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2020年04月01日 10:38

「天網恢恢疎にして漏らさず」~最終的には東京五輪は中止?(2)

 先日のIOCトーマス・バッハ会長の発言「東京五輪は予定通り」(3月3日)から一転して、3月25日には「東京五輪は1年程度延期する」ことが正式決定した。一貫して人道的立場から「東京五輪」開催に警鐘を鳴らし続けてきた、村田光平元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授に聞いた。村田氏は「最終的には東京五輪は中止になるのではないか」と危惧する。それはなぜか。

 一方、今SNS上で、漫画『AKIRA』(大友克洋著作で1982年~1990年にかけて講談社の漫画雑誌『週刊ヤングマガジン』に連載)の話題が沸騰している。同漫画の1シーンのなかに「東京オリンピック開催迄あと147日」(今年2月28日に相当)という大書された看板が登場、そのすぐ下には黒い文字で「粉砕」、白い文字で「中止だ 中止」と書き込まれているからだ。『AKIRA』は、その高い予言的中率から、欧米の科学者などに隠れたファンが多いことで有名である。

元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授 村田 光平 氏 

『FUKUSHIMA 50』上映、これは過去ではなく現在の問題

 先日、映画『Fukushima 50が全国で上映開始されました。2011年3月11日に発生した東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故で、未曾有の事態を防ごうと現場にとどまり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いたヒューマンドラマです。今、日本全国で話題になっています。そして、これは過去の問題でなく、今まさに私たちが直面している現在の問題なのです。私はこの映画を放映開始後すぐに鑑賞し以下の感想をもち、多くの国内外の首脳および首脳経験者を含む友人・知人にお届けしました。その後、多くの方々から賛同のご返信をいただきました。

 1.原発事故が生む「生き地獄」が見事に描かれておりました。福島原発のもたらす惨禍は人間社会が到底に受け入れ難いものです。このような事故を生む科学技術は「事故の可能性が完全にゼロでなければお払い箱にすべきである」と故ハンス・ペーター・デュール博士(元マックス・プランク原子力研究所長)は主張しました。私たちが福島事故から学ぶべき教訓はこの「ゼロ原則」だと思います。しかし、この教訓を忘れ、再稼働を実施している現在の日本の罪深さを痛感しています。

 2.現在の日本では崩壊した「原発安全神話」に換わり「放射能安全神話」がまかり通っています。しかしながら、福島の教訓が意味するところは、エネルギー問題は原発から自然エネルギーへの転換がとるべき唯一の選択肢であることは論を待ちません。また、世界がその方向に動き出していることについても多言を要しません。

 3.福島原発事故の「教訓」すなわち経済重視から生命重視への移行が忘れ去られているところに、これを再び想起させる「新型コロナウイルス」が出現しました。私はこのことを不道徳の永続を許さない「歴史の法則」が具体化しだしたものと考えています。また、これをある意味で、力と支配に立脚する「父性文明」のなせる技で、今後は女性が主導的役割をはたし、生命重視の「母性文明」への速やかな移行が期待されます。

 4.事故の犠牲者、避難住民の方々に対する保障はまったく不十分であり、国および電力会社の責任は重大と感じました。日本政府はもともと最小限に設定された避難地域を、懸念すべき被曝状況が続いているにもかかわらず、次々と無謀にも解除し、住民を帰還させる方針を進めています。そのために、5万人ともいわれる避難者も次々と住宅補償などを打ち切られました。国際的には、放射能災害があった場合に住民は、自然放射線を除いて、年間1ミリシーベルトしか放射線を被曝してはいけないと規定されています。

 しかし、福島の帰還政策により、帰還を促された地域では、住民は20ミリシーベルトまでの被曝を我慢するように求められています。また、緊急作業にあたる作業員の被曝線量の上限も、100ミリシーベルトから自動的に250ミリシーベルトに引き上げられています。(厚生労働省の検討会 2015年4月18日付)

 5.「東京五輪は1年程度延期する」と発表されました。しかし、「原子力緊急事態宣言」下(放射能が存続する状態)での延期はあり得ず、速やかな「中止」の決断が必要と感じています。また、今回のIOCトーマス・バッハ会長の発言には、「原発」や「放射能」の文字が1つも入っておらず、不誠実・不道徳・無責任であることを強く感じています。

(つづく)

【金木 亮憲】

『Fukushima 50』】^
 2011年3月11日に発生した東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故で、未曾有の事態を防ごうと現場にとどまり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いたヒューマンドラマ。2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が起こり、太平洋沿岸に押し寄せた巨大津波に飲み込まれた福島第一原発は全電源を喪失する。このままでは原子炉の冷却装置が動かず、炉心溶融(メルトダウン)によって想像を絶する被害がもたらされることは明らかで、それを防ごうと、伊崎利夫をはじめとする現場作業員や所長の吉田昌郎らは奔走する。現場の最前線で指揮をとる伊崎に佐藤浩市、吉田所長に渡辺謙という日本映画界を代表する2人の俳優を筆頭に、吉岡秀隆、安田成美ら豪華俳優陣が結集した。


<プロフィール>
村田 光平
(むらた みつへい)
 1938年東京生まれ。61年東京大学法学部を卒業後、2年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授。
 現在、(公財)日本ナショナルトラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問、東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。
 著書に『新しい文明の提唱‐未来の世代へ捧げる‐』(文芸社)、『原子力と日本病』(朝日新聞社)、『現代文明を問う』(日本語・中国語冊子)など。

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