2024年04月17日( 水 )

脱毛エステ「ミュゼ」が嵌った前金商法の落とし穴(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

前受金を売上に計上したデタラメ

ellese ミュゼをはじめエステサロンは「前受金制度」を採る。最近では「月額1万円」などの少額から始められる脱毛プランのサロンも増えたが、「全身脱毛〇〇回コース」というように、サロンと会員が複数回にわたる施術の契約を結び、会員はコース金額をサロンに支払う。ミュゼは「美容脱毛完了コース100円(1回)」の低料金を謳い文句に長期契約を結んだ。

 ミュゼの最大の問題はミュゼ会員から預かった前払い金の会計処理にあった。前払い金は、解約に備えて保全しないといけない。会員から受け取った金は前受金として貸借対照表の負債に計上し、施術の進捗に合せて売上に計上するのが普通の会計処理である。
 ところが、会員から受け取った金はすべて売上として、前受金として計上していなかったのだ。目の前にキャッシュが転がり込んでくれば、使ってみたくなる。ミュゼは会員から預かった金を、運転資金や広告費に流用。テレビCMや電車の中吊り広告に使い、新規会員を募集していた。

 それが順調に回っている間は、売り上げの急成長をもたらすが、いったん、解約が生じると資金繰りは破綻する。前受金に計上していれば、解約があっても、前受金を取り崩せば資金繰りに影響を与えることはない。
 ミュゼは会員から預かった金を、すべて売上に計上して先喰いしているので返済原資がない。前受金は簿外債務になる。前受金を正しく勘定科目の負債に計上するには、簿外債務を修正しなければならない。そうすれば、巨額の債務超過に転落。当たり前の話だ。
 ミュゼの経営危機の本質はここにある。会員の解約は、経営危機の急所をついたことにある。ミュゼの私的整理がうまくいくかは、銀行団の腹一つ。簿外債務を修正して債務超過になることを求めるかにかかっている。債務超過に転落すれば、民事再生法の適用など法的処理しか選択肢はないだろう。

エステ業界のアキレス腱は前受金の処理

 エステ業界で倒産が出た。スカイゲイト(株)(本社:神奈川県横浜市西区みなとみらい)は8月25日、横浜地裁に民事再生法の適用を申請した。負債額は債権者200名に対して20億円(個人に対する施術の前受金を除く)。

 同社は2005年7月の設立。独自のホテル客室改装出店型エステサロンを全国に40店を展開、14年5月期の売上は13億8,000万円をあげていた。モデルの道端アンジェリカをイメージキャラクターに採用していたほか、「横浜マラソン2015」(3月開催)の公式スポンサーになるなど、ブランドイメージを高めるのに力をいれていた。
 これらの資金は、会員から預かった前受金。これを使い果たし金が回らなくなり、経営が破綻。前金を先喰いして行き詰ったことでは、「ミュゼ」とまるっきり同じ構図だ。

(了)

 
(前)

関連記事