2024年05月05日( 日 )

「まるで9・11のときのよう」――新型コロナが蔓延する米・NYの状況

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 「今のニューヨークの状況は、まるで9・11のときを彷彿とさせる状況のようです。街中の雰囲気はちょっと殺伐としていて『かなり危ない』と、現地スタッフからの連絡にありました。あまり大きな声ではいえませんが、アジア人に対してのヘイトクライムなどもあるようです」――と話すのは、国内・国外を問わず、世界を舞台に活躍している建築家の有馬裕之氏だ。

 同氏は、ニューヨーク・ブルックリンのゴワナスに構えたコミュニティカフェ&ギャラリー「MIRROR tea house」を拠点に、日本とアメリカのアクティビティを融合させるプログラムを展開。日常使いのカフェとして地域住民が気軽に立ち寄れる休憩所のような機能をもちながらも、あるときはクラシックやジャズ、ブルーグラスのライブ演奏などが開かれる場所として、またあるときには新進気鋭のデザイナーやクリエイターらが作品やプロダクトを展示・発表するアートスペースやギャラリーとして活用している。昨年には、新たにリカーライセンス(酒類販売許可)を取得。日本人の現地スタッフを2名常駐させているほか、折を見て有馬氏自身も現地に足を運びながら、この場所で新たな挑戦を続けている。

ニューヨーク・ブルックリンにあるコミュニティカフェ&ギャラリー「MIRROR tea house」
(19年5月撮影)

 「街の様子については、現在アメリカへの渡航禁止があって私が実際に見たわけではないので、正直なところ、詳しくはわかりません。ただ、現地スタッフから4月初旬にきた報告では、非常事態宣言の発令にともなって外出禁止令が出ているようです。一応、食糧の買い出しなどでは外出できるようですが、かなり制限がかかっているという話です。ウチのスタッフたちも、家のなかに閉じこもらざるを得ない状況だといいます」(有馬氏)。

 現在、医療関連施設や食品スーパーなどについては、まだ開いている状況だという。だが、そうしたスーパーなどにはロウアー層の人々らが殺到。こぞって買い溜めに走るなど、アメリカの格差社会の現状が、新型コロナによってまざまざと浮き彫りにされたようなかたちだ。ただしこうした状況は、日本においても他人事ではないのだが…。

 今回の新型コロナは、アメリカ全土で77万人を超える感染者が出ており、うち4万人以上が死亡。そのうちニューヨーク市では感染者13万人以上に対し、死亡者の数も1万人を超えているような状況だ。なぜ、米国ではこれほど新型コロナが蔓延しているのか――。有馬氏の見解では、1つには感染症に対する意識の違いがあるという。

 「昨年から今年の初めにかけて米国でインフルエンザが猛威を振るっていましたが、そのことについて現地の友人にたずねてみたところ『まったく意識していない』という返答でした。要は日本と違ってインフルエンザへの警戒感がなく、市民の間にワクチン接種という習慣がないようなのです。今回の米国での新型コロナの蔓延の状況は、個人的には納得しています」(有馬氏)。

 もちろん、新型コロナには特効薬となるワクチンなどは現状まだできておらず、インフルエンザと違ってワクチン接種などでの対策の打ちようはない。だが、手洗い・うがいや咳エチケットなどの感染症に対する予防習慣があるかなしかで、その感染率は大きく変わってくるだろう。

 有馬氏は最後に、「多くのアメリカ人は、『これから大きく社会が変わるだろう』と言っています。今の社会と、コロナが終わった後とでは、もはや『まったく違ったものになっているだろう』――と。そして、販売のやり方から人同士の関係性の在り方まで、社会のシステムそのものを、これまでとはガラッと違ったものにしていかなければならない、という認識のようです」と話してくれた。新型コロナという人類共通の災厄を前にして、世界は今、変革の岐路に立たされているのかもしれない。

【坂田 憲治】

関連キーワード

関連記事