika Nakazawa 氏
Rika Nakazawa 氏

 米国や日本でスタートアップ企業や企業内ベンチャーの投資を仲介しているナカザワ氏は、ソニー(株)で販売戦略を担当した経験をもつ。今は、多国籍チームで世界市場にAR(拡張現実)システムを販売する米国スタートアップ企業のAtheer(アシアー)で事業戦略を担当している。「日本企業は、独自の企業文化と世界に向けた視点をうまく組み合わせることが必要だ。コワーキングの場を提供するとともにリーダーシップを育て、コミュニティをつくることで、fabbitはイノベーションを起こすスタートアップ企業を生み出せるのではないか」とナカザワ氏は話した。

 アガルワル氏は、「これまで100社以上に合計4億ドル以上の投資を行うベンチャーキャピタルを手がけるなかで、何がスタートアップ企業を成功させているかを見つめてきた。そのなかで「いかに世界を変えるか」という目標を定め、自信や決断力、信用を兼ね備え、あきらめない起業家精神をもつことが、国や人種を超えて何よりも大切だと実感した」と語った。さらに、「日本企業はトヨタを始め、今より良くする「改善」に力を注ぎがちだが、米国で市場を拡大するには、1%の成功に向けて革新的な行動をとる必要がある」と話した。

BootUP VenturesのFounder兼CEOであるMukul Agarwal 氏
BootUP VenturesのFounder兼CEOであるMukul Agarwal 氏

 パネルディスカッションでは、さらに「日本の上場企業は約5兆ドルもの現金があるにも関わらず、事業を大きく成長させる投資に回しておらず、資金を十分に生かせていない。大きく投資する経営者はソフトバンクグループ(株)の代表取締役会長兼社長・孫正義氏など少数派だが、どうしたらこの状況を改善できるだろうか」と2つ目のテーマを那珂氏が提案した。

 「シリコンバレーにおける日本のエコシステムがどこにあるかを明確にし、企業がイノベーションを促進させるプログラムを提供し、そして企業とスタートアップの間に適切なパートナーシップ関係を築くことが必要だ」とアガルワル氏はコメント。

 ナカザワ氏は、「リスクを取って新しいビジネスモデルを生み出して成功に導く起業家精神を育てることが必要ではないだろうか。企業内ベンチャーがサンフランシスコでオフィスをもつことも、起業家精神や企業のブランド力を育てるため、ぜひ行動に移してほしい。サンフランシスコは日本に比べて多額の投資も集まりやすく、ビジネスチャンスが広がっている。また、日本の根回しは優れた文化だが、スピードが求められる今の時代では物事を進めるために時間がかかることが気になっている」と語った。

fabbitアドバイザリーボードメンバーの那珂通雅氏
fabbitアドバイザリーボードメンバーの那珂通雅氏

 フシェ氏は、「最近では日本の大企業による買収といったように、日本からのお金が至るところにある。だが、日本の企業は自分たちがやっていることを伝えることが得意でない。そこを生産的なかたちにできれば、多くの可能性がある」と話した。

 那珂氏は「中国と同様に米国には、年間約5万件の国際特許出願がある。だが、日本も技術大国で、米国と同様に年間約5万件の国際特許出願がある。技術力があるにも関わらず、休眠特許が多く、生かせていない。日本がもつ技術力からイノベーションを起こせるよう、fabbitとして支援していきたい」と語った。

 

(了)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 保成
所在地:東京都千代田区大手町2-6-1
   朝日生命大手町ビル3階
設 立:2017年4月
資本金:1,000万円

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