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2020年04月01日 15:00

「天網恢恢疎にして漏らさず」~最終的には東京五輪は中止?(3)

 先日のIOCトーマス・バッハ会長の発言「東京五輪は予定通り」(3月3日)から一転して、3月25日には「東京五輪は1年程度延期する」ことが正式決定した。一貫して人道的立場から「東京五輪」開催に警鐘を鳴らし続けてきた、村田光平元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授に聞いた。村田氏は「最終的には東京五輪は中止になるのではないか」と危惧する。それはなぜか。

 一方、今SNS上で、漫画『AKIRA』(大友克洋著作で1982年~1990年にかけて講談社の漫画雑誌『週刊ヤングマガジン』に連載)の話題が沸騰している。同漫画の1シーンのなかに「東京オリンピック開催迄あと147日」(今年2月28日に相当)という大書された看板が登場、そのすぐ下には黒い文字で「粉砕」、白い文字で「中止だ 中止」と書き込まれているからだ。『AKIRA』は、その高い予言的中率から、欧米の科学者などに隠れたファンが多いことで有名である。

元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授 村田 光平 氏 

汚染水の海洋放出は海洋環境を汚染し漁業者に大きな影響

 とくに最近注目されている問題の1つに放射能で汚染された水「汚染水」(放射性物質トリチウムを含む)があります。東京電力は溶けた核燃料を冷やすために、毎日数百トンの水を原子炉に入れています。また、山側から海側に流れている地下水が原子炉建屋に流れ込んでいます。これらの水は高濃度の放射能汚染水になっています。福島第一原発の敷地内には、汚染水が溜まり続けており、合計で100万トンを超えています。昨年、9月10日の原田義昭環境大臣の発言「(海に)放出して希釈するしか方法がない」が国内外で大きな波紋を呼んだことは読者の皆さまの記憶にも新しいことだと思います。

村田 光平 氏

 今、汚染水の処理は、セシウムとストロンチウムを分離、その後、多核種除去設備(ALPS)で、トリチウム以外の62種類の放射能を分離することになっていますが、2018年9月の東電の報告ではALPSで処理した水のうち、84%が基準を満たしていなかったことがわかっています。また、ALPSでは除去されない、トリチウムは半減期が12年と長く、長期にわたって環境を破壊します。そのトリチウムの危険性は、小柴昌俊先生(ノーベル物理学賞受賞者)や長谷川晃先生(元米国物理学会・プラズマ部会長)などによってすでに指摘されています。国は、海洋への放出を有力な選択肢として検討していますが、それは許されることではありません。汚染水の海洋放出は、海洋環境を汚染し、漁業者に大きな影響を与えることは明確です。地球環境加害国の汚名すら免れません。

「東京五輪は詐欺商品である」という声が、国内外から

 ――それにしても、「東京五輪」は、準備を開始した当初から現在に至るまで、途切れることなく、さまざまなトラブルを重ねてきています。

 村田 13年9月のブエノスアイレスで開かれたIOC総会で20年の五輪開催地が東京に決定してから約7年、東京五輪はトラブルだらけといえます。最初のトラブルは誘致演説で安倍首相が「(福島第一原発)状況は完全にコントロールされている」と虚偽の発言をしたことに発します。その後、建設費疑惑で「新国立競技場」のコンペが白紙に戻り(15年7月)、デザインの盗用疑惑で「エンブレム」も白紙撤回されました(15年9月)。当初7,000億でできる(世界一コンパクトな大会にする)とされていた開催費用は、現在では3兆円を超えるまでに膨らみました。フランス検察当局の手で招致にともなうJOCの不正献金疑惑が明るみに出て、竹田恒和会長が退任しました(19年6月)。同事件関連では、ブラジル・オリンピック委員会(BOC)のカルロス・ヌズマン会長が逮捕されました。さらに東京の極暑対策にIOCトーマス・バッハ会長が懸念を示し、マラソンと競歩のコースを札幌に変更しました(19年11月)。今や、「東京五輪は詐欺商品である」という声が国内外の有識者から、私の耳にも届くようになりました。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
村田 光平
(むらた みつへい)
 1938年東京生まれ。61年東京大学法学部を卒業後、2年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授。
 現在、(公財)日本ナショナルトラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問、東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。
 著書に『新しい文明の提唱‐未来の世代へ捧げる‐』(文芸社)、『原子力と日本病』(朝日新聞社)、『現代文明を問う』(日本語・中国語冊子)など。

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