2024年05月05日( 日 )

与党の圧勝で終わった韓国総選挙(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 今回の選挙結果を地域別にみてみよう。韓国の選挙地域は大きく分けて4つに分けられる。ソウルを中心とした首都圏、それから中部地方である忠清地域、釜山と大邱などを含む嶺南地域、光州を中心とした湖南地域である。

 首都圏で勝利できるかどうかが、韓国選挙の行方を決めると言っても過言ではない。首都圏は小選挙区では全体の253議席のうち、121議席を占めている。全国の約半分は首都圏である。この中で与党・共に民主党は103議席を獲得し、首都圏で85%を占めることとなった。ところが、嶺南地域と湖南地域では、地域主義がもっと鮮明になる結果となった。嶺南地域の96%は野党が議席を獲得し、湖南地域の96%は共に民主党の勝利となっている。残りの忠清地域では、従来は与党と野党が拮抗する地域だったが、今回は与党に傾く結果となった。共に民主党は忠清地域で28議席のうち、20議席を獲得し、今回の圧勝につながった。

 今回の総選挙の結果は、選挙日当日の世論調査でもよく表れている。「新型コロナウイルスに対する政府対応を評価する」という比率が74.1%で、かなり高かった。それに、「国政の運営を邪魔する野党を審判すべきだ」という世論も41.5%に達していた。韓国での総選挙は今までの国政運営に対する中間評価的な意味合いが強い。ところが、新型コロナウイルスの拡大をうまく食い止めた政府を国民は評価し、それが総選挙に影響を与えたとされている。 野党の敗北原因としては、過去を反省しない野党、国民の空気を読めない野党、政策を提案する代わりに与党の邪魔ばかりする野党というイメージが強く、それが惨敗の原因になったと分析されている。

 その他に、今回の総選挙の特徴をいくつか挙げるならば、次のようになる。巨大与党が誕生したことによって、憲法改正以外の審議では、与党独自で議案を可決できるようになったことだ。180議席以上の賛成がある場合には法案を「ファストトラック(迅速処理案件)」に指定できるようになっているが、この制度を利用すると、与党は法案を迅速に処理できる議席を確保できたわけだ。迅速処理案件に指定された法案は、その期間は270日以内に限定され、その後自動的に本会議での票決に移ることになる。そして60日以内に票決をすることになるが、180議席あれば、どんな法案も可決できる。

 今回の総選挙のもう一つの特徴は高い投票率だ。選挙権の年齢を初めて18歳まで引き下げたこともあり、投票率は66%を超えて過去18年で最高となった。三つ目の特徴は、今回の総選挙の結果、韓国議会は従来の二大政党状態に戻り、第三の政党の影が見えなくなってしまったことだ。こうなれば、与党が傲慢になりやすく、少数の声は反映されにくくなるのが懸念である。いずれにせよ、今回の総選挙で韓国国民が与党のけん制よりは政局安定を望んでいることが明らかになった。

(了)

(前)

関連記事