輝栄会の役割をより充実させ　地域包括ケアに貢献する

医療法人 輝栄会　福岡輝栄会病院
理事長・院長　中村  吉孝  氏

病院機能のレベルアップ

　――2018年6月に新築移転されましたが、新しくなった病院に対しての患者さまや病院職員の反応などはいかがですか。

　中村　移転前の旧病院は、すでに築30年以上が経過して建物としても老朽化が進んでいたことに加え、増改築を繰り返してきたことでさまざまな機能が分散し、動線が複雑になっていました。また、施設としてもやや手狭になってきていましたね。新病院は、そうした問題点を改善・解消すべく、床面積を約1.5倍に拡張するとともに、患者さまのわかりやすさや使いやすさに配慮した動線設計にしました。おかげさまで、患者の皆さまからは「きれいになったね」「使いやすくなったね」といったような声を多くいただいており、非常に嬉しく思っております。ただ、広くなったことで、職員からは「（院内移動のために）自転車を買ってくださいよ」というような声も出ていますが（笑）。

　――新たに盛り込まれた機能などは。

　中村　これまでになかった機能としては、1病棟に1室ずつ「面談室」を設け、患者さまの立ち入った話などを話せる場所として活用しています。また、院内検査の機能については、これまで以上にかなり充実しました。画像診断や内視鏡検査、採血検査などのいずれも、スペースの拡充や医療機器の性能向上で、より良い医療サービスを提供できていると思っております。

地域包括ケアでの役割

　――地域の救急・急性期医療を担う病院としての、貴院の役割をお聞かせください。

　中村　たとえば、大学病院などの大病院でないと診ることのできない難病の患者さまなどについては、当院が受け入れることはできません。しかし、症状の重度・軽度を問わず、誰も彼もが大病院にばかり行ってしまうと、たちまちパンクしてしまうでしょう。在宅で往診を受けている方や、老人ホームで調子が悪い方など、そうした地域の患者さまというのは、やはり地域の病院が受け持つべきだと考えています。そのため、当院でも地域の病院としての機能は、より充実させていきたいと思います。

　そのためには、1つは患者さまからの敷居を低くして、気楽に足を運んでいただける“地域に近い病院”という特色をもっと打ち出していくこと。もう1つは、病院としてのソフト面・ハード面の診療機能を高め、もっと質の高い医療サービスを提供していくことが求められます。地域に根差した病院として、この2つを両方とも伸ばしていかなければなりません。

　――16年7月から地域包括ケア病棟の運用を開始されたほか、「トリニテ松崎館」「トリニテ千早館」という2つの高齢者複合施設も運営されるなど、地域包括ケアにも積極的に取り組んでおられます。

　中村　地域包括ケアというのは、これまでの日本の医療・福祉のメニューを、できるだけエリアの小さい範囲で完結できるように―というような理念であり、考え方です。ですから、何か新しく画期的で包括的なメニューができたわけではありません。医療だけでなく、介護や予防、住まい、生活支援までを一体的に取りまとめて提供するのが地域包括ケアですから、とてもたくさんの構成要素があります。なかには、輝栄会でないとできないこともあるわけです。たとえば、夜中3時に救急車を受け入れられる病院というのは、福岡市東区内でも、当院を含めていくつかしかありません。他院では担えないような役割をより充実させて維持していくことで、いろいろな病院や事業所、診療所のサポートを行いながら、このエリアでの地域包括ケアをさらに推進していきたいと考えています。

地域で信頼される病院へ

　――最後に、貴院の医療における理念や、これからの方向性について、お聞かせください。

　中村　当院の基本理念は、「この病院に関わる全ての人々が、健やかで明るい日々でありますように、輝かしく栄えある人生でありますように」と掲げており、これに則ってさまざまな目標を立てています。この基本理念については、私自らが新入職員全員に対して講義を行うほか、折に触れて繰り返し伝えながら、職員1人ひとりへの浸透を図っております。地域の皆さまから親しまれ、より信頼していただける病院となっていくよう、病院職員が一丸となって、この理念の実現に向けて取り組んでいます。

　これからも、地理的に東区の中心地にあたるこの千早で、基幹病院としての役割をはたしながら、地域の皆さまにより良質で高度な医療サービスを提供していきたいと思っております。

【坂田　憲治】

Information
理事長：中村　吉孝
所在地：福岡市東区千早4-14-40
設　立：1961年1月
TEL：092-681-3115
URL：http://www.kieikai.ne.jp

Profile
中村　吉孝 （なかむら・よしたか）
1960年生まれ。85年に福岡大学医学部を卒業後、同大学病院の第2外科に入局。その後、九州大学生体防御医学研究所や九州がんセンター、天理よろづ相談所病院などを経て、91年に中村病院（現・福岡輝栄会病院）に入職。93年の同院副院長を経て、95年から同院長。2007年に医療法人輝栄会理事長に就任した。